Mレンズの実力

LEICA SUPER ELMAR-M f3.4/21mm ASPH.

From Leica Style Magazine Vol. 18

21mmという焦点距離は、このような都市景観の撮影にマッチしやすい。F2.8までしか絞っていないが、十分なシャープネスが得られる。
ライカM(Tp 240)・f2.8・1/180秒・ISO 200・WBオート・RAW


LEICA SUPER ELMAR-M f3.4/21mm ASPH.
現代的でありながら味わいのある1本

フォトグラファー 河田一規


ライカ用の21mmレンズは1958年に登場したスーパー・アンギュロン21mmF4が一番最初で、その5年後の1963年には開放F値が少し明るくなったスーパー・アンギュロン21mmF3.4が登場。このF3.4タイプは描写も優れていたが、鏡胴の中央がクビれたグラマラスで美しいデザインにより、今でも中古市場での人気が非常に高い。その後、ライカ用21mmはエルマリート21mmF2.8(1980年)、エルマリート21mmF2.8 ASPH.(1997年)と続き、現在はズミルックスM f1.4/21mmと、スーパー・エルマーM f3.4/21mm ASPH.の2種類から選ぶことができる。

今回試用したスーパー・エルマーM f3.4/21mm ASPH.は、従来モデルのエルマリート21mmに比べるとやや小口径化しているものの、F3.4という開放F値には銘レンズとして誉れ高いスーパー・アンギュロン21mmへのオマージュを感じる。あえてF値を抑えたメリットはやはりサイズに表れていて、エルマリート21mmF2.8 ASPH.がフィルター径55㎜、重さ300gだったのに対し、フィルター径は46mm、重さ279gとかなり小型軽量化されている。レトロフォーカスタイプの光学系を採用する21mmレンズにおいて、フィルター径46㎜というのは非常に小さく、携帯性を重視する人にとっては魅力的なポイントだ。



ライカM (Typ 240)・f1.4・1/180秒・ISO 200・WBオート・RAW


肝心の描写性能はきわめて現代的だ。現代的と聞くと「味も素っ気も無い」ようなイメージを受けるかもしれないが、スーパー・エルマーM f3.4/21mm ASPH.の場合は良い意味で現代的で、逆光でのフレア耐性や周辺画質の乱れの少なさといった最新レンズに求められる重要な要素をクリアしつつも、ライカレンズらしい立体感の演出を得られるのが素晴らしい。

広角レンズの場合、あまりにシャープな方向に画質を振ってしまうと、潤いのない、カサカサした写りになってしまいがちだが、そうはならずにシャープでありながらもどこかウエットな描写なのはさすがにライカレンズだと思う。どちらかというと絞って使われることが多い焦点レンジだが、絞り開放から合焦部の立ち上がりは完璧で、被写界深度を調節する以外の目的で絞り込む必要はまったく感じられないほど。

視覚の延長線にある28mmとは違い、視覚を超えた画角が特徴の21mmレンズだが、それだけに被写体や撮り方とマッチしたときはインパクトのある写真を得られる。実に使いこなし甲斐のある焦点距離と言えよう。




幅広く活躍する超広角

2011年に登場したばかりの新しいレンズ。両面非球面レンズを1枚、異常部分分散ガラス4枚を使用し、全体的なレンズ枚数を抑えつつ高性能を確保しているのが特長。21㎜レンズとしては小型軽量で携帯性も良好。フードは金属製のねじ込み式で、定位置でピタりと止まる。

絞りによる描写性能差が少ないのはグラフからも一目瞭然。掛け値なしに絞り開放から素晴らしい描写を得られるレンズだ。

ライカ スーパー・エルマーM
f3.4/21mm ASPH.




TECHNICAL DATAスーパー・エルマーM f3.4/21mm ASPH.

画角

画角(対角線、水平、垂直) 35mm判(24×36mm)  91°、80°、59°

光学系

レンズ構成 7群8枚
非球面レンズ 2枚
入射瞳位置(第1面からの距離) 15.6mm

撮影設定

撮影距離 0.7〜∞
目盛り メートル及びフィート表示
最短撮影範囲/最大撮影倍率 35mm判 約706×1059mm / 1:29.8

絞り

設定方式 クリックストップにより設定(1/2 ステップ)
最小絞り F16
絞り枚数 8枚

その他

レンズマウント ライカMバヨネット、デジタルMカメラ識別6ビット・コード付き
フィルターマウント 内側にねじ込み式フィルター用のねじ、非回転式、フィルターサイズ E46
本体仕上げ ブラックアルマイト仕上げ

寸法・質量

先端からバヨネットフランジまでの長さ 約 43mm
最大径 約 53mm
重量 約 279g

フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)

1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。