Mレンズの実力
LEICA ELMAR-M f3.8/24mm ASPH.
From Leica Style Magazine Vol. 24
周辺部の像乱れが分かりやすいこのような被写体でも破綻はまったく感じられない盤石の描写力。
ライカM(Typ240)・f8.0・1/750秒・ISO400・WBオート・RAW
LEICA ELMAR-M f3.8/24mm ASPH.
小口径単焦点の魅力を再確認
フォトグラファー 河田一規
このレンズは2008年のフォトキナで発表されたのだが、同じフォトキナ2008ではノクティルックス f0.95/50mmやズミルックス f1.4/21mm、ズミルックスf1.4/24mmなど、ライカが誇る煌びやかな大口径レンズ群も同時に発表され、その中に混じった本レンズのf3.8/24mmというスペックは多くの人にとってひどく地味に映ったと思う。しかし、個人的にはこうした控えめなスペックの小口径レンズをキチンとラインアップするところがむしろライカらしいと感じた。
昔から写真をやっている人ならご存じの通り、以前はf3.5/28mmとか、そういう小口径レンズが各社からたくさん出ていて、ルポルタージュやスナップ分野で活躍するフォトグラファーに愛用されていた。ところが、今ではそうした小口径レンズはズームレンズに吸収されるかたちでどんどん廃止されてしまっている。「全域F2.8の大口径ズームがあれば小口径単焦点レンズはいらないでしょ?」というわけだが、本当にそうだろうか。個人的には小口径レンズならではの取り回しの良さ、機動力の高さからしか得られない世界が必ずあると思うのだ。ライカの世界観に共感を覚える人なら、小口径単焦点レンズの存在意義をきっと分かってくれるだろう。
ライカM(Typ240)・f8.0・1/1500秒・ISO400・WBオート・RAW
少し前置きが長くなってしまったけれど、このエルマーf3.8/24mmの性能はかなり高い。具体的には絞り開放からシャープかつ高コントラストなエッジの効いた描写で、とっても見事な写りなのだ。絞り込みによる画質変化は少なく、必要以上に硬くなってしまったりドライになりすぎることもなく、どこかウエットな描写なのもライカらしさを感じる部分だ。
ライカM(Typ240)・f11・1/750秒・ISO400・WBオート・RAW
24㎜という一般的にはポピュラーな焦点距離にもかかわらず、M型ライカ用レンズとして初めて24mmが用意されたのは1996年のエルマリートM f2.8/24mm ASPH.が最初であり、意外と遅かったという話については以前、本項でズミルックス24mmを取り上げたときにも書いたけれど、実は24mmという画角は室内やインテリアなどでなかなか使いやすい。その意味ではM型ライカのボディがデジタル化され、感度や光源の色に対する寛容度がフィルムの時よりも格段に上がった今こそ、M型ライカ+24mmレンズのコンビネーションが活かしやすい時代になったとも言えるかもしれない。
なお、24mmレンズをM型ライカで使用するにあたっては外付けの光学ビューファインダーもしくはEVF(ライカM(Typ240)以降のライブビュー可能機の場合)が必要になる。24mmくらいの広角になると水平を勘だけで保つのは意外と大変だが、ライブビューに水準器を表示させれば簡単に水平は出せるので、インテリア等の「水平」が出ていることが重要な撮影では、EVFの外付けファインダーが使いやすい。
ジャンルを選ばぬ高性能広角レンズ
従来あったエルマリートM f2.8/24mm ASPH.と交代するかたちで2008年のフォトキナで発表された。エルマリートよりも小口径だが、開放時のキレのよさや歪曲の少なさは優秀。フードは金属製のネジ込み式が付属する。
※ライカ エルマーM f3.8/24mm ASPH.の販売は終了しました。
TECHNICAL DATA ライカ エルマーM f3.8/24mm ASPH.
画角
画角(対角線、水平、垂直) | 35mm判(24×36mm)(84°、74°、53°) |
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光学系
レンズ構成 | 6群8枚 非球面レンズ1枚 |
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入射瞳位置 | (第1面からの距離) 24.5mm |
撮影設定
撮影距離 | 0.7mm〜∞ |
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目盛り | メートル及びフィート表示 |
最大撮影倍率 | 35mm判 約615mm×922mm/1:25.6 |
絞り
設定方式 | クリックストップ (1/2 ステップ) |
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最小絞り | F16 |
絞り枚数 | 9枚 |
その他
レンズマウント | すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、 デジタルMカメラ識別6ビット・コード付 |
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フィルターサイズ | E46 |
レンズフード | 収納式のレンズフードを内蔵 |
本体仕上げ | ブラック |
寸法・質量
先端からバヨネットフランジまでの長さ | 約 40.6mm |
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最大径 | 約 53mm |
重量 | 約 260g |
フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)
1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。