「一瞬の日常を美しく撮る」
ーー ライカのカメラについてはどういう印象をお持ちですか
ライツパーク(ドイツ・ウェッツラーにあるライカカメラの本社)のオープニングイベントにご招待いただいた際、世界各国から著名な写真家がライツパークに集まっていたのですが、そこで出会う写真家の方々が皆、子どものように目を輝かせて、ライカカメラに対する深い敬愛が感じられたことが印象的でした。どこの国を訪ねてもライカカメラを持ち歩いていると声をかけられます。そして、ライカを通してカメラ談義がはじまるんです(笑)。カメラは写真を撮るためのツールですが、ただそれだけでは無く、それぞれが自分のカメラに思いやこだわりがあります。それが、ライカユーザーは特に強いと思うんです。
ご存知のように、見ていて飽きない美術品のように美しいカメラ。そして、それ以上に独特の雰囲気を醸し出す写真を撮れる魅力があります。ライカカメラについてはみなさん共通して、宝物という存在意識がありますね。 わたしは作品を撮るとき、どのカメラを使用するかがとても重要なんです。作品のテーマごとにカメラを変えて撮るというふうに、カメラを持ったときに自分のスイッチを入れ変えるんです。例えばライカSLを初めて手にしたときに平安京のテーマが浮かびました。それからはライカSLを持つと自動的に優美な平安京モードになるというか、ライカSLがスイッチを入れてくれるんです。
ーー 作品を撮るときにまずカメラありきというのは面白いですね
私自身はカメラにとてもこだわるほうですね。モデル時代から、ポラロイドSX-70と一眼レフ、6×6、そしてライカM3の4台を旅に出るときは、必ず持ち歩いていたので、それはもう大変でした。写真家になってからも、この連載はこのカメラで撮るって、自分の頭での切り替えがカメラにあったので、持ち歩く機材の重量に「職業を間違えた!」と何度も思いました。ここ最近は、ライカSL2で撮影する作品テーマにスイッチが入っているので、バッグに入れるのはライカSL2の1台だけになりました。
ーー ライカ初のスマートフォンとしてLeitz Phone 1が発表されました。今やスマートフォンはもっとも身近なカメラだと思いますが、第一印象はいかがでしたか
とても衝撃的でした。わたしは周囲から、“ケータイカメラマン”なんて言われるほど、スマートフォンでの撮影が上手だと言われるのですが、今まではスマートフォンで撮る写真は、やはりカメラで撮るものとは違うという印象がありました。例えば、解像度や暗さの中の色の溶け具合など、いろいろな点が違いとして挙げられると思います。わたし自身、今までスマートフォンでは、それなりにキレイな記念写真が撮れるという捉え方でした。
ところが今回、ライカがスマートフォンを出すということを知り、「日常が変わる!」と思いました。やはり、写真の本質的な美しさを大切にしているライカだからこそ、最先端の解釈ができるのではないかという期待があるからです。そして、その期待は確かでした。100年以上の歴史を築き上げてきたライカが、最先端のスマートフォンを手掛けるという挑戦、そしてライカブランドへの裏切らない完成度。長い時を経てもライカが古くならない老舗ブランドである所以は、こういうところにあるのだなと感じました。
ーー 使ってみてどこが良かったですか
最近はレンズが複数あるスマートフォンが多くありますが、Leitz Phone 1はひとつだけ。このシンプルさがライカらしさだと感じます。そのシンプルさを辿っていくと高性能さにつながっています。まず、1インチの大型センサーによる写りが、その謳い文句以上に満足感をもたらしてくれる画質なんです。本当に期待を裏切らない描写力でした。ピントもマニュアルでコントロールできるので、近くから遠くまでピントが合っているだけではなく、被写体の周囲を柔らかくボカすような表現もできます。 フレーミングも、ライカMシステムを想起させるブライトフレームが表示されて、好きな画角でクロップできるんです。デジタルカメラの時代になり、広めに撮っておいて、後からトリミングするプロの方も多いのですが、まさにそういう使い方をすることができます。自分がそのとき撮った画角で後悔することがないというのは理想的ですよね。
そして、ライカというとモノクローム写真のイメージが強い人も多いと思うのですが、その期待に応えてくれるLeitz Looksモノクロームモードがあります。私の印象として、ライカのモノクローム写真は色で言うとヌードカラーと表現できるような、シャドー部のトーンもキレイで、隠さずに見せてくれるという印象があります。モノクローム写真に自信がない人でも、Leitz Phone 1で撮ればアートの世界へ。トーンの美しさがアートの世界に誘うモノクロームモードはLeitz Phone 1の醍醐味ではないかと思います。多くの人はSNSなどで発信するときにはカラー写真が多く、モノクローム写真は少ないと思いますが、Leitz Phone 1を手にしたら、きっとモノクローム写真をアップしたくなると思います。Leitz Phone 1で撮ったモノクローム写真には、作品としての美しさや尊さが感じられます。
ーー カラーでは色味にライカらしさはありましたか
ライカらしい高級感のある色合いだと感じました。華やかな記憶色のJPEG。RAWでは、リアルな色味で粒子に深さがある。ライカならではのプライドとセンスに唸らされました。 描写力がある写真に仕上がるので、これならスマートフォンで撮った写真でも作品になるでしょう。例えば、暗い夕暮れ時に雨が降っていたとしても、そこにある色という色を拾い上げ、粒子が積み重なって色を表現しているのを感じられるからです。
ーーRAWで撮影されましたか
RAWで撮影しましたが、JPEGとRAWの両方を同時に保存できます。手軽なJPEGだけでもRAWに劣らず美しく感動的です。
ーー 撮るときの気合いは、スマートフォンとカメラで違いますか
今までの印象では、一般的にはスマートフォンで撮った写真は記念写真要素が強かったように思います。撮影時はどんなカメラで撮っても思い入れは変わらないのですが、従来のスマートフォンはクオリティでみると、記録写真という位置づけになっていたように思います。ですが、このLeitz Phone 1なら、スマートフォンで撮った写真も作品になると実感しています。例えば、持ち歩いていたカメラのメモリカードを出先で使いきってしまったようなときにも、どうしようと慌てることもなく「Leitz Phone 1がある!」と思えるほどに、もう1台のライカとして心強いパートナーになるのではないかと思います。
ーー 外観のデザインはどうですか
洗練されていて、ライカらしい美しさのあるスタイルですね。カメラを意識した細やかなパーツのデザインで、サイドのローレットのこだわりなどにも惚れ惚れします。一番気に入っているのは、レンズキャップ。磁石でパチンッとはまるのですが、その吸い付く爽快感は最高です。何度もつけたり外したくなります。ライカMを意識したシャッター音も心地よいですね。Leitz Phone 1の色合いは上品なので、男性はもちろんのこと、女性の手にも顔まわりにも、美しさを演出できると思いました。
ーー カメラ部のUIはいかがですか。迷ったりしましたか
ライカは操作がシンプルで分かりやすいので、Leitz Phone 1も手にしてスムーズに操作できました。
ーー 発売されたらどのように使いたいですか
ぜひ知って欲しいという想いから、沖縄や東北、北海道などで日本の絶景をLeitz Phone 1で撮影しました。これからも旅で出会う世界中の絶景をLeitz Phone 1で撮影し、シリーズとして継続していけたらと思います。アンバサダーとして、Leitz Phone 1の素晴らしさとともに、今回の撮影で日本の美しさを知ってもらう機会になれば嬉しく思います。大自然のようにスケールの大きなものが、この小さなカメラで撮影できるのは、本当に魅力的なことですよね。だって、ポケットの中に収まるサイズで、もう重い機材を担ぐ必要がないんですから。私もSNSなどで納得いく写真を気軽にアップしていきたいと思います。
ーー 今後どのような機能やアクセサリーを期待しますか
夢は広がりますね。Leitz Phone 1オリジナルのイヤホンや望遠のコンバージョンレンズなど出来たらいいですね。
ーー 最後にLeitz Phone 1についてみなさんにメッセージをお願いします
ライカは敷居が高いブランドだと感じている人もいると思います。実際、これまでに「いつかライカが似合う自分になりたい」という人に何人も会いました。私もその一人です。本当の意味でのブランド力とは、手にした人を成長させるものなのだと思います。今回、Leitz Phone 1が登場することで、より多くの人がライカに触れる機会が出来ます。日常で撮る写真の意識が高くなることでしょう。
今、私のバッグにはライカSLが入っていて、ポケットにはもう1台のカメラであるLeitz Phone 1が入っています。一瞬の日常を美しく撮るLeitz Phone 1が、いつもポケットにある贅沢を、皆さんにもぜひ体験していただきたいと思います。
安珠×LEITZ PHONE 1
SPECIAL GALLERYPHOTOGRAPHER'S VOICE
BY Anju「LEITZ PHONE 1」がポケットにあれば、日常は特別になる。
どんなに豊かで喜びに溢れるか、ぜひ、あなたにも体験して欲しい。
独特のフォルム。貴重な日本の与那国馬。マニュアルのカラーで撮り、後から調整してモノクロームにした作品。Leitz Phone 1は、いろいろな手法で写真を本格的に楽しめる。
1/1000秒・ISO 50・RAW・Mode:マニュアル写真
日没の残光が線路をうっすら照らしていた。足元に闇が広がっていたが、手持ちで撮ってみる。暗所に強く手振れ防止が抜群だった。
1/25秒・ISO 100・RAW・Mode:マニュアル写真
透明度は世界最高水準。水深は5mだが、沈んだ大木は浮いているように見えた。肉眼で見た奇跡の清さが忠実に再現されている。
1/60秒・ISO 500・RAW・Mode:マニュアル写真
黄岩から噴き出る白煙。ザラザラした岩肌。ハイスペックなダイナミックレンジがディテールを鮮明にし、絶景を見せつける。
1/10000秒・ISO 50・RAW・Mode:マニュアル写真
日の当たらない岩場は色があまりない。だが、自然な色合いをここまで拾えるのは、色表現にこだわったLeitz Phone 1の実力だ。写真を地味にしない。
1/250秒・ISO 200・RAW・Mode:マニュアル写真
裂けた岩の隙間を波が入り込む千畳敷海岸。白飛びせず、波の泡の勢いを伝えられるのは、特徴であるダイナミックレンジが生かされて、壮大さを細やかを伝える。
1/1000秒・ISO 50・Mode:Leitz Looks
シンプルで雄大な風景ほど、超広角19mmの遠近感に雄大さを感じる。解像度の素晴らしさは、岩の中の小石も鮮明に描写され、岩肌の感触が伝わるほどである。
1/1000秒・ISO 50・Mode:Leitz Looks
超広角19mmだから写せるエレガントな板根の広がり。湿った暗い木陰で、生命の色合いを写し出せるのは、明るいレンズだからだ。
1/160秒・ISO 160・RAW・Mode:マニュアル写真
夜明けを待てぬ釣り人と朝日を拝む。マニュアル操作の「コントラスト」や「HDR」機能で、朝日を白飛びさせない。暗部もつぶれず細部まで鮮明だ。
1/250秒・ISO 50・RAW・Mode:マニュアル写真
世界的ダンサーの酒井はなさんと島地保武さん。Leitz Looksはトーンが美しいので、人物撮影にも向いている。光を上手にキャッチすれば、極上の肌トーンがふたりの美しさをより演出できる。
1/60秒・ISO 400・Mode:Leitz Looks
大輪の薔薇の中心にピントを合わせる。柔らかい上質なボケの美しさは、ライカレンズの特徴だ。写真を見ると、あの日の、風にゆらぐ薔薇の香りが蘇る。
1/800秒・ISO 250・Mode:Leitz Looks
雨上がりの柔らかい光が美しい少女(兼光ほのか)を照らし出す。圧倒的な高画質の階調の滑らかさ。ライカのモノクロームは光のポエムである。
1/30秒・ISO 50・Mode:Leitz Looks
日本一の大銀杏。樹齢1000年以上、高さ31m幹周り22.m、沢山の気根・乳垂から「垂乳根の銀杏」。根の複雑さをここまで繊細に撮れる解像感を確認して欲しい。
1/800秒・ISO 50・Mode:Leitz Looks
絵の具を垂らしたような水色。小雨が一瞬晴れて、池の中に青色の道が現れた。優れた色再現の描写力が淡い色合いを引き立てる。
1/60秒・ISO 500・RAW・Mode:マニュアル写真
All Photo ©Anju
Profile
安珠Anju
国内外で活躍する写真家。東京生まれ。ジバンシーにモデルとしてスカウトされ渡仏。パリコレなど国際的に活躍し、写真家に転身し帰国。90年代から、広告、雑誌連載、講演、ビジュアルプランから映像監督まで幅広く活躍。物語を紡ぐ独特の作風。作品には、少年少女の世界「ビューティフルトゥモロウ」、「Invisible Kyoto 目に見えない平安京」など。日本写真家協会会員、日本写真協会会員、全日本写真連盟役員。 www.anjujp.com