Leica × Professional
ー Jリーガー 犬飼智也 ー


様々な分野でプロフェッショナルとして活躍されているライカユーザーの方に、ライカのある日常について語っていただくこの企画。今回は、柏レイソル所属のJリーガー、犬飼智也(いぬかいともや 1993年5月12日生)さんが、ライカカメラを愛用されているとお聞きしまして、お話をお伺いする事になりました。

Interview & text: yoneyamaX



――初めに、写真とカメラについてお話をお伺いしたいと思います。まずは、写真を撮られるようになったきっかけ、経緯を教えてください。

「昔からスマホのカメラで写真を撮るのが好きで、人物や風景をよく撮っていました。特に私はアウトドアが好きなので、釣りに行った時の朝日や山の景色などを撮っていました。そのうちにこのような美しい景色をしっかり撮りたいと思うようになり、まずは他社のコンパクトフィルムカメラを購入しました。その後、もっと写真を撮りたいと思い色々と調べてみたところ、やはりライカだなということで、わずか2か月後にはライカのフィルムカメラを中古で購入しました」

――ふだん好んで撮られる写真とはどのようなものなのでしょうか?

「特にこれと言った被写体はなく、思いついたものを撮りたいと言うか、スナップ写真が多いですね。人物も撮ります。5か月前に子供が生まれたので、子供や妻を撮ることが最近は特に多くなりました」





――それでは、撮った写真はどのように楽しまれていますか?

「データとして保存していますが、大きく伸ばしてライカ繋がりの知り合いの写真展に出展した事もあります。時々伸ばして楽しんだり、祖父の写真を撮って大きく伸ばして贈った時には、大変喜ばれました」



――ところで、お好きな写真家はいらっしゃいますか?

「一番初めに写真集を買ったのは、アンセル・アダムスです。モノクロームの風景写真は素晴らしく、クールでカッコ良い写真が撮りたいなと感じました。そしてライカを持ってからは、ウィリアム・エグルストンですね。彼の作品は日常的な写真なのに目に留まるアート感というかカッコ良いところが好きで、あのような写真が撮りたいと思っています」

――ご自身にとって写真の魅力やおもしろさとは何でしょうか?

「カメラを持って外に出たいと思う様になりました。カメラを持ち歩いていると、周りの風景など外の景色を良く見る様にもなりましたね。普段、肉眼では見えなかったものが、カメラを持つ事で、日常の中にもきれいなものやカッコ良いものがあるんだなと気づかせてくれます。その様なことから、カメラは人生を豊かにするツールだとも思いますし、カメラを持って本当に良かったと感じています。自分はもともとアウトドア派なのですが、あまり外に出ない方でも、カメラを持つことによって、外に出かけたくなるのではないでしょうか?休みはほとんど家にいるというチームメートにはカメラ(ライカ)を勧めています」



――これまでに、撮影に関して印象に残るエピソードがあれば教えてください。

「アンセル・アダムスの写真というわけではありませんが、ライカM3を買ってまもなく雪山に持って行ったことがあります。今思えば無茶な事をしたなとも思うのですが、のちにお気に入りとなる雪山の風景写真が撮れました」



――ライカはある意味、報道カメラマンのカメラでもあるので、色々な場所に持って行って撮影する事は無茶な事ではないと思いますよ。

「まだレンジファインダーのピントを合わせることに慣れていなかったので、写真を撮りながら山を登っていくのは少しきつかったのですが、普段から体を鍛えていて良かったです。(笑)」



――お好きな時間帯は?

「朝の光は好きです。都内に住んでいた時ですが、休みの日、朝4時に起きて渋谷へ撮影に出かけたこともあります。人が少ない渋谷の街は面白かったです。朝の光や夕方の光は本当に美しいですよね」



――お好きな構図は?

「妻を撮る時なのですが、いつも同じアングルや画角になりがちなので、色々な角度から撮れるようになりたいです」


――お好きな焦点距離は?

「自分は35mmと50mmしか持っていないのですが、50mmが一番使っているレンズだと思います。接写撮影が可能な35mmを持っているので、子供の撮影はこれが多いですね。最近は35mmの方が多くなってきている気もします」

――お好きな絞り値は?

「やはりボケ味が素晴らしい、開放で撮るのが好きです」

――ライカでは開放での撮影が一番のお薦めなので正解ですね。

――撮影する時に何か意識していることはありますか?

「ブレないように写真を撮るように意識していますが、ブレても良い写真になる場合があるので、何とも言えませんね。とにかく自由に撮る、そして、どこに行く時もカメラを常に持っていくことが一番大切です」

――ここからはライカについてお伺い致しますが、最初のライカと、それを手にしたきっかけは何ですか?

「もともとライカの存在は知っていたので、徐々にライカを調べたり検索したりするようになりました。ライカM6を持っている知人(帽子のデザイナー)に相談しました。それでさっそく一緒に見に行こうということになり、新宿の北村写真機店さんに行き、勧められたライカM3をその場で買いました。自分はライカに限らずクラシックなものが好きなので、その時のライカの中ではライカM3が気に入りました。またライカM3は、ハードルは高いが究極のカメラなのでこれを持っておけば大丈夫だとも言われ、背中を押されました。見た目もとても美しいですよね。ライカM3を買ってからはだんだんライカ沼にはまっていきました」

――現在はどのようなライカをお持ちですか?

「前述のライカM3とM f1.4/50mm 、そしてライカM10-RブラックペイントとM f1.4/35mm、ライカM-Aチタンセット(2022年世界限定250セット)を持っています。このチタンセットは購入してからまだ全く使っていませんので、今回のこのインタビューをきっかけに最初のフィルムを通そうと思っています。このカメラのエディションナンバーは、13/250なのですが、私の背番号が13なのでとても気に入っていますし、愛着があります。機材類は防湿庫に入れて管理しています。今はライカのモノクローム専用機が気になっています」



――ライカをお使いになって思うこと、印象に残るエピソードは何かありますか?

「最初に撮った時からとても気に入った写真が撮れ、たとえミスをしても良い作品になる事があるのはライカのなせる業ではないでしょうか。風景撮影などで光を意識するようになったのもライカのおかげです。光の捉え方がライカの強みなのかなと思います。
その他にはライカで撮影していると信用してもらえるカメラだなと感じます。ライカを持ち歩いている同士だとお互いに目を合わせて挨拶をすることもありますし、特に外国の方などからは声を掛けてもらえることがあり、そこからコミュニケーションに繋がることもありますし、ライカ友達に発展することもあります」



――皆様にライカのお薦めの点を教えて下さい。

「やはりライカを持つと外に出たくなります。それに、首からさげた時のさりげないカッコよさがありますよね。ライカを持つと周りをより良く観察して撮影したくなり、日常の充実感が広がると思いますので、ぜひお薦めしたいです。天気の良い日にはテンションが上がりますし、雨の日でもなんだか撮影したい気持ちになります」





――写真好きの人はピーカンよりも曇天や雨の日の撮影を好みますからね。

「他にはシャッター音もいいですし、巻き上げレバーの感触も最高です。
画像に関しても、ライカは色々な意味で最高です。特に光の捉え方がとても素晴らしいですね」

――それでは、今回の作品についてお聞かせ下さい。

「今回の作品は、先述の「最初にライカを持って撮影に出た時の雪山の写真」からも選んでいます。霧の中の雰囲気ある写真や、ポートレートなども含め、バリエーションに富んだ作品を選びました」







――今後、写真を通して何かしてみたいことはありますか?

「個展(写真展)をやりたいと思っています。もちろん同時に写真集も出してみたいです。そのような事が実現できないか、チームにも相談していますので、チャンスがあれば。いつかはライカでも個展をやりたいです」

――良い作品がまとまってきた暁には、ライカストアでの展示をお願いする事になるかも知れません。

――今後、写真とどのようにつきあっていきたいですか?

「変わらずライカで写真を撮り続けたいです。写真展の開催や写真集の出版は小さい規模からでもやってみたいです。誰かが自分の写真を認めてくれたり、飾ってくれるようなことがあればそれはとても嬉しい事です」

――今後のご活動の予定をお聞かせ下さい。

「写真は一生付き合っていけるものなので、ずっと撮り続けます。体力もあまり使いませんのでとても良い趣味だと思っています。サッカーと離れて写真を撮る事により、気持ちがリフレッシュされるので、本業にも良い影響を与えてくれています。
サッカースタジアムは緑も多いですし、超望遠が無くても自然の光が射したピッチや応援している方々など、様々なシーンの写真が撮れますので、ぜひ写真好きの方々にも足を運んでいただきたいです」

――本日は、強いライカ愛を感じるお話をお聞かせいただきまして、有難うございました。
引き続きのご活躍、そして写真の成功も応援しています。



後記
今回の犬飼さんのお話の中で、何度も「良い光」という言葉が出てきました。写真は光から作り出されると言っても過言ではなく、写真にとって光は一番大切なものです。また光をコントロールすることができるのがプロのフォトグラファーだとも言われています。この光を強く意識して撮影に挑んでいる犬飼さんの写真の今後が楽しみでなりません。近い将来の個展も夢ではないかも知れません。また、ライカM3を現役で普通に使用されている事に加え、強い気持ちでライカM-Aチタンセットを入手されたという事で、とても強いライカ愛を感じました。




犬飼智也 / Tomoya Inukai プロフィール

Jリーグ・柏レイソル所属のフットボールプレイヤー。静岡県出身。
Jリーグの第一線で活躍をつづけながら、外出時や練習場に向かうときにもカメラを手放さない写真愛好家。
最近のメイン被写体は2023年9月に誕生した第一子。

INSTAGRAM @ tomoya___inukai