情熱 写人
ー 花澄 ー
※本内容は、LEICA STYLE MAGAZINE の連載「情熱写人」をWebに再掲載したものです。
花澄さんには2022年6月発刊の39号に登場していただきました。
女優の仕事は、顔合わせからクランクアップまで集中力と緊張感に満ちた充実の日々を過ごせるのですが、ひとつの仕事が終わると解放感とともにまるで世界が
色褪せた気持ちになってしまうんです。そんなとき、色褪せた心に彩りを与えるために始めてみたのがカメラでした。最初は国産のデジタル一眼を壊れるまで使い、はやくも2台目にライカM10を手に入れました。そしてすぐにシャッター音の静かなライカM10‐Pに買い替え、それが現在の愛機です。ライカを使って最初に驚いたのは桜が咲き誇る風景を撮影したときでした。奥行と立体感のある描写の美しさに感動し、わたしの探し求めていたカメラはこれだ!と確信したくらい衝撃を受けました。
わたしの写真の好みは、パキッとした鮮やかな写真ではなく、ちょっとボヤけているような、あたかも昔の映画のようなどこか整っていない描写に強く惹かれます。それでライカのオールドレンズを使うようになりました。オールドレンズで撮ると、周りがちょっと暗くなったり、ピントが合ってもパキッとせず、独特の空気感や雰囲気のある写真が撮れます。見たままの景色ではなく、曖昧な描写の中にわたしの主観や感性を織りまぜることができる気がするんです。その魅力を知ってからはすっかりオールドレンズの沼にはまってしまいまし
た。ズミルックス35㎜、ズミクロン35㎜、ズマリット50㎜、エルマリート28㎜、テレエルマリート90㎜など7~8本は蒐集し、まだまだ欲しいレンズは尽きません。
ここ2年くらいは写真家ソール・ライター氏の作品に刺激を受け、ヌードも含めて自撮りで自分の肖像を撮りためています。ライティングにこだわりつつ、オートフォーカスではないので納得のいく写真を撮るには1枚につき3時間くらいかかりますが、クリエイティブとともに自分自身に対峙するよい時間にもなっています。作品の中には、いつの時代なのか、どこの国籍なのか、写真なのか絵画なのか、そんな不思議な1枚もあります。オールドレンズの魔法ですね。そうして撮りためた肖像は、今秋にわたしの主演映画が封切られるタイミングに合わせて1冊の写真集にまとめて発表する予定です。ぜひ楽しみにしていただきたいと思います。
花澄 / Kazumi プロフィール
俳優・ナレーターとして多数の映画やドラマ、舞台などに出演しながら写真家としても活動している。
2022年秋公開の映画で主演を務める。その同時期にライカで撮影した自身の肖像を収録した写真集の出版と写真展を開催した。
公式サイト:https://kazumi-photo.com
Instagram:@textisan
X(旧Twitter):@textisan
LEICA STYLE MAGAZINEにて連載中の「情熱写人」では、今後の活躍が期待される写真家にスポットをあて、ライカや写真に対する熱い想いを語っていただいています。
※今回掲載した内容は発刊当時の情報になります。花澄さんの最新情報は公式SNSをご覧ください。