LEICA M10 Monochrom  Part 1

Impression Report by Leica Store Staff

4000万画素のモノクローム専用設計センター搭載した、最新の「ライカM10モノクローム」は、初代のライカMモノクロームを7年間愛用している私にとって本当に心待ちにしていたカメラでした。ボディサイズはライカM10シリーズに準拠しているため、フィルムのM型カメラとほぼ同じ薄さになったところが旧来のライカユーザーとしては実に心惹かれるポイントです。

今回は、初代ライカMモノクロームユーザーとしての視点で、私自身が感じたライカM10モノクロームの魅力をお伝えしていきたいと思います。




ライカM10モノクローム ・ アポズミクロンM f2/50mm ASPH.・1/180 秒 (f2.0)・ISO 320・-2/3EV


最新のライカM10モノクロームでまず試してみたかったのが、銘玉「ライカ アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.」との組み合わせです。描写の凄さを確かめたかったのはもちろんですが、“今考えうる最高の組み合わせ”を一時的にでも手にしてみたかったというのが本音です。


至高の組み合わせということで朝から心躍りつつ、様々な場所を撮り歩きました。しかし、ふと冷静になると、やはり普段の自分のスタイルで撮ったほうが良さを実感できると思い、静かな夕方の商店街へ足を向けました。アーケードの隙間からわずかに差す光が当たるような、モノクローム映えしそうなシルエットを探しながら、ひたすら歩き回りました。


実は、撮影に行ったこの日は商店街一帯が休みの日。ですが、夜の街の顔を持つ飲食店の建物は独特なデザインになっているところが多く、モノクロームでの撮影スポットとしても面白さがあります。目に留まった場所をアングルや露出を変えながら、夢中でシャッターを切りました。



ライカM10モノクローム ・ アポズミクロンM f2/50mm ASPH.・1/125 秒 (f2.0)・ISO 4000・+1/3EV


細い小路に入ると、表通りとは時間の流れ方が違うようなひっそりとした空間に辿り着きました。ここはかなり暗い通路だったのですが、ライカM10モノクロームではISO 4000が全く気にならないノイズレベルで実用出来るので、路地裏での撮影や、夜間の撮影が好きな私には頼もしいかぎりです。



ライカM10モノクローム ・ アポズミクロンM f2/50mm ASPH.・1/125 秒 (f2.0)・ISO 200・-2/3EV


再び表通りを歩いていると自転車に差す光が目に留まり、カゴの手前にピントを合わせて撮影しました。思わず唸るほどに、この被写体サイズでも後輪の辺りの質感描写は凄まじく、石や金属などの無機質な物をもっと大きく撮ってその描写力を体感したくなります。


ライカM10モノクローム ・ アポズミクロンM f2/50mm ASPH.・1/125 秒 (f2.0)・ISO 500・-2/3EV


次に出会ったのが、撮ってくれといっているかのように見えた年代を感じるおしゃれなテーブルと椅子。特に年季を感じた部分にピントを合わせてシャッターを切りました。色情報のないモノクローム写真ならでは、年代を経て擦れた部分が味わい深い存在感を生み出していて、鈍く光る椅子の座面の描写はそこに静かに流れる時間を感じさせるかのようです。


カラーフィルターを省いてディテールまで克明に描写する高精細なセンサーを搭載したカメラに、極限まで解像性能を追求したレンズの組み合わせ。当然、連想するのは“シャープだけれど硬い写真”ですが、実際にはそんな予想を良い意味で裏切り、個人的な印象では4000万画素になったライカM10モノクロームのセンサーは、いままでのライカMモノクロームでも描写しきれていなかったような中間のグレーをさらに表現してくれるように感じました。隅々まで美しく上品にボケていくアポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.との組み合わせは、よりなだらかなトーンが表現されて、情緒的な作画にとても向いていると感じました。


ライカM10モノクローム ・ アポズミクロンM f2/50mm ASPH.・1/125 秒 (f2.0)・ISO 160・1 1/3EV


ウィンドウに飾られたマネキンを撮影したこの写真は、ガラス越しに写る手前のマネキンのボケの柔らかさがちょうど良い感じになるようにと、撮った写真をその場で確認しながら数枚撮った中の1枚です。前述のとおり、絞り開放でも、この組み合わせらしい情感のある描写に仕上がりました。より柔らかい描写のオールドレンズと組み合わせていたら、ピント面の質感を求めて少し絞って撮っていたかもしれません。そう思うと、この組み合わせならではの1枚だと感じます。



ライカM10モノクローム ・ アポズミクロンM f2/50mm ASPH.・1/125 秒 (f2.8)・ISO 800・2/3EV


前ボケは柔らかく、ピントの合った被写体は驚くほどシャープに描写するアポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.との組み合わせでは、そのギャップを活かした被写体や構図を考えながら撮影するのも楽しいのではないかと、撮った写真を見返しながら思いました。


ライカMシステムのカメラでは最新の高性能レンズから伝説のオールドレンズまで、1954年以降に発売されたあらゆるライカMレンズが装着可能です。ライカユーザーなら、ライカM10モノクロームとオールドレンズとの相性が当然気になるところですよね。早速その組み合わせを体感すべく別の日にオールドレンズをもって撮影に出かけました。


高画素化センサーとオールドレンズとの相性については、2015年にライカM モノクローム(Typ246)が発売した時にも、「センサーの画素数が上がると、オールドレンズの描写力ではついていけないのではないか」とお客様から度々ご質問を受けたので、そのあたりをぜひ自身でも確認してみたいと思っていました。実際に撮影してみた個人的な印象では、Typ246もそうだったように、オールドレンズが最新モデルの高画素センサーの解像感についていけないということはなく、むしろ、フィルムでは描写しきれなかったレンズのクセをより素直に引き出しているように思います。その意味で、最新モデルのライカM10モノクロームではよりオールドレンズの個性を味わうことができると言えるかもしれません。



ライカM10モノクローム ・ ノクティルックスM f1/50mm・1/3000 秒 (f1.0)・ISO 160・-1EV・NDフィルター使用


絞り開放で撮影したこの写真では、初代のライカMモノクロームよりも周辺の光量落ちのグラデーションがなだらかになっていることが感じられました。被写体とボケの分離は当然ながら現行のノクティルックスに比べるとなだらかで、光学設計の進化を実感できます。



ライカM10モノクローム ・ ノクティルックスM f1/50mm・1/250 秒 (f8.0)・ISO 160・-2/3EV・NDフィルター使用


ノクティルックスといえば普通ならあまり絞らずに使うレンズですが、今回はあえて絞って撮影してみました。開放の時の印象から一転、絞ると急にシャープになるギャップもまた明るい大口径レンズの魅力ですね。


ライカM10モノクローム ・ ノクティルックスM f1/50mm・1/1000 秒 (f1.2)・ISO 160・-2/3EV・NDフィルター使用


今回は、記録形式をDNGとJPEGの両方で撮影してみました。比較すると、JPEGはDNGに比べてシャドウ部を明るめに補正する傾向に感じられました。コントラストの高いモノクローム写真が好きな方は、DNGファイルを自分好みに編集するか、JPEGならコントラストの設定を“高”にして、露出アンダーで撮るのも良いかもしれません。なお、今回の記事で掲載している写真はすべて、DNGデータを編集したものです。



ライカM10モノクローム ・ ノクティルックスM f1/50mm・1/500 秒 (f2.0)・ISO 160・-1 1/3EV・NDフィルター使用


人気のない場所に、そっと置き忘れられた麦わら帽子を切り撮りました。奥の木々の隙間から漏れる光が、オールドレンズらしい賑やかな玉ボケになって表現されました。



ライカM10モノクローム ・ ズミルックスM f1.4/35mm・1/4000 秒 (f1.4)・ISO 160・-1 1/3EV・NDフィルター使用


オールドレンズの中でも格別に特徴的な描写をする球面のズミルックス35mmも組み合わせて撮影してみました。絞り開放における柔らかい描写の中にも、はっきりと解像線が確認できるのはモノクローム専用機ならでは。カラーセンサー機では、等倍で確認してもこうはいきません。


最新のデジタルカメラでありながらも本質を追求して機能をあえて削ぎ落し、モノクローム写真しか撮れないというライカM10モノクロームのストイックさは、ライカでモノクローム写真を撮りたいと考えている人にとって大きな魅力でしょう。そして、そのストイックさこそがこだわりの所有欲を満たしてくれる要素の1つともいえるのではないでしょうか。


実際に体感してみて感じたのは、高感度特性がより向上したことで夜のスナップや暗所での撮影の可能性が大きく広がり、これまで以上に「使っていて本当に楽しいカメラ」だということです。


ライカM10モノクロームなら、カラー写真をモノクロに変換する事では得られない、モノクローム撮影専用カメラならではの卓越した描写力と満足感を確実に得ることができます。「いつかはライカでモノクロ写真を撮りたい」と考えているなら、憧れで終わらせず、ぜひ今体感してみてはいかがでしょうか。


Photo By H, Leica Store Matsuzakaya Nagoya


新次元の高画質を実現する

-モノクローム撮影専用レンジファインダー式デジタルカメラ-

「ライカM10モノクローム」は高画素の撮影素子により、光の状況を問わずシャープな描写でこれまで以上に高精細に細部を表現できます。また、モノクロ撮影専用のデジタルレンジファインダーカメラとしては初めて、ISO160~100000の非常に幅広い感度域を実現しています。この全感度域において細部まで粒状性が良く、きわめて美しい描写が可能です。


 

※ライカM10モノクロームの販売は終了しました。

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