ライカSL3

Impression Report by Masato Kanou


©Masato Kanou



ライカSL3の発売から約5ヶ月。周囲の様々なレビューや使用感を目にすることはあっても経験上、実際に触れて試してみない事にはわからないなと思っていたところ、インプレッションのお話をいただきました。
さて何を撮り、どんなレビューを書こうかと考えた時、カメラのカタログスペックを検証するだけでは自分が読む側でもつまらないと思い、個人的にもっとも気になっていたAF機能がどこまで進化し現場でどれほど実力を発揮してくれるのかに絞って検証してみる事にしました。

僕は普段、名古屋を拠点に活動していて動きものの撮影が得意な事から、被写体には愛知県が推進する武将観光のPR活動をしている「徳川家康と服部半蔵忍者隊」に協力をお願いしました。激しいアクションにどこまでライカSL3が応えてくれるのか、ややニッチな記事になるかとは思いましたがこの一点にフォーカスすることにしました。
ライフワークにしている旅写真ではM型もSLシステムも使用しますが、M型には身体行為として撮影体験そのものを楽しみ自分の心情に寄り添うカメラという要素が強いのですが、SLシステムに求めるものは機能面、つまり様々な仕事に対応できるかという現実的な要素の方が強いです。
ライカSL2、ライカSL2-Sを使用してきて個人的には何の不満もなく、M型ではできない仕事もSLシステム がある事で仕事の大半をライカカメラでカバーできる環境に満足していました。ただ1点だけ不満をあげるとしたら、動きものの撮影仕事で求められる確実性や歩留まりの点が弱く、ライカレンズの素晴らしい描写をあきらめて他メーカーのカメラを使用することがあります。




©Masato Kanou

©Masato Kanou



そこで、同様に感じているプロユーザーの方もいるのではないかと言う思いから、ライカが不得意と目されるこの点に着目して実際に現場で激しいアクションに対応できるのかチャレンジすることにしました。
大前提として、AF追従連写速度がライカSL2からやや落ちていることを見てもかなり厳しい検証になる事は分かっていましたが、トラッキング機能さえ向上していれば、被写体に集中してシャッターチャンスを逃さないプロユーザーならこういったジャンルでもいけるのではないかという挑戦である事をご理解いただければと思います。

使用機材:
ライカSL3」「ライカ スーパー・アポ・ズミクロンSL f2/21㎜ ASPH.



本題に入る前に、基本性能として個人的に良くなったと思う点をあげると、まず画質が向上している事は数枚撮ってすぐに実感しました。ヌケが良いと言うか前機種よりもクリア感があり、発色も良くセンサー性能の進化を感じました。やはり6000万画素の解像度は凄まじく密度が濃いと言うか、対象物をより立体的に感じられる印象を受けました。
もっと長年のライカユーザーからすると、クッキリ、パキッとした画に対しての評価は分かれるかもしれませんが、先に述べた通り、SLシステムに利便性や最新スペックを求める層にはライカSL2から大幅に使いやすくなっていることは間違いありません。プロユーザーでなくとも分かりやすいインターフェイスがもたらす操作性は助かるところだと思います。細かい点では、シャッターフィーリングがライカSL2より音も感触もしっかりと感じられ、心地よさがありました。このフィーリングは撮影者にとって案外大事な要素で、更に写真を撮りたくなる効果もあるのではないでしょうか。

今回、屋内外に分けてそれぞれ検証しましたが、経験上こういったパフォーマンスやスポーツなどに共通するのは、ある程度本気でアクションしてもらわないとカタチが決まらない、格好良くならないため、そこを求めると当然スピードも早くなりカメラの機能にアシストしてもらう要素が高まります。その中でもAF 追従性能がもっとも重要で、そこを信頼できる事が被写体の動きに集中できる事につながり、撮影時のストレス軽減や進行にも大きく影響してきます。



屋外では都市と忍者というテーマで撮影


©Masato Kanou


©Masato Kanou



1灯の日中シンクロで被写体は浮かび上がらせるけど背景は極端に落とす特有の不自然さではなく、自然光に近く見える事を意識しました。
ここではインテリジェントAFにAFモードはトラッキング、AFプロファイルはランナーを選択しました。ヨリヒキと撮り分けましたが、ヒキ画の際にはほぼ問題なく追従できており安心して撮影に集中できました。今回すべての撮影でスーパー・アポ・ズミクロンSL f2/21㎜ ASPH. を使用していますが、都市の直線や曲線などに対して四隅までキッチリ解像してくれるのが気持ち良く、このレンズのポテンシャルの高さを感じました(購入して良かった~!)




©Masato Kanou

©Masato Kanou



一方、カメラに向かってくる動きの場合、被写体をダイナミックかつ躍動感が感じられるよう捉えるべく被写体を近くから広角レンズで捉えると、必然的に体感速度も速くなりカメラの持つ能力への依存度はあがります。結論としては、この部分はまだ改善の余地があるかなという印象でした。ライカSL2と比べると頑張って食いつこうという感じがあり歩留まりは良くなったものの、被写体を追えなくなり外す事も時折ありました。ただ、一般的な動きのものに関しては以前からは確実に向上しており、今回の様な被写体でなければ問題なく使用できました。また躍動感を出すためにローアングルで撮ることが多く普段は寝そべって覗き込んでいたのが、チルト式モニターに変更された事で撮影スタイルが楽になりましたね。




©Masato Kanou

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屋内では忍者アクションにフェンシングの動きを絡める


©Masato Kanou



屋内では忍者のアクションにフェンシングの動きを絡める事で、面白い画ができるのではないかと考えました。被写体の人数も増える事で、タイミングなどより難易度の高い撮影に臨みました。
ここでは5~6灯の多灯ライティングを基本とし、ストロボは動きをしっかりと止めるべく閃光速度の速いブロンカラーを使用しています。設定は屋外とほぼ同じですが被写体が増えた事に対応するため、AFプロファイルをチームスポーツに変更しました。動きとしては横移動が多く、カメラに対する被写体の動きが比較的平面的だった事もありますが、複数人いる中でほとんど迷う事なく追従してくれたと思います。




©Masato Kanou




スローシンクロで1~2秒かけた撮影時も動きの軌跡が残る様に弱めの定常光を当てており、フィニッシュの瞬間だけストロボで止めています。環境光を拾わない様に室内灯とモデリングも落としているので現場は暗く、AF追従の条件は厳しい状況でしたが、僅かな定常光に照らされた被写体を逃す事なく追ってくれたのは撮影者として安心感があり、ライカSL2より撮影の幅が広がった事を実感しました。




©Masato Kanou



©Masato Kanou



今回、ライカSL3に対してあえてかなり意地悪な検証を行いました。プロユーザーとしてSLシステム のラインに求める仕事上必要な要素であり個人的にも1番興味のある所でしたので、少々 特殊な現場となりましたが、結果としてライカSL2と比較すると、画質、基本性能、使いやすさなどカメラとしての進化は確実に感じられました。通常使いで感じた圧倒的な解像感が、人物はもちろん風景、スナップなど様々な被写体にリアリティをもたらしてくれます。ライカSL3はカメラマンをアシストしてくれる頼れる相棒として、またひとつ段階があがり信頼できるカメラになったと思います。




©Masato Kanou





Photo by Masato Kanou


加納将人 / Masato Kanou プロフィール


フォトグラファー。1978年生まれ、山口県出身。
写真館やコマ―シャルフォトスタジオで写真を学び、30歳で独立。現在はフリーランスで、広告や雑誌の分野で活躍するほか、スポーツや旅をテーマにした作品も多数撮影している。

公式サイト http://kanoumasato.com
Instagram https://www.instagram.com/toramaru_life





フルサイズミラーレスシステムカメラ「ライカSL」の最新機種

「ライカSL3」は、撮像素子にトリプルレゾリューション技術を搭載した6000万画素35mmフルサイズ裏面照射型CMOSイメージセンサーを搭載し、幅広い用途に対応可能なカメラです。オートフォーカス機能には、3つの検出方式を組み合わせた革新的なAFシステムを搭載し、より高速で正確なフォーカシングが可能です。さらにコンパクトなボディにボディ内手ブレ補正機構やIP54相当の防塵防滴性能、8K動画を搭載しました。


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