Everyday Carry
日々のルーティーンにライカを
ー 大門 美奈 ー
大門美奈の “Everyday Carry“
M型ライカとわたしのちょうどいい関係
ライカは気持ちがいい。手に持ったときの収まりがいい、質感がいい、シャッターを切った際の感触がいい、もちろんそこから生み出される写真もいい。
写真を撮るという行為はとてもシンプルなことだ。手もとで距離を合わせ、瞬間、ファインダーを覗いてシャッターを切るだけ。ほら、なんて簡単。シンプルな行為にはシンプルな道具がいい。仰々しくなくて、ほどよくコンパクトでさらりと事を済ますことのできるカメラ、それがわたしの愛用するM型ライカである。
モノにはそれに適したサイズというものがあると思っていて、M型ライカというのは写真を撮るには最適なサイズなのである。適度な重みすら手ブレ防止には必要なこと。特にライカM10モノクロームとノクティルックスM f1.2/50mm ASPH. はわたしにとってはこれ以上ないほどの組み合わせで、ライフワークである新橋芸者の撮影から仕事での撮影、普段の街歩きまで、気づけば常に手の中にある。
手もとの感覚だけで扱えるカメラというのは案外少ないものだ。それは操作感だったり、サイズであったり、さまざまな要因があるのだろうが、今年で70年を迎えたライカMシステムが誕生からほとんどその形を変えずに現在まで受け継がれてきたという事実には、やはり理由があるのだ。
スナップショットというのは偶然性が大きな比率を占めるものであり、シャッターを切るという行為は非常に身体的なものであるからこそ、どこへ行くにしても事前に「こうあるべし」というイメージを持つことはない。頭の中であらかじめ描いたところで、目の前に現れる光景はイメージとやらをあっさり超えてくる。
身構えず、場と打ち解け、心を開けばシャッターチャンスというのは自ずとやってくるものであって、私はそれらを反射的に撮っているだけにすぎない。その反射を実現するための道具が、M型ライカである。一度この操作感に慣れてしまうと、オートフォーカスの「間」すらもどかしく感じるもの。
M型ライカを使用していると、いかにこのシステムが「撮る」ことに純化されたものであることがよくわかる。ライカMシステムは最初に書いたように、「手もとで距離を合わせ、瞬間、ファインダーを覗いてシャッターを切るだけ」なのだ。このシンプルかつ唯一無二のシステムだからこそ撮れる写真があると、わたしは確信している。
簡潔なシステムと必要十分な機能。だからこそニュートラルな気持ちで「撮ること」だけに集中できる。そんなカメラがいつも傍にあるのは、なんて幸せなことだろう。
使用機材
ライカM10モノクローム・ライカM11-P・ライカ ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.
大門美奈 / Mina Daimon プロフィール
横浜出身、茅ヶ崎在住。作家活動のほかアパレルブランド等とのコラボレーションや、WS講師、雑誌・WEBなどへの寄稿を行っている。2011年開催の『Portugal』以来、個展・グループ展多数開催。代表作に『浜』『新ばし』、同じく写真集に『浜』(赤々舎)
など。海外や日常のスナップのほか、日本の伝統美や陰影の表現を得意とする。
WEB : https://www.minadaimon.com/
Instagram : https://www.instagram.com/minadaimon/