Mレンズの実力
LEICA TRI-ELMAR-M f4/16-18-21mm ASPH.
From Leica Style Magazine Vol. 26
16mmでは強烈なパースペクティブにより見慣れた光景もドラマチックに描写される。
ライカM10・f8・1/4秒・ISO100・WBオート
LEICA TRI-ELMAR-M f4/16-18-21mm ASPH.
1本で3種類の焦点距離を楽しむ
フォトグラファー 河田一規
トリエルマーは1本で3種類の焦点距離に切り換えられる便利なレンズ。ズームレンズのように連続的に焦点距離を変えることはできないものの、1本でレンズ3本分の役目を果たすので、海外旅行など撮影機材の量を抑えたいときなどは特に重宝する。ちなみに現行のライカM用レンズでは、単焦点だとスーパーエルマーの18mmが最広角。それゆえトリエルマーの16mmというのは現行ライカレンズとしては最も広角となる。
トリエルマーは1998年に初代モデルが登場。その焦点距離は28-35-50mmで、広角〜標準域の画角をカバーするレンズだった。これに対して現行トリエルマーは思い切り超広角域にシフトし、同じトリエルマーという名称でもまったく性格の異なるレンズになっている。初代トリエルマーはすでに販売が終了しているが、初代を持っている人が現行トリエルマーも手に入れれば16〜50mmまでの6段階の焦点距離を、たった2本のレンズでカバーできるわけだ。
一般的な使用用途で考えると、初代トリエルマーの28-35-50mmという焦点距離の方がより使用頻度の高い実用画角をカバーしているわけだが、逆に言うと使用頻度の低い超広角だからこそ、単焦点よりも3焦点の方が便利という考え方もある。もし、ライカに16mmの単焦点があったとして、それ1本だけでは「何を撮ればいいのか?」と持て余してしまう可能性があるけれど、トリエルマーのように18mmと21mmが組み合わされていると、16mmの画角も意外と使いこなせてしまうものだ。
ライカM10・f8・1/4秒・ISO100・WBオート
トリエルマーにはオプションでユニバーサル広角ビューファインダーM(以下ユニバーサルファインダー)が用意されていて、これがまた非常にユニークなデザインで、M型ライカに装着すると独特のスタイルとなる。このユニバーサルファインダーは16-18-21-24-28mmという5つの画角に切り替え可能。トリエルマー以外の広角単焦点レンズにも使える他、ライカM8などのAPS-Hサイズ撮像素子モデルに現行トリエルマーを装着した場合の換算焦点距離(21-24-28mm)にも対応する。
視野内には水準器が表示されるなど、非常によくできている。もちろん外付けEVFのビゾフレックスを使用するならこのユニバーサルファインダーは不要となるため、そういう人向けに単体のトリエルマーも用意されている。もし、ユニバーサルファインダーなしのトリエルマーを購入して、あとからやっぱりユニバーサルファインダーが欲しくなったときはファインダー単体でも購入が可能なのはうれしい。
トリエルマーの最短撮影距離は50cmで、絞り込んだ状態なら33cmまでピントが来る近接能力の高さも魅力だ。ただしレンジファインダーに連動するのは70cmまでなので、それ以上の近接はライブビューでの使用が前提となる。写りは単焦点レンズに引けを取らないもので、コントラストのある精細な描写が得られる。
3つの焦点距離をカバーする超広角
単焦点ではなくズームでもない3焦点レンズ。この1本で16mm、18mm、21mmという3つの画角が楽しめる。16mmは現行ライカM用レンズとしては最広角となる。販売はレンズ単体の他、ユニバーサルワイドアングルファインダーが付属したキットもある。
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TECHNICAL DATA ライカトリエルマーM f4/16-18-21mm ASPH.
画角
画角(対角線、水平、垂直) | 35mm 判(24×36mm)16mm(107°、97°、74°)、18mm(100°、90°、67°)、21mm(92°、81°、60°) |
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光学系
レンズ構成 | 7群10枚 非球面レンズ2枚 |
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撮影設定
撮影距離 | 0.5mm〜∞ |
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目盛り | メートル及びフィート表示 |
最大撮影倍率 | 35mm判 16mm(約915×1373mm/1:38)、 18mm(約833×1250mm/1:35)、21mm(約725×1087mm/1:30) |
絞り
設定方式 | クリックストップ (1/2 ステップ) |
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最小絞り | F22 |
絞り枚数 | 9枚 |
その他
レンズマウント | すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、 デジタルMカメラ識別6ビット・コード付 |
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フィルターサイズ | E67 |
レンズフード | ねじ込み式の金属製レンズフードを付属 |
本体仕上げ | ブラック |
寸法・質量
先端からバヨネットフランジ までの長さ |
約 73mm |
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最大径 | 約 約54mm |
重量 | 約 335g |
フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)
1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。