Mレンズの実力
LEICA ELMARIT-M f2.8/28mm ASPH.
From Leica Style Magazine Vol. 17
ガード下の暗いシーンだったので絞りは開放だが、金属の冷たい質感が感じられるほど確かな描写力はこのレンズならでは。
ライカM (TYp 240) ・f2.8・1/90秒・ISO 1250・WBオート・RAW
LEICA ELMARIT-M f2.8/28mm ASPH.
安定した描写が得られる頼もしい1本
フォトグラファー 河田一規
28mmというのは広角レンズの中ではもっとも王道的な焦点距離であり、特にスナップ派のフォトグラファーには絶大な人気がある。もう一段広角の24mmほどパースペクティブが強調されないので使い勝手がよく、レンジファインダーカメラとの相性もいい。M型ライカユーザーであれば、1本は持っておきたいレンズといえよう。現行のM型ライカ用28mmレンズは開放値がF2.0のズミクロンもあるが、今回はエルマリートM f2.8/28mm ASPH.を試用した。
開放値がF2.8のエルマリート28mmは1965年に初代が登場して以降、1972年に2世代目、1979年に3世代目、1993年に4世代目とモデルチェンジを重ね、2006年に5世代目となる現行エルマリートM f2.8/28mm ASPH.へとバトンタッチした。
ライカ純正のM型用28mm レンズとしては初めて非球面レンズを採用したことで、歴代28mmに比べて大幅な小型軽量化を実現。重さはわずか180gしかなく、これは現行のM型ライカ用レンズとしては最軽量。携帯性と機動性に優れるのはもちろんのこと、きわめて短い全長によりファインダー視野のケラれが最小限に抑えられるのも本レンズの大きなメリットである。
ライカM (TYp 240) ・f2.8・1/90秒・ISO 200・WBオート・RAW
ライカM (TYp 240) ・f8・1/30秒・ISO 200・WBオート・RAW
2世代目くらいまでのエルマリート28mmは、絞り開放時にはある程度の憂いを残した優しい描写が特徴で、その独特の開放描写が人気を呼んだが、最新型となる本レンズは絞り開放からドラスティックなほどシャープ感の高い描写で、往年のエルマリート28mmとは好対照な性格だ。オールドエルマリートの個性的な開放描写を懐かしむ人もいるだろうが、最新エルマリートの曖昧さのない明確でラジカルな写りは、現代的で頼もしさを感じる。
デジタル時代を見据えた設計ということで、逆光にもめっぽう強く、画面内に光源をフレームインさせた場合でもコントラスト低下によるフレアの発生はほとんど認められない。絞り開放ではやや周辺減光があるが、ナチュラルな落ち方なので積極的に画面効果として使ってみたくなるタイプだし、単焦点レンズだけあって歪曲収差もかなりキッチリと補正されている。
ズミルックスシリーズのような大口径ならではのデリケートな描写は得られないものの、絞り位置や撮影距離にかかわらず、いつでもどこでも安定した描写を見せてくれるのが本レンズ最大の魅力である。前述した小型軽量であることと合わせ、ストリートスナップからデイリーな常時携行用途から旅行のお供まで、とにかく何かと役立つレンズと言える。
最もコンパクトなM型レンズ
M型ライカ用純正28mmレンズとしては初めて非球面レンズを採用することで、光学性能を上げつつも小型軽量化を実現した広角単焦点レンズ。無限遠から最短撮影距離の0.7mまで、どの撮影距離でも解像感の高い安定した描写を得られる。ライカM8やM8.2と組み合わせた場合は約37mm相当の画角となり、汎用性の高い準広角レンズとして使える。
絞り開放から画面の大部分で高い数値をキープ。F5.6まで絞ると周辺部を含め画質の均質性はほぼピークとなる。
TECHNICAL DATA ライカ エルマリートM f2.8/28mm ASPH.
画角
画角(対角線、水平、垂直) | 35mm判(24×36mm) 75°、65°、46° ライカM8シリーズ(18×27mm) 60°、51°、36° |
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光学系
レンズ構成 | 6群 8枚 |
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非球面レンズ | 1枚 |
入射瞳位置(第1面からの距離) | 12.8mm |
撮影設定
撮影距離 | 0.7〜∞ |
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目盛り | メートル及びフィート表示 |
最短撮影範囲/最大撮影倍率 | 35mm判 約533×800mm / 1:22 ライカM8シリーズ 約400×600mm |
絞り
設定方式 | クリックストップにより設定 (1/2 ステップ) |
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最小絞り | F22 |
絞り枚数 | 10枚 |
その他
レンズマウント | すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、デジタルMカメラ識別6ビット・コード付き |
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フィルターマウント | 内側にねじ込み式フィルター用のねじ、非回転式、フィルターサイズ E39 |
レンズフード | クリップ式 (付属) |
本体仕上げ | ブラックアルマイト仕上げ |
寸法・質量
先端からバヨネットフランジまでの長さ | 約 46mm |
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最大径 | 約 52mm |
質量 | 約 180g |
フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)
1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。