Mレンズの実力
LEICA SUMMILUX-M f1.4/21mm ASPH.
From Leica Style Magazine Vol. 26
窓の映り込みを利用したマルチプルイメージも浅い深度で面白い効果を得られた。
ライカM(Typ240)・f1.4・1/1000秒・ISO200・WBオート・RAW
LEICA SUMMILUX-M f1.4/21mm ASPH.
大口径の魅力を存分に発揮
フォトグラファー 河田一規
本レンズは2008年9月のフォトキナにて発表され、同年12月に発売を開始。21㎜で開放値がF1.4というのは他社を含めてそれまで例がなく、35㎜判用21㎜レンズとしては世界初のF1.4大口径レンズとして、当時はかなり話題になった。レンズ構成は8群10枚で、そのうち2面に非球面を採用。異常部分分散ガラスも5枚使われている上に、ピント位置に応じてバリアブルに収差補正を行うフローティング機構も搭載され、特に近距離撮影時に目に付きやすい各収差も効果的に補正されている。M型ライカ用交換レンズの中ではやや大きめだが、それでも21㎜F1.4というハイスペックを実現している割には小型軽量と言えるサイズといえるだろう。
ライカM(Typ240)・f1.4・1/500秒・ISO640・WBオート・RAW
描写はまさにズミルックスらしいもので、絞りを開けたときのデリケート極まるピントの立ち上がり方が非常に印象的だ。もちろん、オールドレンズの開放描写によく見られるような芯を感じさせない緩いタイプの像の結び方ではなく、しっかりと芯はあるのだが、決して硬くなりすぎない、絶妙な結像こそズミルックスに共通の美点である。F1.4の大口径とはいえ、21㎜の広角なのでアウトフォーカス量はそれほど大きくはないが、それでもF2.8クラスの21
㎜と比べれば、その違いは一目瞭然なほど深度は浅い。
背景や前景にあるモノのかたちをそれほど崩さずに、しかしピントを合わせた被写体を確実に浮き上がらせてくれるのは、大口径広角レンズだけに許された贅沢な描写特性で、被写体周囲の環境をある程度は見せつつも、主要被写体を自然と強調することができる。例えばインドアでの限られた光量下で行う静物撮影などでは、この特性が最大限に活かせると思う。もちろん絞り開放時だけではなく、絞り込んだときの描写力も一級品で、絞り込んでいっても線が太くなってしまうような傾向は皆無。絞り開放時と同じように線の細いシャープな描写のまま、被写界深度だけが深くなっていく印象である。
なお、M型ライカに内蔵されたブライトフレームは28㎜までなので、21㎜レンズを装着して使う場合には外付け光学ビューファインダー、もしくは外付けEVFを装着する必要がある。もちろん、ライブビューの可能なボディでは、液晶モニターでライブビュー表示を行えば、外付けファインダーが無くてもフレーミングは行えるが、現行の21㎜レンズ用外付けビューファインダーは目が覚めるようなクリアな視野なのでぜひ試してみて欲しい。ライカの外付けビューファインダーは昔から良質だが、現行品は最新コーティングのせいか非常にヌケがよく、使っていて気持ちが良い。
圧倒的な明るさを持ち幅広い用途で活躍
ライカ判(=35mm判フルサイズ)用21mmレンズとしては世界初のF1.4大口径を実現。超広角レンズでありながら絞りを開ければボケも楽しめ、かつてないクリエイティブな表現が可能。
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TECHNICAL DATA ライカ ズミルックスM f1.4/21mm ASPH.
画角
画角(対角線、水平、垂直) | 35mm判(24×36mm)(92°、81°、59°) |
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光学系
レンズ構成 | 8群10枚 非球面レンズ2枚 |
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入射瞳位置 | (第1面からの距離) 24.4mm |
撮影設定
撮影距離 | 0.7mm〜∞ |
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目盛り | メートル及びフィート表示 |
最大撮影倍率 | 35mm判 約685×1027mm/1:29 |
絞り
設定方式 | クリックストップ (1/2 ステップ) |
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最小絞り | F16 |
絞り枚数 | 11枚 |
その他
レンズマウント | すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、 デジタルMカメラ識別6ビット・コード付 |
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フィルターサイズ | E49 |
レンズフード | ねじ込み式の金属製レンズフードを付属 |
本体仕上げ | ブラック |
寸法・質量
先端からバヨネットフランジ までの長さ |
約 77mm |
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最大径 | 約 約69.5mm |
重量 | 約 580g |
フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)
1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。