ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.

Impression Report by Leica Store Staff


  ライカ製品を使いこなすライカスタッフが、ライカの人気モデルなどで実際に撮影してインプレッションをお届けする “Leica Staff Impression Report”。今回は、妥協なき卓越した描写性能と、ライカMレンズとして初めて実現した最短撮影距離30cmという特長により、発表以来注目を集めている「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.」をご紹介します。コンパクトなレンズのサイズとは裏腹に優れた描写を実現する「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.」のインプレッションを、静かな雨の日と清々しく晴れわたった日という対極的な光の状況下で写し撮った写真とともにご覧ください。

使用機材:「ライカM10-R」「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.



極限まで光学性能を追求した新しいライカMレンズ「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.」は、2013年に登場して以来、その類まれなる優れた描写性能が高く評価されている「ライカ アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.」に続く、Mレンズのアポ・ズミクロンとしては4本目のレンズです。

 ライカの技術者たちが『一切の妥協を許さず、従来のレンズの限界を超える卓越した描写性能を実現する』ことを目標に掲げて開発した「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.」は、光線状況が優れない厳しい撮影シーンにおいてもディテールまでシャープかつ立体的に描写する圧倒的な光学性能を誇ります。




例えば、晩春の甘雨が降り続けて雨雲が重く垂れ込めるような日にも、濡れた木肌の質感や、生い茂った葉が落とす影とその間からわずかに漏れるほのかな光まで、克明に写し出します。フォーカスが合った部分のコントラストは高く保たれ、アウトフォーカスの背景はコントラストが絶妙なバランスで抑えられることで、立体的な描写を実現しています。




 小さな若葉が絶え間なく降り注ぐ雨粒を抱えて大きくしなった枝の様子が、浮き出るように描写されています。コンパクトなライカMシステムは荷物も最小限のサイズにまとめられるので、濡れるのが億劫でつい急ぎ足になる雨の日も、お気に入りのカメラとレンズ1本を手に新しい被写体を見つけることが出来るかもしれません。特に「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.」は、レンズ長がフードを含めても約5cmと非常にコンパクトでなのでおすすめです。




雨が少し弱まった合間に、水滴がついたノースポールを撮ってみました。「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.」は、最短撮影距離がライカMシステムのレンズでは唯一となるわずか30cm。撮影の幅が格段に広がり、よりいっそうクリエイティブな作品づくりを楽しむことができます。






最短撮影距離の30㎝でもシャープな描写性能はまったく低下することはなく、濁りのない柔らかなボケ感です。






ライカMシステムレンズでは唯一の最短撮影距離30㎝を活用することで、ライカM型カメラでは撮ることが難しかったようなシーンを新しい視点で切り撮る事を可能にした「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.」。なお、撮影距離が70㎝未満の場合はライカM型カメラの距離計が連動しないため、ライブビュー機能を搭載した「ライカM10-R」などを使って液晶モニターで撮影画像を確認しながら撮影や、電子ビューファインダーの「ビゾフレックス2」などを使うのがおすすめです。




高いコントラストとシャープな描写が特徴でありながら、コントラストが高い被写体の場合にも白飛びや黒つぶれを起こすことはありません。このエスカレーターの写真からもわかるように、色が抜けて薄くなりがちな黄色の再現性やエスカレーターの黒の締りも適切です。「ライカM10-R」の豊かなハイライトの描写性能も相まって、光が反射する金属やガラスも破綻することなく描写されています。




フレアやゴーストがほとんど発生しない「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.」ですが、新緑が雨上がりの清々しい日の光に包まれた様子を再現するために、あえてフレアを発生させるために強い逆光で撮影を行いました。フレアが発生してい状況でも高い光学性能により、描写が大きく乱れることがないため、電子ビューファインダーを使用することでフレアの入り具合を確認しながら、赤く色づき始めた瑞々しい桜桃にもしっかりとピントを合わせることが出来ます。




全長が約5㎝というコンパクトなレンズのサイズからは想像できない程に、周辺部の描写も非常に高いレベルを実現しています。さすが「アポ・ズミクロン」を冠するレンズだけあって、絞り開放で撮影しても色収差は非常に少なく、先に登場した「ライカ アポ・ズミクロンM f2/50mm ASPH.」を初めて使用した時の驚きを思い出します。




焦点距離35mmは様々なシーンで活躍する画角ですが、画面周辺まで優れた描写性能を誇る「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.」を、最新版のファームウェアで新たに追加された「ライカM10-R」のパースペクティブ補正機能とともに使うことで、パースも容易に補正することができ、建築写真のクオリティも格段に高まります。




非常にコンパクトな外観サイズながら、レンズ構成は5群10枚で、10枚のレンズのうち3枚を非球面レンズ、さらに6枚に異常部分分散特性を持つ高品質な特殊ガラスを採用するなど、ライカレンズのなかでも贅沢な構成だといえます。その実力は、水面が自然のレフ版となって複雑な光の反射を浴びる首都高速道路の高架下の入り組んだ配線を、エッジを効かせながら鮮明に写し出していることからも見て取れます。




  一方で、風雨にさらせれたコンクリートと、そこにひっそりとたたずむ一褪せたゴムタイヤという、シンプルな光と影から構成される被写体においても、その質感も過不足なく写しだしています。開放値がより明るい「ズミルックス」や「ノクティルックス」ほどには溶け込むような大きなボケや、残留収差による滲みなど特徴的な描写など派手さはありませんが、「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.」は被写体が生み出す世界観と撮影者が意図する世界観とを確実に結びつけるという、写真を撮る際に最も重要とされる能力に長けており、ライカにしかない唯一無二のレンズに仕上がっています。

本インプレッション記事内でご紹介している写真のオリジナルサイズTIFFデータを、ライカストアの店頭でご覧いただけます。「ライカ アポ・ズミクロン M f2/35mm ASPH.」の類まれな描写をライカストア店頭でもご覧ください。(ストアリスト)

Photo by Y


描写力の新たな基準を打ち立てるコンパクトなレンズ

「ライカ アポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH.」は、ディテールまでシャープに描き出せるのが特長で、現行の撮像素子はもとより、今後新たな撮像素子が開発された場合でも高解像な描写が実現できるような性能を持ち合わせています。 開放値がF2.0という明るさとMレンズでは唯一となるわずか30cmという最短撮影距離を活用すれば、クリエイティブな作品づくりも多彩に楽しめます。

 

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