Leica × Professional
ー 美容師 福井 達真 ー



様々な分野でプロフェッショナルとして活躍されているライカユーザーの方に、ライカのある日常について語っていただくこの企画。今回は、PEEK-A-BOO 銀座並木通りのクリエイティブディレクターであり美容師の福井達真さんに、今までの写真遍歴、そしてライカとの関わりなどについてインタビューさせていただきました。

Interview & text: yoneyamaX




――本日はよろしくお願い致します。
早速ですが、まずは写真を撮るようになったきっかけから教えていただけますか?

「自分がカメラを買ったのは30年程前でしょうか、東京に出てきて美容師を始めた頃です。まだフィルムの時代だったのですが、単純に“カメラは恰好がいいな”と思い、先輩と一緒にカメラ店に行き、ライカ・ハッセルブラッド・ローライといった舶来ものも気になったのですが、結局は当時の現行機種であったニコンF3とF1.4/50mmのレンズを中古で購入しました。そして風景写真を撮りながら徐々にレンズを増やしていきました。もちろん趣味の世界でしたが、そこからどんどん写真の世界にはまっていきました。そして徐々にカメラの台数も増えていって、富士山に登った時にはカメラ4台を持って行くほどになりました。山の上では気温のせいか2台のカメラが使えなくなりましたが(笑)」


@TATSUMASAFUKUI


――お好きな被写体はどのようなものでしょうか?

「風景写真も好きですが、ファッションモデルが撮りたいですね。
風景の写真ではパリの感じが好きですね。最近ではサーフィンもやりますので、南国の写真も撮ります。昔は人物が入らない風景写真の方が好きだったのですが、現在は人物が入っている写真の方が好きになりました」


@TATSUMASAFUKUI


――お好きな写真家はいらっしゃいますか?

「Paolo Roversu, Tim Walker, Nick Knight と言ったファッションフォトグラファーです。Paolo Roversu は、昔はリンホフの10x10を使っていたのですが、今はデジタルで撮影しているようです。セットアップして完璧に作り上げた彼のモデル撮影は参考になります。またTim Walkerは、映画監督でもあるので、ファンタジーな世界観の写真が好きです。Nick Knightは逆に広告っぽいイメージが特徴ですね。モノクロームでしたら、Bruce WeberやPeter Lindberghの写真が好きです。カラーの時代になった時にWilliam Egglestonが出てきたのですが、ここを見てくれという表現方法が参考になっています。ただ写すのではなく、どう写すのかという事を考えさせられますね。彼らの写真集はアイディアの宝庫ですし私の教本でもあるので、これらを参考にして撮影をしています。自宅には数多くの写真集があります」


――それでは福井さんにとって写真の魅力とはなんでしょうか?

「例えばモデル撮影の場合、モデルも髪型もヘアメイクも同じなのにフォトグラファーが違うとまったく異なる写真になりますよね。ライティングや光の使い方、声のかけ方、動かし方、カメラの操り方の違いによって写真は変わりますので、そこが撮影の魅力のひとつで面白いところです」


@TATSUMASAFUKUI


――写真を通して何かやってみたい事はありますか?

「現在、IN BOXという撮影をやっているのですが、これを続けていきたいと思っています。これは90cm四方の白い四角の枠を作り、その中で同じライティング、そして同じ機材を使ってモデルのみを変えながら撮影していくシリーズで、フラワーデザイナーとメイク、そして私との3人の共作となります。これは撮影条件が一緒で、モデルが主体の撮影となりますので、私としては、フォトグラファーとしての撮影ではなく、美容師としての活動という位置づけです」


@TATSUMASAFUKUI


――それぞれにテーマがあり、見て楽しめる大変素晴らしい作品だと思います。

――ご自分の撮影テクニックというものは何かありますか?

「好きな作品を参考にして、撮影を試しながら色々と試行錯誤しつつ自らテクニックを学んでいくのが自分のスタイルだと思います。また、広角撮影が好きなので28mmを良く使用します。21mmを使ってパースをつける写真も好きですね。IN BOXも、中心に21mmをセットして比較的近距離から撮影しています。ちなみにIN BOXは正方形なので、ライカSL2の正方形のアスペクト比を使って撮影しています。良く使うシャッタースピードは1/125秒前後でしょうか。スナップの撮影時は1/60秒位ですね。絞りは開放を使う場合が多いです。開放値によってレンズの値段が異なるので、撮影で開放を使わなかったらそのレンズを買った意味がないですよね」

――ライカの設計者がお薦めしている開放での撮影ですね。素晴らしいです。


――撮影時に意識している事はありますか?

「例えばクロップして、望遠のように切り撮る事もできますが、正確には光学的に焦点距離を変えるのとは異なる表現になりますので、それ相応の交換レンズが必要になります。今は90mmや100mmにも興味があるのですが、そうなるとまたレンズが増えていってしまいます」

――それはいいですね~(笑)

「作品を仕上げていくのに、リーダーが誰かという事によって写真に大きな影響を与えると考えています。例えば美容雑誌だったら美容師、一般誌の撮影だったらフォトグラファー、媒体によってはプロデューサーがプライオリティを持っていますので、それによって写真も変わってきます。そのため、撮影時には自分がどの立場にいるのかを意識するようにしています。
また、撮影現場のそこに写り込ませたい空気感をつくるという事も重要視しています。もともとはコミュニケーションをとりながらの雰囲気作りは苦手だったので風景写真を撮っていたのですが、ポートレート撮影の場合は重要なポイントですので、最近はそのような空気感も考えながら撮影しています」


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「昔、大御所のフォトグラファーの撮影で美容師のアシスタントとして現場に入ったことがあるのですが、撮影のセッティングはすべてアシスタントが行っていました。そしてそのフォトグラファーが入ってきたとたん、周りの空気がピリッと引き締まったのですが、彼の仕事としては、ほぼシャッターを押すことだけでした。下積みや実績があるからこそそれが成り立つのでしょうね。チームとして動いているので、皆で良い作品を作り上げられるのでしょう」


――最初に手にしたライカはどの機種でしょうか?

「以前は、中判カメラを基本に数多くのフィルムカメラを使っていたのですが、時代がデジタルに変わりつつある時に、一流のフォトグラファーと仕事をしたいのなら、一流の美容師を目指せと先輩に言われました。その言葉から、まずは美容師として一流になるまでは写真をやめようと思い、その後数年間ブランクの時期がありました。
しかしながら、自分の美容師としての仕事をプロのフォトグラファーに撮ってもらっても、ここは違うんじゃないかなと思う事が多くなり、やはり自分が撮った方が良いと言う判断に至りました。そこで改めて写真をスタートしよう思い、それまではライカを持ったことがなかったので、新たにカメラを買うのならライカがいいかなと思ったのです。まずは趣味で使用するカメラという事で、レンジファインダーカメラのライカM8とズミクロン50mmの沈胴レンズを中古で入手しました。これが最初のライカです。それを試したところ、話には聞いていた空気が写るとはこういう事かと実感し、それと同時にその解像力の高さにも驚きを覚えました。このライカM8を使ってスローシャッターで撮った時の作品のにじみを見てからは、本当にライカにはまりました」


@TATSUMASAFUKUI


「その後、ライカM10が発売されるのを待って、発売と同時に買いに行きました。美容師の中で、ライカM10を一番早く買ったのは私だと思います。(笑) ライカM10は、解像度も高くて良いカメラでしたが、動画が使えなかった事と、二重像でのピント合わせが苦になってきたので、その後発売と同時にライカSL2を購入しました。これもまた美容師の中では一番早かったと思います。(笑)ライカが作り出す画像は忘れられなかったので、迷いはありませんでした。ライカSL2には機動力がありますよね。オートフォーカスも良いですし動画も撮れます。視度補正機構も助かります。Mレンズが使える点もいいですよね。レンズは、SL用のズームレンズのバリオ・エルマリートSL f2.8/24-70mm ASPH. をメインに使っていますが、いくつかのMレンズをライカSL2に付けて使う事もあります」


――ライカの魅力とはどのような所でしょうか?

「私の中でライカは、頭の中にあるイメージをそのまま写真として表現してくれる機械です。他のカメラですとその間に一度処理をする作業が必要となるのですが、ライカはダイレクトにそのままのイメージが画像になるのでそこは大きな魅力ですよね。そして、趣味カメラでもあるし、仕事のカメラにもなります。私はコレクターではないので、実際に撮影を満足させるカメラのみが必要なのです」


――ライカならではのエピソードはありますか?

「パリの朝市を見に行った時に、ある店の亭主が「こいつはライカを持っているぞ。どうせ偽物だろうけどな」って言っていました。フランス語はわかりませんがそんな感じです。(笑)
それもあり、私はライカを持ち運ぶときは赤ロゴを隠しています。パリに行った時、ライカSL2は無音になるところがいいと改めて感じました。やはり、ポートレートを撮る時にはシャッター音が気になりますので、無音で、そしてノーファインダーで撮ると相手に意識をさせずに撮影できますからね」


@TATSUMASAFUKUI


――美容師として撮影を始められたきっかけは?

「美容師はヘアモデルの作品=写真が名刺となりますので、その作品を撮りたくなったのがきっかけです。私はこれらの作品にあるようなスタイリングができるので、仕事を下さいという名刺です。その撮影をプロのフォトグラファーに依頼すれば、お金がかかりますし、思う通りに仕上がらない場合もあるので、自分で始めたわけです」

――どうやって撮影の腕をあげていったのですか?

「写真を正式に学んだ事はありませんが、撮影を続けていく事で、色々と勉強してきました。失敗も沢山して、こうしたい、ああしたいという試行錯誤を繰り返しながらだんだん腕も進歩していったのでしょうね。その結果が私の名刺となっているのです」


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「ところで、フォトグラファーになるにはどうすれば良いのでしょうか?」

――フォトグラファーになるのに免許や試験は必要ありませんので、名刺に肩書を入れた時がフォトグラファーになった時だと言う人もいますが、実際には撮影でお金を稼いでいるかどうかがその別れ道となるのでしょうね。福井さんの場合は、ビジネスで使うカタログなどを頻繁に撮影されていますので、フォトグラファーと名乗っても良いと思いますよ。


――フォトグラファーと美容師、そこに共通点はありますか?

「表現者としての共通点があると思います。スタイルをどうしようかとか、デザインをどうしようかという考え方は同じです。美容師には万人受けするタイプとトレンドを追うタイプがいますし、その両方を取る場合もあり、それは人それぞれです。結局自分としては、流れを作り出せる美容師になりたいですし、自分のブランディングが必要だと思います。 そして、できれば美容師として、フォトグラファーとして、作品を発表していきたいと思います。そしてぜひ個展をやりたいですね」

――まさに美容師とフォトグラファーの二刀流ですね。

「そうですね。主な作業はアシスタントに任せて、最後にOKを出せるような立場になれればいいですね(笑)」



福井達真さんにお会いする前は、趣味で写真を撮っている美容師さんなのかなと予想していましたが、その撮影風景や作品を拝見し、お話をお伺いしてみたところ、熱心に勉強をし、プロ以上に頻繁に撮影をされていました。特にモデルの撮影ではライティングを駆使し、バックライトを入れるなどの撮影をこなされていることに驚きました。ライティングが使えるのがプロであると言われていますが、彼は才能のある美容師であり、そして立派なフォトグラファーのひとりでもあると感じました。




福井達真 / Tatsumasa Fukui プロフィール

レジェンド川島文夫が率いる美容師集団「PEEK-A-BOO」のビジュアル統括クリエイティブディレクター。 美容師歴30年のキャリアがあり、芸能人や著名人も数多く通う。 ライカ歴は2014年から、ライカM8をはじめにライカM10や、ライカSL2を愛用。
フォトクリエイションとしては、「IN BOX ART」というアートワークをフラワーアーティストとMAKEUPアーティストと共同制作のディレクションをしている。


PHOTO作品
https://tatsumasafukui.mystrikingly.com

Blog「ライカを片手に気ままな自転車人」
https://tatsufuku.exblog.jp

著書
売れるカットの絶対ベーシック
カットの失敗まるっと解決
11のグラボブをつくりわけるパネルコントロール




PEEK-A-BOO 銀座並木通り店

銀座の並木通りとみゆき通りの交差する一等地の場所にあるサロン。 そのサロンに通うお客様は長年通われている方から、トレンドに敏感な若者や、家族連れや子供まで幅がひろい。カット技術には定評があり、上質な仕立ての良いスタイルは品があり女性をいつも有頂天にさせてくれる。

https://www.peek-a-boo.co.jp/salon/ginza-namiki-dori