ライカ バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm

Impression

text & photo: 写真家 斎藤 巧一朗


ライカSLレンズのラインアップに、焦点距離100~400mmをカバーする望遠ズームレンズ「ライカ バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm」が加わった。ライカSLレンズ最長の焦点距離で、しかもコンパクトなズームレンズは、幅広い用途でオールラウンドに活躍するレンズだ。

これまでの望遠ズームレンズは「アポ・バリオ・エルマリートSL f2.8-4/90-280mm」のみだったが、今回発売された「バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm」も加わり、2種類のレンズから選べるようになった。

「アポ・バリオ・エルマリートSL f2.8-4/90-280mm」は、開放F値が明るい大口径レンズのため、その分大柄で重量もある。新発売の「バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm」は「アポ・バリオ・エルマリートSL f2.8-4/90-280mm」に比べ、フィルター口径は82mmと同じながらも、全長で4cm短く、重量は180g(フード無し)軽く、一回り小さい印象だ。 しかも長焦点側は400mmとSLレンズのラインアップで最長の焦点距離となる。

鏡胴に備わる取り外しも可能なアルカスイス互換の三脚座を手掛かりに、「ライカSL2-S」に装着した「バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm」を手にすると、重量バランスが良く構えやすい。 つまり重心をよく考えられたレンズだ。長焦点にも関わらずコンパクトな全長で取り回しがいい。動きのある被写体に向けての追従もしやすいだろう。

ズームリングは滑らかで画角変化にあう感覚だ。SLレンズに慣れた方なら、いつもの手触りのズーム、ピントリングで撮影できるため、このレンズに慣れるのに時間はかからないだろう。また付属する金属製のフードは、ライカのレンズフードに共通する高品位なもの。このレンズのたたずまいをさらによく見せてくれる。

そしてファインダーから確認できる超望遠400mmの画角は、これまでのSLレンズにはなかった画角のためか、ハッとするほどの望遠効果がある。何を撮ろうかと期待が膨らみ、さまざまな被写体にレンズを向けた。
ではその作例をご覧にいれたい。




長崎の港、近くに停泊する船を100mm と400mmで引き寄せた。
好天のもとコントラストも高くクリアな写り。400mm側ではボケを確認することができる。

F5.6 1/1000秒 ISO200 100mm


F6.3 1/1000秒 ISO200 400mm




遠景を100mmと400mmで撮影。画面右上の対岸山頂は撮影場所から距離があるものの明瞭に写っている。

F6.3 1/1000秒  ISO200 100mm


F6.3 1/1000秒  ISO200 400mm




停泊する大型船。100mm、400mmでもシャープな線を結像させるレンズだということがよく分かる。

F6.3 1/640秒  ISO200 100mm


F6.3 1/400秒  ISO200 400mm




望遠レンズといえば圧縮効果。船と岸の家々が圧縮され近づいて見える。

F6.3 1/640秒  ISO200 400mm




遠くの構造物も解像感が高く写し出される。長崎港名物の世界遺産に登録されているクレーン。

F6.3 1/500秒  ISO200 400mm




さらにこのレンズの美点は、近接撮影ができること。400mm時の最短撮影距離は1.59mとマクロレンズ並みの近接能力だ。まさに万能で、遠くの被写体を大きく見せる事から近くのものも大きく撮影できる。

花の写真も十分にこなせる近接能力と素直なボケ味。

F6.3 1/500秒  ISO200 400mm




そして「ライカ エクステンダーL 1.4x」を組み合わせると、焦点距離は1.4倍になり最大560mmで、さらなる望遠効果が得られる。もちろんこの「ライカ エクステンダーL 1.4x」もコンパクトで、組み合わせて使用してもそれほど苦になる重さではない。一緒に携行し、いざという時にはさらに長焦点の画角も備えられる。

F6.3 1/320秒  +0.3EV ISO800 383mm



「ライカ エクステンダーL 1.4x」を組み合わせているが、気になるような画質低下は見られない。1絞り分、開放F値は暗くなるがファインダー上に不都合はない。

ライカ バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm with ライカ エクステンダーL 1.4x
F9 1/1250秒  +0.3EV ISO800 560mm



開放F値が比較的暗めではあるが、その分コンパクトで軽量。暗いシーンでもISO感度を上げて対応すればいいという、今どきなレンズだ。
防塵防滴性能も備え、多湿な場面や砂漠などでも気にせず使用でき、どんな取材にも携行できるタフさと持ち回りの良さで重宝されるに違いない。
ライカSLシステムは、ライカMシステムにはないズーム、望遠、高速オートフォーカスがある。
この新しいレンズ「ライカ バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm」が加わることで、ライカSLシステムは撮影領域を広げ、システムカメラとしての魅力をいっそう高めていくだろう。



使用機材:
ライカ SL2-S」 「ライカ バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm」 「ライカ エクステンダーL 1.4x




 写真家

 斎藤巧一朗 (さいとう こういちろう)

 1968年鹿児島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。
 広告撮影業に従事し、人物、食品、観光などを撮影している。

 最初のライカは、21歳で購入したライカR5。
 以降ライカと共に撮影を続けてきた。
 古いライカから最新機種まで多くを手にしてきたが、
 特にライカSL2は、ライカドイツ本社でトレーニングを受け、
 ライカの理解を深めた。