Leica
 x ジェットダイスケ



人類規模の災禍が続き「もしも別の選択をしていたら」と思うことが増えた。良かった頃を懐かしみ、未来の姿へと重ねる行為だ。作者は数年前、長年暮らした東京を離れ琵琶湖の畔へ移住した。もし移住せずにいれば東京でまったく別の生活が続行中だったことは想像に難くない。本作ではそういった異なる世界線での将来を、カメラのファインダーを通して垣間見ることに挑戦。撮影した瞬間から過去のものになってしまうという写真の性質を活かし、未来を追憶するための装置としてライカを使用した。時代設定は今から10年後の2033年、ロケーションはかつて作者が住んでいた武蔵野の地。その近隣に居を構える写真家 赤城耕一が10年後の作者の姿を、山中夏歩が「記憶」をそれぞれ演じた。 

― 写真展「追憶のエピゴーネン」より ー  

ジェットダイスケ


現在、ライカ大丸心斎橋店にて写真展「追憶のエピゴーネン」を開催中のジェットダイスケ氏に、写真展について、また撮影やカメラについてお伺いしました。

Interview & text: yoneyamaX



――写真を撮るようになったきっかけはなんでしょうか?

「まずは小学校の5~6年生でしたか、プラモデルのガンプラを撮りたくてコンパクトカメラで撮影していたのですが、あまりしっかりと撮れませんでした。ほぼ同時期に、小学校の放送委員が持っていたビデオカメラにも興味が出始めていたので、中学校ではビデオクラブに所属し面白くなって自分でカメラを回し編集も始めました。その頃、叔父からフィルムの一眼レフカメラをもらったんです。子供のころから特撮が好きだったので、ビデオでは出来なかった多重露光や長時間露光などを楽しんでいました。マスクを切ってプラモデルと街を合成させた作品なども撮っていました。ただし基本的にフィルムカメラは現像処理など色々と大変だったので、デジタルカメラが出るまでは真剣には使ってはいなかったですね。

デジタルカメラが出始めて、Photoshopがあればどんな画像でも好きなように加工、修正できてしまうので、それなら自分で真実を撮ろうということでデジタルカメラを買いました。その頃はデザイナーの仕事をしていましたので、撮影したデジタル画像をデザインに取り込むこともしていました。」

――お好きな被写体はどのようなものなのでしょうか?

「普段はYouTubeでの機材レビューの作例写真が多いので、それらの作例とは違い、ある考えのもとに写真にまとめたいという所から撮影が始まります。まあ家族写真も良いですし、なんとなく街を撮っていた写真も見直してみるとそこから歴史が感じられて良いと感じることもあります。」

――お好きな写真家はいらっしゃいますか?

「大学時代には、図書室や本屋さんで数多くのヘルムート・ニュートンの写真集を穴が開くほどじっくりと眺めていました。大好きな写真家です。特に彼の影響は受けていないと思っていましたが、今回の写真展の作品を見返してみると、もしかしたら潜在的に影響を受けているのかも知れませんね。」

――写真の面白さとはなんでしょうか?

「映像をずっとやってきているので、それらと比べるとスチール写真は時間軸が存在していないという点が面白いですね。写真は一目見てあきてしまうこともありますが、好きなだけ眺める事もできます。そこはすごく素晴らしい点です。 それからやはり長時間露光の撮影が楽しいです。長時間バルブでシャッターを開けておく事によってそれだけの光を貯め込む事ができる。例えば夜の踏切の光の中で電車の動く様子などを一コマに収める。素晴らしいイメージが生まれます。 」

©JETDAISUKE

――写真を通してやってみたい事はありますか?

「例えば、トーマス・ルフ氏のJPEGシリーズなどでしょうか?横尾忠則さんは1990年代のインターネットが広がり始めた頃にネットで見つけてきた画像をコラージュされていました。自分は360度カメラを使っているのですが、後でいかようにでもトリミングが出来るんです。それはどのようにも再撮影ができるという事です。今はこの方法が好きで良くやっています。最近はどこにでも監視カメラがあるのにあえて撮影する事が必要なのかと疑問に思う事もあります。特に風景写真は撮影スポットがほぼ決まってしまうので、プロもアマチュアもないですよね。あとはタイミングの違いだけだと思います。」

――お好きな撮影テクニックやレンズについてお伺いしたいのですが?

「カメラを自分の頭の上に置いて体を回転させて撮影する流し撮り方法で撮影していたら、それを見た西田航さんが褒めてくれました。この方法だと、軸がブレずに良い流し撮りの写真が撮れるのです。

レンズの焦点距離については、演出意図によって画角や絞りが決まってくるので、特に好き嫌いはないのですが、50mmのレンズは数多く持っています。でもやはりクロップやズームで画角を変えたい事も多いですよね。」

――撮影時に意識する事はありますか?

「逆に撮影時には意識しない様にしています。最近、ノールックでの撮影が多くなりました。道を歩いていて気になったらササっと撮ると言うスタンスです。後で見ると無意識で撮ったものや偶発的に撮ったものでも良い作品があるんですよ。もちろん、今回の写真展のようにコンセプトがあれば構えて撮る場合もあります。とは言ってもこの作品も基本はスナップ撮影なんですけどね。」

©JETDAISUKE

――写真展のコンセプトについてお伺いします。

「タイトルにあるエピゴーネンとは「模倣者」という意味なのですが、まずは作品ができ上ってその後、昔から頭の中にあったものがコンセプトに合致してタイトルにしたという感じです。モデルに赤城耕一先生を選んだ理由は、私が長年住んでいて今回の撮影場所に選んだ石神井公園の近くに彼も住んでいたということと、なんとなく自分の将来像に重なったことがありました。彼には10年後の私を演じてもらったのですが、ツイッターを見ていたら「写真を見てジェットダイスケだと思った」という人もいましたので、成功したなーと思いました。

©JETDAISUKE

モデルの山中夏歩さんには記憶というあいまいなイメージを演じてもらいました。ちなみに彼女は撮影中、ずっと裸足でした。雨の中の撮影だったので結果的にびしょ濡れになり、記憶という雰囲気にぴったりと合った作品になりました。」

©JETDAISUKE

――写真展の作品にカラーショットが2点ありますが、これはどういう意味がありますか?

「この2枚のカラー写真は現世という意味です。この中の1枚には実際の自分が写っています。これらを入れた理由は現世の写真があった方が、テーマとしてわかりやすくなると思ったからです。」

©JETDAISUKE

――写真展でここを見ていただいきたいという所はありますか?

「雨によるピントのアバウトさやブレなどを含めた偶発性な部分を見ていただきたいです。私は、最新の素晴らしい画質を求める写真ではなくオールドレンズを使ったりするのが好きなので、完璧な解像度やピントというよりもスナップ撮影という部分を見て楽しんでいただきたいです。」

©JETDAISUKE

――最初のライカとの出会いはどのようなかたちだったのでしょうか?

「住んでいる場所からも便利だったし、話題のストアだったライカ京都店にある日ふらっと入ったのですが、そこで初めてライカを触らせてもらったら、その後3日間ぐらい手に残った感触が気になって仕方ありませんでした。それから1年程時が経ってまたライカが気になりはじめたので、息子が大学を卒業したのを理由に、機材レビューもできると考え、ライカ京都店に行ってライカM10-Pを買いました。 子供の頃、父の書斎にライカM3シルバーがレザーケースのままぶら下がっていたので、ライカは知っていたのですが、イメージでは剥げた古いボディのカメラで、高齢の人が持っているカメラだなという感覚でした。だからライカ京都店でライカSLを見せられたときにはこんな凄いデジタルカメラがあるんだなとびっくりしました。」


――現在お使いのライカを教えて下さい。

「ライカSL2、ライカQ2、ライカM11、です。 使い分けとしては、ライカSL2はノクティルックスや他のMレンズを使いたくて買いました。Mレンズだけではなく各種のレンズを付けて使っています。ライカQ2では自分の写真展示の記録写真などをメインに撮っています。ライカM11はめっぽう普段使いをしています。今日もそうですが、いつでもすぐに撮影ができるように、ビリンガムの小さなバックに入れて常に持ち運んでいます。」


――ライカの魅力とはどのようなものでしょうか?

「まずはライカM型をいまだに本気で製造しているということが素晴らしいと思います。やはりマニュアルフォーカスやレンジファインダーが素晴らしいですね。不便とは思いません。逆に早く撮れますよ。ピンボケがコントロールできるマニュアルフォーカスは、魅力のひとつです。そしてライカM11はUSB充電ができるようになりましたし、バッテリー交換が簡単にできるようになりましたよね。また、モノとしての魅力は信頼性のある作りですね。戦前のライカ製品がいまだに使われていますよね。それが証拠で、ライカは安心して使えます。」

――ライカの画像とはどのようなものなのでしょうか?

「何よりライカに搭載されている画像処理エンジン「LEICA MAESTRO」や独自のセンサーからライカの画像が出てくるのが魅力だと思います。表現は難しいのですが、こってりとしていて、彩度が低く、シャープでもあり、まろやかでもありますね。一言では言えませんが、ライカの画像は素晴らしいと思います。」


――ライカに関してのエピソードは何かありますか?

「最近、どのライカを買えばいいのかという相談が多いですね。」

――良いPRマンになって下さい(笑)

「ライカを使っていると、それをきっかけにお声がけいただく事もあり、それは嬉しい事ですね。以前、ライカM10-Pを買ったときには、妻はシャッター音が気に入ったようで、それ以来今日はライカなの?と気にしてくれるようになりました。ある意味ライカの価値が我が家で認められたのでしょう。」

――今後のご予定などはありますか?

「例えば大学の先生をやってNET動画のセルフプロデユースなどを教えられたらと思っています。また自分は現在48歳なので勉強するなら今のうちだと思いますので、学生として写真を学びたいとも思っています。」

――本日は、ありがとうございました。


記事中に出てきた関連商品: ライカSL2 ライカQ2 ライカM11



写真展概要

作家:ジェットダイスケ
タイトル: 追憶のエピゴーネン
会期:2022年11月23日(祝・水)-2023年 3月23日(木)
会場:ライカ大丸心斎橋店
   大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-7-1 大丸心斎橋店本館6階  Tel.06-4256-1661
展示:自身の未来を追憶する形で表現した作品12点




ジェットダイスケ/JETDAISUKE プロフィール

日本最初の動画レビュアー、現在おもにカメラ製品の批評等を配信。90年代中頃より映像作家として活動しつつネット動画の可能性を模索。ビデオブログ用に考案した「ジェットカット」という編集法はネット動画における一般技法として定着、今日では他の映像分野でも用いられる。2014年より写真家としても活動を開始、代表作に「空蝉」シリーズ。雑誌にてライカにまつわるコラム連載も。