Mレンズの実力

LEICA SUMMARIT M f2.4/35mm ASPH.

From Leica Style Magazine Vol. 21

手前から奥までパンフォーカスが欲しかったのでf11まで絞ったが、深度調節以外のために絞り込む必要はほとんどないほど 描写は絞り開放から安定している。
ライカM (Typ 240) ・f11・1/60秒・ISO 200・WBオート・RAW


LEICA SUMMARIT-M f2.4/35mm ASPH.
手軽に幅広く使える1本

フォトグラファー 河田一規


ズマリットシリーズに関することは本項でズマリットM 50mmを取り上げたときに詳しく書いたが、現行のM型ライカ用レンズとしては比較的買いやすい値付けがされたエントリー向けレンズという役どころである。ズマリットシリーズは35mm、50mm、75mm、90mmの4本がラインアップされており、いずれも前モデルは2007年に発売されたが、2014年のフォトキナにて現行の新ズマリットシリーズへとモデルチェンジされた。その際、開放F値が従来のF2.5からF2.4へとわずかに明るくなると共に、鏡胴デザインがより現代的なものに改められている。今回はその中からズマリットM f2.4/35mm ASPH.とズマリットM f2.4/75mmの2本を試用した。



ライカM (Typ 240) ・f8・1/1000秒・ISO 200・WBオート・RAW


まずは35mmだが、同じシリーズだけあってその描写傾向はズマリットM 50mmに近い。すなわち、ズミルックスのような繊細でデリケートな描写ではなく、どちらかというと力強い描写が持ち味のズミクロンに近い印象だ。絞り開放から像質がきわめて安定しているのはさすがライカレンズであり、その意味では絞り開放から安心して使えるポテンシャルを持っているし、絞り開放時の周辺部の乱れも最小限に抑えられている。ズマリットシリーズの4本の中では、この35mmだけに非球面レンズが使われているが、小型化と収差量の少なさを両立させることに非球面レンズの採用がきっと寄与しているのであろう。

それほど大口径ではないということでフローティング機構などは搭載されていないが、近距離から無限遠まで、撮影距離によって描写能力が変化するような印象はまったくない。大口径レンズとは異なり、すごくシンプルな光学系で高性能を狙えるのが小口径レンズの強みだ(そうは言ってもF2.4というのはズームレンズに比べたら充分に明るいわけだが)。

鏡胴素材はアルミ製で、ライカフォントの文字類もしっかりと印刻されている。いくらエントリー向けの性格を持ったレンズだからといっても、作りに関しては一切の手抜きはない。最近では相当な高額レンズであってもプラ鏡胴に文字類は印刷で済ませてしまうプロダクトが少なくないが、そういった風潮とは無縁の「ライカらしい」フィロソフィーがしっかりと貫かれているのは素晴らしいことだ。定位置でピタリと止まるネジ込み式の角型フードは造形的にもシンプルで非常にカッコいいし、かぶせ式のレンズキャップもしっかりとした金属製となっている。そうした細かい部分にも隙はなく、写りの良さを含めコストパフォーマンスのいい35mmレンズだ。




シリーズ唯一の非球面レンズ

2007年に登場したズマリットM f2.5/35mmの後継モデルとして、2014年のフォトキナで発表。開放値がF2.5からF2.4へと明るくなり、鏡胴デザインがモダンな印象のものに変更された。4本のズマリットシリーズの中では、この35mmだけが非球面レンズを採用している。

絞り込むにしたがって周辺の解像力が上がっていくのは当然だが、画面中心部については絞り値にかかわらずほぼ同等の性能を備えている。


※ライカズマリットM f2.4/35mm ASPH.の販売は終了しました。

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TECHNICAL DATA  ライカズマリットM f2.4/35mm ASPH.

画角

画角(対角線、水平、垂直)

光学系

レンズ構成 4群6枚  非球面レンズ 1枚

撮影設定

撮影距離 0.8mm 〜 ∞
目盛り メートル及びフィート表示

絞り

設定方式 クリックストップ (1/2 ステップ)
最小絞り F16
絞り枚数 9枚

その他

レンズマウント すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、
デジタルMカメラ識別6ビット・コード付き
フィルターサイズ E46
レンズフード 金属
本体仕上げ ブラック、シルバー

寸法・質量

先端からバヨネットフランジまでの長さ 約 34mm
最大径 約 52mm
重量 約 197g

フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)

1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。