Mレンズの実力
LEICA SUMMICRON-M f2.0/50mm
From Leica Style Magazine Vol. 23
ピントのキレのよさ、メリハリのある立体感豊かな描写を得られる。どんなシーンでも常に安定した描写なのも魅力。
ライカM(Typ240)・f8.0・1/350秒・ISO200・WBオート・RAW
LEICA SUMMICRON-M f2.0/50mm
期待を裏切らない安定の描写
フォトグラファー 河田一規
ライカのM型レンズには長期間作られ続けられているロングライフレンズがいくつもあるが、その中でもこのズミクロン50mmは基本設計が1979年から約37年間も変わっていない超ロングライフ製品だ。1994年に外観が若干変更され、引き出し式のスライドフードが内蔵されたりしているものの、光学系に関しては基本的に37年間不変というのはとにかくすごい。そしてもっと驚くのが、今でも十分に通用する光学性能を有しているということだ。
一般的にフィルム全盛時代のレンズをデジタルカメラで使った場合、現代のレンズに比べてコントラストや解像感の点で大きく見劣りするのが普通だ。しかし、このズミクロン50mmはそんなことはまったくなく、コントラスト、解像力共に最新のモダンレンズと比べても遜色ない写りを見せてくれる。これはそれだけライカの光学設計技術が昔から優れていたということの証明でもあるが、もうひとつ秘密がある。それはデジタル化されたM型ライカボディが「レンズの特性に撮像素子をマッチングさせる」という思想で作られていることである。
ライカM(Typ240)・f8.0・1/250秒・ISO200・WBオート・RAW
一般的な他社のデジタルカメラはこの考え方が逆で、撮像素子の特性に合わせてレンズを作っているため、写りの良さを求めるとどうしても古いレンズではダメで、最新設計のレンズを必要とする。ところが、ライカの場合は古い設計のレンズであってもその実力を十二分に引き出せるようボディ側が工夫されているのだ。最近はマウントアダプターを使うことでライカ以外のボディにライカレンズを装着することも物理的には可能だが、その写りがM型ライカに装着した場合と大きく隔たりがあるのは以上のような理由があるためである。
ライカMモノクローム・f2.8・1/1500秒・ISO320・RAW
ちょっと話がそれてしまったけれど、このズミクロン50mmは筆者自身が今でも常用しているライカレンズの1本であり、思い入れもひときわ強い。ハードなドキュメントからファンタジックなポートレートまで撮影対象も選ばないうえに、どんなシーンであっても決して撮影者の期待を裏切らない安定した写りには何度助けられたことか。こんなに小さくて軽いのに本当に良く写る、間違いなく「名レンズ」だと思う。ある程度のライカ好きであれば、例えズミルックスやノクティルックスの50mmを持っていたとしても、絶対に持っていた方がいい超基本万能レンズである。
理想的バランスの標準レンズ
1953年の初代登場以降、1969年のモデルチェンジを経て1979年から現在の光学系を採用している。おそらく正式にはアナウンスされていないだけで、コーティング等の変更はされていると思われるが、現在でも一線級の性能を持つロングライフレンズ。
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TECHNICAL DATA ライカ ズミクロンM f2.0/50mm
画角
画角(対角線、水平、垂直) | 35mm判(24×36mm)(47°、40°、27°) |
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光学系
レンズ構成 | 4群6枚 |
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入射瞳位置 | (第1面からの距離) 25.1mm |
撮影設定
撮影距離 | 0.7mm〜∞ |
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目盛り | メートル及びフィート表示 |
最大撮影倍率 | 35mm判 約277mm×416mm/1:11.5 |
絞り
設定方式 | クリックストップ (1/2 ステップ) |
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最小絞り | F16 |
絞り枚数 | 8枚 |
その他
レンズマウント | すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、 デジタルMカメラ識別6ビット・コード付 |
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フィルターサイズ | E39 |
レンズフード | 収納式のレンズフードを内蔵 |
本体仕上げ | ブラック |
寸法・質量
先端からバヨネットフランジまでの長さ | 約 43.5mm |
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最大径 | 約 53mm |
重量 | 約 240g |
フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)
1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。