Mレンズの実力

LEICA SUMMICRON-M f2.0/35mm ASPH.

From Leica Style Magazine Vol. 22

絞り開放で撮影。合焦した部分のピントの先鋭度は申し分ない。
ライカM(Typ240)・f2.0・1/250秒・ISO 200・WBオート・RAW


LEICA SUMMICRON-M f2.0/35mm ASPH.
洗練された機動性の高いレンズ

フォトグラファー 河田一規



M型ライカ用の現行ズミクロン35mmについては以前に本連載で取り上げたことがあるが、ちょっと前にリニューアルされたので、どこが変わったのか検証してみよう。

まずは外観の違いだが、レンズフードが従来のフック取り付け式プラスチック製から、ネジ込み式の金属製に変更されたことが大きく目を引く。従来のプラスチック製フードも非常に実用的であり個人的にはまったく悪いイメージは持っていなかったけれど、金属製の方が高級感があって、造形的にもシャープな印象なのは確かだ。

ネジ込み式とすることで、従来あったフックの出っ張りも無くなって、フードそのものが極めてシンプルでミニマルなデザインになったことも好ましい。この新型フードは単に金属化されただけではなく、フードの有効長も従来型より深くなっているので、フレアやゴースト対策の観点からもより効果的と言える。単にカッコ良くしただけでは済ませないところがライカらしい。

この他にもピントリングの幅が従来より太くなったことで、無限遠位置にしたときの絞りリングとピントリングの間隔が狭くなっていて見た目のバランスがよくなったこと。あとはレンズ前面の銘板の文字表記が従来と異なり、カメラへ装着したときに正方向になる(従来は下半分の文字列は上下逆さまになっていた)よう変更されたことなどが従来ズミクロン35mmとの相違点だ。



ライカM(Typ240)・f5.6・1/180秒・ISO320・WBオート・RAW


次に光学系だが、新旧レンズ構成図を見比べてみても違いはまったくなく、5群7枚のレンズ構成から非球面レンズの位置など、構成図を見た限りでは完全に同一に見える。これについてライカの光学開発責任者であるピーター・カルベ氏に尋ねたところ、光学系は従来とほぼ同じだが、より性能を上げるためにレンズ間隔などをほんの少しだけリファインしたという。どうやら相当に微妙な小変更らしく、その違いはレンズ構成図からは読み取れないようだ。

ただし、明確に変わった部分もある。それは絞り羽根の枚数で、従来ズミクロン35mmが8枚だったのに対し、新ズミクロン35mmは11枚に増え、これにより絞った時の点光源形状が丸に近くなると共に、ボケ味もより自然になっている。夜景などでは点光源部に発生する光芒の数が格段に多くなる(ご存じの通り、絞り羽根枚数が偶数枚のときは光芒数=羽根の枚数だが、奇数の時は羽根の枚数の倍の光芒が現れる)という違いもある。

従来ズミクロン35mmは1997年の登場なので約19年経っているわけだが、それでも最新型を設計するにあたって光学系を大きく変更する必要がなかったというのは、もともと光学完成度が高かったということ。従来ズミクロン35mmと同様に小型軽量で機動性の高いチャーミングなレンズである。




コンパクトな定番

スナップやルポルタージュに最適な定番レンズの最新バージョン。光学系をわずかに改良することで、デジタルボディへの適性能力をより向上させると同時にレンズフードの金属化など、全体的に細かい見直しが図られている。



ズミクロン M f2.0/35mm ASPH. ブラック

ズミクロン M f2.0/35mm ASPH. シルバー




TECHNICAL DATA  ライカ ズミクロンM f2.0/35mm ASPH.

画角

画角(対角線、水平、垂直) 35mm判(24×36mm)(63°、54°、38°)

光学系

レンズ構成 5群7枚
非球面レンズ 1枚
入射瞳位置 (第1面からの距離) 18.4mm

撮影設定

撮影距離 0.7mm 〜 ∞
目盛り メートル及びフィート表示
最大撮影倍率 35mm判 約420mm×630mm / 1:17.4

絞り

設定方式 クリックストップ (1/2 ステップ)
最小絞り F16
絞り枚数 11枚

その他

レンズマウント すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、
デジタルMカメラ識別6ビット・コード付き
フィルターサイズ E39
レンズフード ねじ込み式のレンズフードを付属
本体仕上げ ブラック、シルバー

寸法・質量

先端からバヨネットフランジまでの長さ 約 35.7mm
最大径 約 53mm
重量 約 252g

フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)

1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。