Mレンズの実力

LEICA ELMARIT-M f2.8/28mm ASPH.

From Leica Style Magazine Vol. 24

最短撮影距離の70cmで撮影。比較的小口径な広角レンズと言えども近距離撮影ではボケ量は大きい。絞り開放だが、合焦部のシャープさは絶品だ。
ライカM(Typ240)・f2.8・1/125秒・ISO200・WBオート・RAW


LEICA ELMARIT-M f2.8/28mm ASPH.
僅かな違いに最良の進化を見る

フォトグラファー 河田一規


エルマリート28mmについては本項でも以前に取り上げたことがあるが、今回ご紹介するのは2016年にバージョンアップされた最新型のエルマリート28mmである。バージョンアップといっても変更点はあまり多くなく、外観についてはフードがこれまでのフック取り付け式の樹脂製からネジ込み式のメタル製に変更され、さらに絞りリングの幅がわずかに広くなった程度。細かいところではレンズ前面枠に記されたレンズ名表示が、カメラに取り付けたときに正立するようになっている。光学系については新旧のレンズ構成図を見比べても違いは見いだせないが、ライカカメラ社によると光学系は基本的にそのままだが、デジタルボディに合わせて、ごくごくわずかなチューニングを施しているという。この辺りの改良点については本レンズと同時にバージョンアップされ、本項でも以前に紹介したズミクロン28mmやズミクロン35mmとまったく同じ内容のようだ。



ライカM(Typ240)・f5.6・1/500秒・ISO200・WBオート・RAW


ライカM8以降のデジタル化されたM型ライカの大きな特長は、従来からある膨大な数のMマウントレンズを装着したときに、レンズの真価を限りなく発揮できるよう設計されていることだ。この設計方針によりフィルム全盛時代のオールドレンズであっても、そのレンズのもつ描写傾向をデジタルでも享受できるわけだ。ただし、そうは言ってもデジタルカメラの撮像素子とフィルムの受光特性は微妙に異なるわけで、今回のバージョンアップされたエルマリート28mmではそんな微妙なフィルムとデジタルの違いを吸収するチューニングが行われていると考えられる。ただ、その光学的な改良点を実感できるかというとこれはなかなか難しい。

筆者は改良前のエルマリート28mmを所有しているので、借りた最新型と撮り比べてみたが、明確な差違は正直感じられなかった。精密にセッティングしたチャートなどの比較ではもしかすると差は出るのかも知れないが、実写ではほとんど違いは分からない。じゃあ、改良などせずに従来通りのままでもいいじゃないかという話もあるだろうが、今回の改良はフードを金属製にして堅牢性や品位を上げることが主目的で、それに合わせて光学系も「ちょっと」改良したということのようだ。ライカと同じ国で作られているスポーツカーメーカーのポルシェなどは、たとえ同じモデルであっても毎年必ず改良を行って完成度を高めている。そのことから「最新のポルシェこそ最良のポルシェ」と言われているが、その論でいくと「最新のライカこそ最良」ということになる。もちろん、ライカがこれまで作ってきた名だたるオールドレンズの素晴らしさは言わずもがなであるが、最新のライカレンズにはそれとはまた違った、モダンプロダクトとしての突き抜けた魅力があると思う。




ストリート写真の新定番

2006年に登場した5世代目エルマリート28mmを小改良した最新バージョンで、2016年に発売された。ライカレンズの中ではズマロン28mmに次いで2番目に小型軽量な広角単焦点レンズ。

 


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TECHNICAL DATA  ライカ エルマリートM f2.8/28mm ASPH.

画角

画角(対角線、水平、垂直) 35mm判(24×36mm)(75°、65°、46°)

光学系

レンズ構成 6群8枚 非球面レンズ1枚
入射瞳位置 (第1面からの距離)  11.8mm

撮影設定

撮影距離 0.7mm〜∞
目盛り メートル及びフィート表示
最大撮影倍率 35mm判 約533×800mm/1:22.2

絞り

設定方式 クリックストップ (1/2 ステップ)
最小絞り F22
絞り枚数 10枚

その他

レンズマウント すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、
デジタルMカメラ識別6ビット・コード付
フィルターサイズ E39
レンズフード ねじ込み式の金属製レンズフードを付属
本体仕上げ ブラック

寸法・質量

先端からバヨネットフランジまでの長さ 約 30.7mm
最大径 約 52mm
重量 約 175g

フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)

1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。