Mレンズの実力
LEICA SUMMILUX-M f1.4/35mm ASPH.
From Leica Style Magazine Vol. 14
カタチを保ちつつも大きくボケてくれるのが大口径広角のいいところ。絞り開放でも合焦部のシャープさは驚くほど高い。
ライカM (Typ240)・f1.4・1/4000秒・ISO 100・WBオート・RAW
LEICA SUMMILUX-M f1.4/35mm ASPH.
驚異の描写力を実感
フォトグラファー 河田一規
35mmレンズは、一般的な感覚では広角レンズに属するわけだが、M型ライカのようなレンジファインダー機ユーザーにとっては、広角レンズというよりは「準標準レンズ」という感覚で、やや広めの標準レンズとして35mmレンズの画角を捉えている人も多い。ポートレートからスナップ、風景まで、どんな被写体にもオールマイティに対応しやすい焦点距離である。
現行のM型ライカ用35mmレンズは、ズミルックスM f1.4/35mm ASPH.を筆頭に、ズミクロンM f2.0/35mm ASPH.、そしてズマリットM f2.5/35mmと、開放f値の異なる3種類から選ぶことができる。今回はこの中から最新のズミルックスM f1.4/35mm ASPH.を試用してみた。
最新ズミルックス35mmのレビューの前に、まずはズミルックス35mmの歴史を簡単に振り返っておこう。ライカの経験が長い人はご存じの通り、1961年に登場した初代ズミルックス35㎜は非常に個性的な写りをするレンズだった。絞り開放では大きなニジミを伴った描写ながら、絞り込むと一転してシャープ感の高くなる「ジキルとハイド」的な二面性をもった写りで、今でも中古市場で大人気のレンズだ。その後、 1991年になるとライカ製35mmレンズとしては初めて非球面レンズを採用した2代目、1994年には非球面レンズの面数を変えた3代目が登場。そして2010年からは現行ズミルックス35mmが発売される。
ライカM (Typ240)・f8・1/750秒・ISO 200・WBオート・RAW
現行の最新ズミルックス35mmが先代と大きく異なるのは、デジタルカメラで使われることを明確に視野に入れて設計されていることだ。デジタルで問題となりやすいフレアやゴーストの発生しにくいコーティングを採用しており、あらゆる光線状態で非常にヌケがいい描写を得られる。
ピント合わせは当然ながらインナーフォーカスなどではなく、画質を最優先した全群繰り出し式を採用。しかも絞り羽根以降の後部レンズ群は全体繰り出しとは別の独立した動きとなるフローティング構造を採用。これにより無限遠から70cmの最短撮影距離まで、画面全体で均質性の高い描写を実現している。
実際に使ってみると、その写りの秀逸さは驚くほどハイレベル。絞り開放でも合焦部のコントラストは充分に高い。レンジファインダー機ならではのピント精度の高さも相まって、安心して絞り開放から撮影できる。しかも絞り込んでいっても線が太くなることは皆無で、F8あたりの使用頻度の高い絞り設定でも極めてシャープな結像を得られる。今回はライカM (Typ 240)と組合わせて使ったが、デジタルに対する適応は完璧で、解像性能に関してはまだまだレンズ側に余裕があると感じた。通常のレンズキャップの他にフードキャップも付属するなど、使い勝手の面もよく考えられているのが嬉しい。
オールラウンドなMレンズ
「ライカ ズミルックスM f1.4/35mm ASPH.」は、Mシステムの広角レンズとして従来から親しまれているモデルだが、最新の光学技術と精密技術を投入して改良を加え、大口径広角レンズのまったく新しいスタンダードとして生まれ変わった。被写界深度を浅くしたクローズアップ撮影から、被写界深度を深くした風景撮影、定常光を利用した高コントラストな描写まで、さまざまな用途に対応する。
絞り開放でも画面中央部の解像度は極めて高い。F2.8時とF5.6時のMTF曲線は非常に近似であり、画面全体の解像性能はF2.8ですでにかなり高いレベルにあることがわかる。
※ズミルックスM f1.4/35mm ASPH. は現在新しいバージョンを取り扱っております。
テクニカルデータを含む詳細はこちらよりご確認ください。
ズミルックスM f1.4/35mm ASPH.<new> ブラック
ズミルックスM f1.4/35mm ASPH.<new> シルバー
TECHNICAL DATA ライカ ズミルックスM f1.4/35mm ASPH.
画角
画角(対角線、水平、垂直) | 35mm判(24×36mm)63°、54°、37° ライカM8シリーズ(18×27mm)50°、42°、28°(35mm 判換算で約47mm) |
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光学系
レンズ構成 | 5群 9枚 |
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非球面レンズ | 1枚 |
入射瞳位置(第1面からの距離) | 16.6mm |
撮影設定
撮影距離 | 0.7 〜 ∞ |
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目盛り | メートル及びフィート表示 |
最短撮影範囲/最大撮影倍率 | 35mm判 約418×626mm / 1:17.4 ライカM8 シリーズ 約313×470mm |
絞り
設定方式 | クリックストップにより設定 (1/2 ステップ) |
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最小絞り | F16 |
絞り枚数 | 9枚 |
その他
レンズマウント | すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、デジタルMカメラ識別用6ビット・コード付き |
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フィルターマウント | 内側にねじ込み式フィルター用のねじ、非回転式 、フィルターサイズ E46 |
レンズフード | ねじ込み式 (付属) |
本体仕上げ | ブラックアルマイト仕上げ |
寸法・質量
先端からバヨネットフランジまでの長さ | 約 46mm/ 約 58mm (レンズフード装着時) |
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最大径 | 約 56mm |
質量 | 約 320g |
フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)
1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。