Mレンズの実力
LEICA MACRO-ELMAR-M f4/90mm
From Leica Style Magazine Vol.17
直径5mmほどの小さな花だが、マクロアダプターMを併用すればここまで近接できる。
マクロレンズだけあって、近接時の描写も確かで、シャープな描写だ。
ライカM (Tp 240)・f5.6・1/45秒・ISO 400・WBオート・RAW
LEICA MACRO-ELMAR-M f4/90mm
撮影の可能性を広げる高い汎用性が魅力
フォトグラファー 河田一規
2006年に登場した先代のマクロ・エルマーM f4/90mmは、中間リングと光学アタッチメント(いわゆるメガネ)が一体化した専用のマクロアダプターを併用することで近接撮影を行える仕組みだった。しかし、2014年5月に発表された新マクロ・エルマーM f4/90mmでは併用するマクロアダプターを一新。アダプター側にもヘリコイドを搭載することで、従来アダプターでは1:3までだった最大撮影倍率を1:2まで上げ、より被写体に寄れるようになった。
ただし、新マクロアダプターは光学アタッチメントが廃されているため、レンジファインダーによるピント合わせは行えず、ライブビューでの使用が前提となる。このためライブビュー機構を搭載したライカM、ライカM−P以外のM型各機ではレンズ単体での使用は可能だが、マクロアダプターを併用した撮影を行えないことは覚えておきたい。
ライカM (Typ 240)・f5.6・1/1500秒・ISO 200・WBオート・RAW
M型ライカの象徴でもあるレンジファインダーを使ったマクロ撮影が行えないのはやや残念だが、その代わりにマクロレンズとしての実用性は大きく向上しており、特に絞りを開け気味にして撮影したときのピント精度は従来のマクロアダプターを大きく上回り、安心して絞りを開けられるようになった。
また、この新しいマクロアダプターはマクロ・エルマーM f4/90mm以外のレンズにも使用可能なのは旧マクロアダプターと大きく違うところ。マクロアダプターはマクロ・エルマーM f4/90mmとは別売だが、マクロ・エルマーのユーザー以外も欲しくなるアクセサリーである。
というわけで、どうしても新マクロアダプターと併用したときの話になってしまいがちなマクロ・エルマーM f4/90mmだが、レンズ単体でもかなり魅力的な1本だ。F4というまったく無理のない開放値なので性能的に安定しており、絞り開放から十分にシャープな描写を得られるのは当然として、「マクロ」レンズならではの像の均質性、つまり画面中央から周辺部まで驚くほど画質変化が少ないのはさすがである。
沈胴式なので使わないときはコンパクトに収納できるのも大きなメリットで、極力荷物を少なくしたい場合にももってこいだ。なお、一般的なレンズでは中間リングを併用すると無限遠が出なくなる(遠景にピントが合わなくなる)のが普通だが、本レンズではマクロアダプター併用時でも沈胴させることで無限遠撮影が行えるのは非常に便利。使うボディはやや限定されるものの、M型ライカの可能性を大きく広げてくれるレンズである。
本格マクロ撮影が可能
4群4枚のきわめてシンプルな光学系を持った長焦点系のマクロレンズ。少ないレンズ枚数は光学的なロスを少なくし、結果的に高いコントラストを得られることにもなる。別売のマクロアダプター(ヘリコイド付き中間リング)を併用することで最大1:2までの本格マクロ撮影が可能になる。ご覧の通り、絞り開放から画面中央部と周辺部の解像差がきわめて少ない。マクロレンズならでは均質性の高い描写性能を実現している。
マクロアダプターMはレンズとボディの間に装着する。
TECHNICAL DATA ライカ マクロ・エルマーM f4/90mm
画角
画角(対角線、水平、垂直) | 35mm判 (24×36mm) 27°、23°、15°
ライカM8シリーズ (18×27mm)20°、17°、11° |
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光学系
レンズ構成 | 4群4枚 |
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入射瞳位置(第1面からの距離) | 22mm |
撮影設定
撮影距離 | 0.8〜∞ |
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目盛り | メートル及びフィート表示 |
最短撮影範囲/最大撮影倍率 | 35mm判 約169×244mm (アダプター併用 約72×108mm) / 1:6,7 ライカM8シリーズ 約122×183mm (アダプター併用 約36×54mm) |
絞り
設定方式 | クリックストップにより設定 (1/2 ステップ) |
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最小絞り | F22 |
絞り枚数 | 10枚 |
その他
レンズマウント | すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、デジタルMカメラ識別6ビット・コード付き |
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フィルターマウント | 内側にねじ込み式フィルター用のねじ、非回転式、フィルターサイズ E39 |
レンズフード | クリップ式 (付属) |
本体仕上げ | ブラックアルマイト仕上げ |
寸法・質量
先端からバヨネットフランジまでの長さ | 約 59mm |
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最大径 | 約 52mm |
質量 | 約 230g |
フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)
1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。