Mレンズの実力
LEICA SUMMILUX M f1.4/24mm ASPH.
From Leica Style Magazine Vol. 19
24mmという焦点距離は、このような都市景観の撮影にマッチしやすい。F2.8までしか絞っていないが、十分なシャープネスが得られる。
ライカM (Typ 240)・f2.8・1/180秒・ISO 200・WBオート・RAW
LEICA SUMMILUX M f1.4/24mm ASPH.
都市景観を巧みに写し出す
フォトグラファー 河田一規
24mmレンズは28mmと並んで昔から広角レンズの定番焦点距離のひとつだ。しかし、レンジファインダーライカに関してはバルナックライカの頃から21mmの次は28mmであり、24mmレンズは長らくラインアップされることはなかった。やっとレンジファインダーライカ用の24mmが登場したのは1996年のエルマリートM24㎜F2.8 ASPH.と、それほど古い話ではない。同じライカでも一眼レフであるRシリーズ用は1974年からすでに24mmが用意されていたことを考えると、M型ライカにおける24mmレンズのラインアップは明らかに遅かったといえるだろう。
超広角と広角の狭間に位置する24mmレンズは、M型ライカのようなレンジファインダー機にはかなり相性が良い焦点距離だと思うのだが、どうして1996年まで登場しなかったのか?筆者的にはライカの7不思議の一つだと考えている。とはいえ、一旦24mmがM型ライカ用レンズとしてラインアップされた以降は順調にバリエーションを拡充し、今ではエルマーM f3.8/24mm ASPH.とズミルックスM f1.4/24mm ASPH.という2本の24mmが用意されている。今回はズミルックスの方を試用してみた。
ライカM(TYp 240)・f1.4・1/180秒・ISO 200・WBオート・RAW
ズミルックスを名乗るレンズは焦点距離にかかわらず、すべてある種の描写特長を持っている。それは絞り開放付近での超繊細なピントの立ち上がり方である。このズミルックス24mmも例外ではなく、開放では得も言われぬ絶妙な結像を見せてくれる。オールドレンズの開放描写によく見られるような芯を感じさせない緩い結像ではなく、しっかりと芯はあるのだが、決して硬くなりすぎない結像なのだ。
ライカ以外の最新レンズの中には見事な解像性能を誇るレンズも少なくないが、そのほとんどは確かに高解像ではあるものの、個人的には硬すぎると感じており、ズミルックスのような芯を残しつつも決して硬くはない極上描写を見せてくれるレンズは貴重だ。
24mmという焦点距離もやはりレンジファインダーでは使いやすい。特に現代の都市景観のような被写体においては28mmよりフレーミングしやすいと思う。ライカがレンジファインダー用の24mmを出すのが遅かったと冒頭で書いたが、もしかすると、かつては時代が大らかだったので21mmか28mmのどちらかで間に合ったのかもしれない。でも、複雑な現代では24mmも必要ということで、ついにラインアップされたのかも・・・などと勝手に想像してしまった。ある意味、時代にマッチする焦点距離なのかもしれない。
定常光撮影に理想的な設計
2009年のライカM9とほぼ同時期に登場した大口径広角レンズ。8群10枚のレンズ構成のうち、5枚の異常部分分散ガラス、そして1枚の非球面レンズが使用されている。ピント位置によって変動する収差を補正するために、フローティング機能も搭載している。角型のレンズフードにはシリーズVIIのフィルターを装着可能。
絞り開放での描写性能はf1.4レンズとしてはきわめて立派だが、f2.8、そしてf5.6と絞り込むに従って主に高周波の像質が改善されていく。
※ライカ ズミルックス M f1.4/24mm ASPH.の販売は終了しました。
TECHNICAL DATA ライカ ズミルックスM f1.4/24mm ASPH.
画角
画角(対角線、水平、垂直) | 35mm判(24×36mm) 84°、74°、53° |
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光学系
レンズ構成 | 8群10枚 |
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非球面レンズ | 1枚 |
入射瞳位置(第1面からの距離) | 19.2mm |
撮影設定
撮影距離 | 0.7〜∞ |
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目盛り | メートル及びフィート表示 |
最短撮影範囲/最大撮影倍率 | 35mm判 約609mm×914mm / 1:25 |
絞り
設定方式 | クリックストップにより設定 (1/2 ステップ) |
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最小絞り | F16 |
絞り枚数 | 11枚 |
その他
レンズマウント | すばやい着脱が可能なライカM ライカMバヨネット、デジタルMカメラ識別用6ビット・コード付き |
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フィルターマウント | レンズフード内に取付け シリーズVII |
レンズフード | ねじ込み式のレンズフードを付属 |
本体仕上げ | ブラック |
寸法・質量
先端からバヨネットフランジまでの長さ | 約 58.5mm |
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最大径 | 約 61mm |
重量 | 約 500g |
フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)
1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。