Mレンズの実力
LEICA APO-TELYT-M f3.4/135mm
From Leica Style Magazine Vol. 22
この距離であればレンジファインダーでもピントは容易に合う。合焦部のシャープだけど硬くない写り方はこのレンズならでは。
ライカM(Typ240)・f3.4・1/500秒・ISO320・WB4500K・RAW
LEICA APO-TELYT-M f3.4/135mm
シャープでありながら硬くない望遠
フォトグラファー 河田一規
現行のM型ライカ用レンズとして、もっとも焦点距離の長い望遠レンズがこのアポ・テリートM f3.4/135mmである。M型ライカのようなレンジファインダー機ではレンズ交換してもファインダー倍率が一定のため、望遠になればなるほど視野枠が小さくなってしまい撮りにくくなるという現実がある。そうしたネガティブな要素がある割にライカ用135mmレンズは昔から充実していて、時代に合わせて刷新されつつ、常にカタログにラインアップされ続けてきたのは興味深いことだ。
一眼レフ用に比べるとM型用135mmレンズは径が細くて持ち出しやすいということもあるだろうが、やはりライカが作ったレンズということで、他にはない描写的魅力があったからこそ、多少使いにくくてもM型用135mmを使う人がいつの時代にもそれなりにいたということである。
そして今、M型ライカにもついにライブビューが搭載される時代となった。ライブビューを使えば、どれだけ望遠であろうと使い勝手にまったく問題は無いわけで、その意味でもM型ライカ用135mmレンズが再評価されるべき時が来たと言ってよいのではないだろうか。しかも現行のアポ・テリートM f3.4/135mmは歴代M型用135mmの中でも最も写りの評価が高いレンズであり、個人的にもいつか使ってみたいと願っていた1本なのだ。
ライカM(Typ240)・f5.6・1/90秒・ISO200・WBオート・RAW
そして今回、ついに念願叶って試用させてもらったわけだが、その描写性能はまったく期待に違わない、素晴らしいものだった。まず、何よりも感動したのがベリーシャープでありながらも、決して硬くならないこと。これは昨今の解像優先思想のレンズにはなかなか求められない特性だ。
今回はスナップで使ってみたわけだが、機会があれば、次はぜひポートレートで使ってみたいと思った。この描写特性ならば、肌再現はウルトラスムースになるだろうし、髪などの再現も質感を伴った柔らかさを伝えるような写り方をするに違いないと感じたからだ。ボケ味の素直さも実に良質で、その点でもポートレートと相性がいい。F3.4という開放値は決して大口径とは言えないわけだけど、だからこそ4群5枚という超シンプルなレンズ構成が可能になり、それによって生み出されるシャープだがシルキーな描写はとっても魅力的だ。
ちなみに今回の撮影ではライブビューも使ったものの、レンジファインダーでも結構撮っていて、例えばトップの木馬の写真はレンジファインダーで撮ったもの。視野枠が小さくて使いにくくても、いやそれだからこそ想像力が働くのもまた真理なのだろうなと思った。
遠距離からでもシャープに
Mマウントとしては最望遠となるレンズ。4群5枚のシンプルな光学系ながら、アポクロマートレンズの使用で色収差を低減。とてもシャープでヌケのいい描写を実現している。フードは引き出し式。135mmレンズとしてはコンパクトで軽量なのも魅力。
TECHNICAL DATA ライカ アポ・テリートM f3.4/135mm
画角
画角(対角線、水平、垂直) | 35mm判(24×36mm)(18°、15°、10.2°) |
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光学系
レンズ構成 | 4群5枚 |
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入射瞳位置 | (第1面からの距離) 68mm |
撮影設定
撮影距離 | 1.5mm〜∞ |
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目盛り | メートル及びフィート表示 |
最大撮影倍率 | 35mm判 約220mm×330mm/1:9 |
絞り
設定方式 | クリックストップ (1/2 ステップ) |
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最小絞り | F22 |
絞り枚数 | 10枚 |
その他
レンズマウント | すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、 デジタルMカメラ識別6ビット・コード付 |
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フィルターサイズ | E49 |
レンズフード | フード組み込み |
本体仕上げ | ブラック |
寸法・質量
先端からバヨネットフランジまでの長さ | 約 104.7mm |
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最大径 | 約 58.5mm |
重量 | 約 450g |
フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)
1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。