Mレンズの実力

LEICA SUMMICRON-M f2.0/28mm ASPH.

From Leica Style Magazine Vol. 23

ここでは深度が欲しいのでF8まで絞ったが、絞っても線が太くなることはなく、繊細でシャープな描写がキープされる。 
ライカM(Typ240)・f8.0・1/350秒・ISO200・WBオート・RAW


LEICA SUMMICRON-M f2.0/28mm ASPH.
シャープで繊細な描写の新定番

フォトグラファー 河田一規


28㎜というのは広角レンズとしては定番中の定番の焦点距離であり、ライカでもスクリューマウントの時代からもちろんラインアップされていた。ただ、ライカは28㎜レンズの大口径化には割と慎重で、F2.8のエルマリート28㎜が最大口径という時代が数十年続き、それよりも明るいF2のズミクロン28㎜が初めて登場したのは2000年のことだった。このときビックリしたのはF2でありながら、当時のF2.8エルマリートとほとんど同じサイズを実現していたことだ。非球面レンズを採用したことで大口径であっても小型軽量な28㎜を作れたわけだが、大口径化しても無駄にレンズを大きくしないライカカメラ社の思想に感心した覚えがある。

今回試用したズミクロン28㎜は今年の初めに発売された最新型で、2000年に登場した従来型に比べるとフードが金属製になるなどリニューアルされている。光学系も刷新されているが、6群9枚のレンズ構成や、レンズ配置は従来型と同じで、公開されているレンズ構成図を見比べてもレンズ配置などに違いは見いだせない。ちなみにライカカメラ社のWebには「撮像素子のカバーガラスに起因する非点収差が大幅に補正され、画像周辺部まで高い解像力で描写します」とある。本連載の前回で取り上げたズミクロン35㎜ASPH.と同じように、デジタルボディに対応させるためにレンズ間隔などをほんの少しだけ調整した小変更のようだ。


ライカM(Typ240)・f2.8・1/180秒・ISO200・WBオート・RAW


実際に撮影してみると、確かに画面中央部と周辺部の画質差が極めて少ない、非常に均質性の高い描写であることが確認できた。しかも、その描写は画面全体にわたって線が細かい、とてもシャープな写り方なのだ。この写り方は線がやや太くて力強い描写のエルマリート28㎜F2.8ASPH.とは別傾向であり、同じ焦点距離のレンズであってもそれぞれで個性は異なる。エッジの立ったガッチリした描写が好みならエルマリートだが、デリケートで繊細な描写ならズミクロンが最適だろう。歪曲収差もハイレベルに補正されているので、直線描写が気になりやすいインテリアや建築物などの撮影に用いても満足できると思う。


ライカM(Typ240)・f8.0・1/350秒・ISO200・WBオート・RAW


なお、ライカM(Typ240)など多くのM型ライカにはファインダーに28㎜のブライトフレームが内蔵されているが、このフレームは裸眼でも視野枠の見切りがギリギリで、アイポイントが遠くなる眼鏡使用では視野の6割程度しか確認できない。その場合は外付けEVFか、外付けの28㎜レンズ用ビューファインダーを装着すると快適に撮影を行うことができる。




幅広く活躍する大口径広角

広角の定番として多くの人に親しまれている28mmレンズのF2バージョン。基本光学系は2000年登場の従来型と同じだが、2016年1月、デジタルボディに合わせて細かい見直しが図られた。同時にフードも金属製になった。

 


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TECHNICAL DATA  ライカ ズミクロンM f2.0/28mm ASPH.

画角

画角(対角線、水平、垂直) 35mm判(24×36mm)(74°、65°、46°)

光学系

レンズ構成 6群9枚 非球面レンズ 1枚
入射瞳位置 (第1面からの距離)  23.3mm

撮影設定

撮影距離 0.7mm〜∞
目盛り メートル及びフィート表示
最大撮影倍率 35mm判 約526mm×789mm/1:9

絞り

設定方式 クリックストップ (1/2 ステップ)
最小絞り F16
絞り枚数 10枚

その他

レンズマウント すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、
デジタルMカメラ識別6ビット・コード付
フィルターサイズ E46
レンズフード ねじ込み式の金属製レンズフードを付属
本体仕上げ ブラック

寸法・質量

先端からバヨネットフランジまでの長さ 約 41.4mm
最大径 約 53mm
重量 約 257g

フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)

1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。