Mレンズの実力
LEICA SUPER-ELMAR-M f3.8/18mm ASPH.
From Leica Style Magazine Vol. 15
画面内に光源が写り込む場合でもフレアによるコントラスト低下はほとんどなく、コーティング性能の高さを感じる。
ライカM (Typ 240)・f8.0・1/1500秒・ISO 200・WBオート・RAW
LEICA SUPER-ELMAR-M f3.8/18mm ASPH.
気軽に使える実用性の高い広角
フォトグラファー 河田一規
今回試用したスーパー・エルマーM f3.8/18mm ASPH.は、現行のM型ライカ用単焦点レンズとしては最広角を誇る1本だ。M型ライカ用には別にトリ・エルマーM16−18−21mmという3焦点レンズもあるし、過去にはホロゴン15㎜F8なんていう超広角レンズもあったけれど、トリ・エルマーはかなり高価だし、ホロゴン15mmは製造本数が少なすぎて中古市場でも非常にレアな存在。もちろんあったとしてもそれなりのお値段である。となると、現状ではこのスーパー・エルマー18mmがもっとも気軽にM型ライカで超広角撮影を楽しめる純正レンズということになる。
このスーパー・エルマー18mmが登場したのは2009年3月のこと。当時のM型デジタルはまだM8.2が最新で、フルサイズのライカM9が登場していない時期だった。したがって、18mmという焦点距離にはAPS−Hサイズの撮像素子を搭載するライカM8やM8.2で、24mm相当という実用的な広角画角を確保するためのレンズという意味合いもあったと思う。ただ、もちろんレンズそのものの設計はフルサイズ対応であり、ライカM9や最新のライカMにも対応する。今回は最新のライカMと組合わせて使用してみた。
ライカM (Typ240)・f8.0・1/750秒・ISO 200・WBオート・RAW
実際に使ってみて強く感じたのは、18mmという焦点距離の「意外な」使いやすさだ。一般的に広角レンズは焦点距離が短くなるほど使いこなしが難しくなるわけだが、この18㎜という焦点距離なら、「21mmの延長」的な感覚で使い切れる。
これが15mmとかになってしまうとパースペクティブがあまりに強力になってしまうため、かなり特殊なレンズとして扱わなければならないが、18mmだとそこまでの特殊性はなく、グッと常用感が増す感じなのだ。あまりに特殊すぎるレンズは使用する機会が自ずと限られてしまうけれど、このスーパー・エルマー18mmなら相当な高頻度で活躍する場があると思う。
画質的には完全にデジタルで使われることを意識した設計だけあって、フルサイズ2400万画素ローパスレスのライカMとの組合わせでも不満はまったくない。約100度という画角のため、どうしても画面内に光源がフレームインすることが多くなるわけだが、そんな時でもフレアの発生は最小限に抑えられており、強いコントラストが維持される。解像性能も文句なく、あいまいさのない、エッジがしっかりと立ったキレのある描写力は感動できるレベル。
18mmの超広角レンズということで、最初から躊躇されている方もいるかもしれないが、食わず嫌いは損だ。また、「写真が最近マンネリ化してしまって・・・」という人にも新しい視角を得られる1本としてもぜひ試してみて欲しい。
最先端の超広角レンズ
「ライカ スーパー・エルマーM f3.8/18mm ASPH.」は、35mm判で最大100°までの画角を誇る超広角レンズで、広大なワンシーンを写す報道写真や風景写真、建築写真など、さまざまな用途に対応する。そのワイドな画角を活かした創造性あふれる構図や表現によって、作画の可能性が一層大きく広がるだろう。また、付属するねじ込み式角形レンズフードも含め、コンパクトな設計もこのレンズの魅力だ。
F3.8時とF8時のMTF曲線に大きな違いはなく、絞り開放から十分に高い光学性能であることが分かる。
※スーパーエルマーM f3.8/18mm ASPH.ブラックの販売は終了しました。
TECHNICAL DATA ライカ スーパーエルマーM f3.8/18mm ASPH.
画角
画角(対角線、水平、垂直) | 35mm判(24×36mm) 100°、90°、67° ライカM8シリーズ(18×27mm)84°、74°、53° |
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光学系
レンズ構成 | 7群 8枚 |
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非球面レンズ | 1枚 |
入射瞳位置(第1面からの距離) | 18.3mm |
撮影設定
撮影距離 | 0.7〜∞ |
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目盛り | メートル及びフィート表示 |
最短撮影範囲/最大撮影倍率 | 35mm判 約827×1241mm / 1:34.6 ライカM8シリーズ 約620×931mm |
絞り
設定方式 | クリックストップにより設定 (1/2 ステップ) |
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最小絞り | F16 |
絞り枚数 | 9枚 |
その他
レンズマウント | すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、デジタルMカメラカメラ識別6ビット・コード付き |
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フィルターマウント | 内側にねじ込み式フィルター用のねじ、非回転式、フィルターサイズ E77 |
レンズフード | ねじ込み式 (付属) |
本体仕上げ | ブラックアルマイト仕上げ |
寸法・質量
先端からバヨネットフランジまでの長さ | 約 58mm(レンズフード装着時) |
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最大径 | 約 61mm |
質量 | 約 310g |
フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)
1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。