ライカM11モノクローム・ライカ Q2 モノクローム
Impression Report by Leica Store Staff
前回の「ライカM11モノクローム」の記事から約半年。2月後半の旅行のタイミングで再び「ライカM11モノクローム」と、更に「ライカQ2モノクローム」を使用する機会を得たため、2台のカメラとともに「アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.」と、最新の「ズミクロンM f2/28mm ASPH.」の2本のレンズを持ち、台湾へ行きました。
初めての台湾、初めてのアジアだったため、旅行前にガイドブックを購入し、マップアプリやSNSを駆使して撮りたいと思う場所を探しました。その甲斐もあって魅力的な場所を沢山見つけることが出来ましたが、1度の旅行ではとても周り切れないと思い、今回は特に撮りたいと思う場所に近い台北と台南にホテルを取りました。
旅行初日は所用があったこともあり、遅めの便を利用して台北市内のホテルに到着したのは24時前。チェックイン後に深夜の写真を撮りに出ようかとも思いましたが、深夜は思っていたより寒く疲れも溜まっていたため、翌日朝から撮影をすることにしました。
使用機材:
「ライカM11モノクローム」
「ライカQ2モノクローム」
「アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.ブラック / シルバー」
「ズミクロンM f2/28mm ASPH.」
まずは台北の迪化街へ
ライカM11モノクローム+アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
台北では、ホテルから歩いて行ける距離にある迪化街(てきかがい)という問屋街の周辺をメインに撮り歩きました。問屋街の目抜き通りも良い雰囲気なのですが、路地裏や脇道にもスナップに魅力的な場所が沢山ありました。
やや裏手の通りを歩いていると、車のフロントガラスに新聞を押し当てて記事を読んでいる方を見つけたので、「アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.」で撮影しました。開放での撮影だった為ピントの浅い写真ですが、絞って撮っていれば新聞の文字を読めていただろうと思える解像力です。
ライカM11モノクローム+アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.
ライカM11モノクローム+ズミクロンM f2/28mm ASPH.
迪化街にある永楽市場。市場内は観光客の往来が多く通路も狭かったので、ここからは「ライカQ2モノクローム」をメインに撮り歩きました。場内にある店の裏側の通路から慌ただしい厨房の様子を伺う事ができたので、動きのある瞬間をカメラに収めてみました。
台北のさらに北、新北市の野柳地質公園へ
ライカM11モノクローム+ズミクロンM f2/28mm ASPH.
今回の台湾旅行で撮影スポットのメインとして考えていた場所のひとつが、台北のさらに北、新北市に位置する野柳地質公園でした。
敷地内にある、浸食によってできた様々な形状の奇岩がある岩場を、モノクロームでシルエットを強調して撮影したいと思っていました。
晴天で24℃の台北から薄着のままバスに乗りましたが、現地に到着してみると気温はわずか15℃。霧雨が降り頻り、常に海風にあおられるようなあいにくの天候でしたが、見たことのない景色に気持ちが昂っていたからか、撮影中はさほど寒さを感じることもなく、夢中で撮影を楽しむことが出来ました。
悪天候ではありましたが、よりなだらかなトーンを出したかったので「ライカM11モノクローム」に「ズミクロンM f2/28mm ASPH.」を装着して撮影しました。
ライカM11モノクローム+ズミクロンM f2/28mm ASPH.M
人物を入れて写真を撮ろうと周辺を歩き回っていた所、奇岩が重なるアングルの隙間に良いスペースが見て取れたので、人物が来るのを待ちました。暫くして右から人物がやってきたので、岩の隙間の空間に来たところでシャッターを切りました。良いタイミングでスマートフォンを取り出して写真を撮ろうとしていたため、面白いシルエットで撮影する事が出来ました。
ライカM11モノクローム+ズミクロンM f2/28mm ASPH.
ライカM11モノクローム+ズミクロンM f2/28mm ASPH.
台北を離れ、台南へ
高鉄台南駅からローカル線に乗り換えて台南駅へ向かう途中の車内で、座っている正面に楽しそうに外を眺めている小さな子がいたので、良い瞬間を捉えたいと思い、ここではAF搭載でノーファインダーでの撮影もしやすい「ライカ Q2モノクローム」をバッグから撮りだし、シャッターを切りました。
スーツケースを引きながらと言う事もあり、駅に到着してからもホテルに荷物を預けるまでは「ライカ Q2モノクローム」でスナップを撮りました。
今回の旅行では、普段からM型カメラを使用していることもあり「ライカM11モノクローム」での撮影頻度のほうが高くなると思っていたことや、以前レビュー記事を書いた時にEVFアドヴァンスドモードでのバッテリーの持ちの良さを実感していたので、「ライカQ2モノクローム」のバッテリーチャージャーは持って行かなかったのですが、帰国までバッテリー残量が0になることはありませんでした。Q3と同時に発表された大容量バッテリー「BP-SCL6」を使用すれば、より安心して旅行中の撮影を楽しめると思います。
正直なところ、普段「ライカM10モノクローム」を使っていることもあり、旅行前は「ライカQ2モノクロームを使用する機会は少ないだろうな…」と思っていたのですが、実際に持ち出してみると、特に狭い車内や市場での瞬間等を撮る時は「ここはQで」、建築や風景が被写体の時は「ここはMで」と、思っていた以上にしっかりと使い分けできるものだなと感じました。
今回の旅行は「ライカM11モノクローム」の良さは勿論、あらためて「ライカQ2モノクローム」の良さを実感できる旅になりました。
帰国前日、台南から高雄へ
帰国の前日、今回の撮影旅行のもうひとつのメイン、衛武営国家芸術文化センターへ向かうために、台南から高雄へ向かいました。大規模な工事が行われていた高雄駅は、天井のデザインのパターンが独特で、足場(?)も含めて撮影するのが良さそうと考え、構図の中央付近に人物をいれて「ライカ Q2モノクローム」で撮影してみました。後日画像をPCで拡大してみたところ、天井に敷き詰められた楕円状のオブジェの質感の描写の素晴らしさは想定内でしたが、画面中央付近の脚立に乗っている人物が歯を出して笑っているのも認識できたのには驚きました。
高雄駅から地下鉄を乗り継ぎ衛武営国家芸術文化センターへ。左右非対称の流れるようなデザインの美しい建物で、外観・内観とも時間をかけて撮影を楽しめそうな場所です。
敷地内を撮り歩いていた所、ピアノの音が聞こえてきました。最近は日本でも駅や商業施設等で置かれているのを目にしていたため、特に珍しくもないと思っていましたが、途中から鳥肌が立つような美声が聴こえてきたので「これは撮らなければ」と思い、慌てて声とピアノの音色が聞こえるところへ小走りで向かいました。ピアノがある吹き抜けの広場へ着くと、若い女性がピアノを弾きながらヴォカリーズで「天空の城ラピュタ」の主題歌を歌っていました。歌の最後のパートに差し掛かっていましたが、手にしていたのが「ライカ Q2モノクローム」だったため、AFでピントを合わせ何とか写真に収める事が出来ました。撮影後に敷地内を歩いていたところコンサート公演期間中のポスターを見かけたので、おそらく出演されている方だったのだろうと思います。
体験も含め、この写真が今回の旅行の中で1番のお気に入りとなりました。
ライカM11モノクローム+ズミクロンM f2/28mm ASPH.
ピアノを弾く女性を撮影した後、「ライカM11モノクローム」に持ち替えて敷地内を撮影しました。この写真は、「ライカQ2モノクローム」で撮影した写真に近づけるために、普段よりもややコントラストを高めに編集しています。
左:ライカM11モノクローム+ズミクロンM f2/28mm ASPH.
右:ライカM11モノクローム+ズミクロンM f2/28mm ASPH.
天井の黒いスペースが構図内に写らないようにするか、あえて残すか悩みながら撮影した写真です。写っていないほうが当然すっきりとした構図になるのですが、これはこれでアリだなと、今でもどちらが良いか決め切れていません。
衛武営国家芸術文化センターは、カラーで撮影しても楽しめる場所だと思いますが、個人的には色を排したモノクローム撮影のほうが、ミニマル写真などの、シルエットや人物に焦点を当てた切り撮りを楽しめる場所だと感じました。
ライカM11モノクローム+ズミクロンM f2/28mm ASPH.
高雄から台南駅に戻り、疲れたのでホテルまでバスで帰ろうと乗り場を探していた時に目に留まった建物。1F吹き抜けから上を見上げると、イメージしていたアジア圏らしい建築構造をしていたので、「ライカM11モノクローム」に「ビゾフレックス2」を装着し、アングルを90°にしてカメラを真上に向けて撮影してみました。天井や空を撮る時に自分が上を向く必要がない「ビゾフレックス2」は、大きな建築物を撮るのが好きな私にとって、非常に便利でした。
ライカM11モノクローム+ズミクロンM f2/28mm ASPH.
帰国の日、中部国際空港に到着し荷物を受け取り、不要になった搭乗券をゴミ箱に捨てようと折り曲げたところではじめて、搭乗券の裏面がLeicaの広告であることに気がつきました。しかも掲載されていたのは「ライカM11-P」でも「ライカQ3」でもなく「ライカM10モノクローム」。
こんな偶然ある?と思いながら、折り曲げてしまった部分のシワをできる限り綺麗に伸ばしてから「ズミクロンM f2/28mm ASPH.」の最短40cmの距離で撮影しました。普段ストリートスナップや風景、建築物の撮影がメインな事もあり、今回の旅行でも70cm未満で撮影する機会は殆どなかったのですが、この時は役に立ちました。
搭乗券は持ち帰り、大事に保管してあります。
モノクローム専用デジタルカメラのみで撮影旅行に行くというだけでもマイノリティーなのに、今回はカメラ2台ともモノクローム専用デジタルカメラという、相当ストイックな撮影旅行でしたが、旅の途中でカメラの使い分けが出来る事を実感したことで、旅行をより一層楽しむことが出来ました。
あくまでも主観ですが、「ライカQ2モノクローム」は「ライカM11モノクローム」に比べるとカリッとシャープに写ることもあってか、気づくとややコントラスト高めに編集していました。意図的にそうしたのではなく、自然とそう仕上げていたという感じです。もっと言うとそう仕上げたくなるような描写といった感じでしょうか。そういった感触もあり、街の中心部などのストリートスナップや、躍動感のある写真を好んで撮影する方は、速写性や機動力の高い「ライカQ2モノクローム」が楽しめると思います。
なだらかなトーンの風景写真や、きわめて光量の少ない場所でのスナップ撮影も楽しみたい方には、最新の6000万画素センサーを搭載し、ISO100000でも実用に耐える高感度特性を備えた「ライカM11モノクローム」を選択すると、より楽しめるのではないかと思います。私は撮影した写真の中で特にお気に入りのものをA4やA3ノビ、A2サイズでプリントするのですが、「ライカM11モノクローム」はトーンが豊富なこともあり、特にプリント時の被写体の立体感の表現が素晴らしく、今回のレビュー記事で撮影した写真をプリントしたことで、「ライカM10モノクロームで十分」と思っていた考えが一変してしまいました。プリントも含めて写真を楽しむ方にはぜひ、「ライカM11モノクローム」を手にしていただきたいです。
Photo by Leica Camera Japan Staff
光と影で描く
ライカのモノクローム撮影専用機誕生から11年の時を経て誕生した「ライカM11モノクローム」。裏面照射型CMOSセンサーとISO 125~200,000 という広い感度域との組み合わせにより、他の追随を許さない繊細なディテールの表現力を誇ります。
モノクローム写真という表現手法に情熱を注ぐすべての人へ ── もっと自由に、いっそう軽やかに クリエイティビティを発揮できる撮影体験への扉を開くとともに、白と黒が織り成すイメージクオリティを新たなレベルへと進化させます。
モノクロ撮影専用の35mmフルサイズセンサーを搭載したコンパクトデジタルカメラ
独特の魅力と不思議な美しさで昔から親しまれているモノクローム写真は、「光で描く」という写真の本質がカラーよりも顕著に表れます。ライカのモノクロームカメラは、モノクロという魅力的な写真表現に特化した、モノクローム撮影専用のカメラです。
ライカQ2モノクロームは、フルサイズコンパクトデジタルカメラとしては世界で初めてモノクローム撮影専用の撮像素子を搭載しています。
デザインでもライカらしいスタイルを追求し、本体カラーにはマットなブラックを採用。操作部などに刻まれている文字や数字のカラーは、落ち着いた印象のグレーとホワイトで統一しています。また、本体正面にはライカ伝統の「Leica」の赤いロゴを配さずに「モノクローム」というコンセプトを強調しました。