情熱 写人
ー 永井 樹里 ー
※本内容は、LEICA STYLE MAGAZINE の連載「情熱写人」をWebに再掲載したものです。
永井 樹里氏には2023年8月発刊の42号に登場していただきました。
私はもともと絵を描くことに興味を持っていて、美術科のある大学に進学したのもそれが理由です。けれども写真は日常的に撮っていました。写実的な絵を描くことが好みだったので、模写素材のために写真をよく撮っていたんです。しかしいつの間にか写真が面白くなり、気がつけば絵筆をカメラに持ち替えていました。卒業前にはフォトグラファーになりたい意志が固まっていました。
絵画の感性を切り捨てたかというと決してそうではなく、私が意識的に写真で表現しようと模索しているのは、いかに絵画的な写真を撮るか。絵画のようなしっとりとした雰囲気のある写真を常に追求しています。その表現ができるのがライカのカメラだったんです。初めて手にしたのは知人から譲り受けたライカM2。写真のあがりを見てみると、色彩からジュワッと湿度が溢れ出すかのような描写に、私が求めている絵づくりを実現してくれるカメラはライカしかないと確信したんです。フォーカスが合っているところはしっかりとキレがあり、ボケ感は立体的でありながらレイヤーがとても滑らかでまるで絵の具で描いたような表現ができる。これに代わりうるカメラはほかにありませんでした。
その後、仕事でムービーを撮ることも多いのでライカSL2-Sを手に入れました。最近、スポーツシーンを撮影する機会がありライカ バリオ・エルマーSL 100-400㎜レンズを買いました。このレンズはキレッキレの画が撮れますが、じつは私がメインに使っているのはオールドレンズなんです。エルマリートR24㎜、ズミルックスR50㎜、エルマー65㎜(ビゾ用)。オールドレンズが生み出す、湿度を感じさせる描写がとても絵画的なんですよ。
今後はこのポテンシャルを活用して女性をモデルにしたファッションフォトの撮影を増やしていきたいですね。デジタルカメラを使いながらもフィルムライクかつ、もっと絵画的な表現方法を試行錯誤していくつもりです。ムービーについてもすでにショートムービーをいくつか撮っていますが、自分らしい表現方法をさらに磨いた作品をつくり出したいと考えています。
絵を描いていた頃、よい絵の具を見つけた瞬間、これなら描ける!という直感を得ることがよくありました。ライカはそのときの感覚を蘇らせてくれるカメラなんです。
永井 樹里 / Juri Nagai プロフィール
フォトグラファー。1996年生まれ、鹿児島県出身。
長岡造形大学視覚デザイン学科卒業。2020年からフリーランスとして活動を開始。TVCM、ミュージックビデオ、WEBムービーの他、アーティストや広告の写真も多数手掛けている。2020年度、朝日広告賞審査委員賞受賞。
LEICA STYLE MAGAZINEにて連載中の「情熱写人」では、今後の活躍が期待される写真家にスポットをあて、ライカや写真に対する熱い想いを語っていただいています。
※今回掲載した内容は発刊当時の情報になります。永井 樹里氏の最新情報は公式SNSをご覧ください。