Mレンズの実力
LEICA APO-SUMMICRON M f2.0/50mm ASPH.
From Leica Style Magazine Vol. 20
単に解像感が高いだけではなく、質感を伝えるような絶妙な解像感はこのレンズならでは。
ここでは深度が必要なのでF8まで絞ったが、絞り開放から描写は完璧に揺るぎない。
ライカM(Typ 240)・f8.0・1/500秒・ISO 320・WBオート・RAW
LEICA APO-SUMMICRON M f2.0/50mm ASPH.
シャープさとボケ味を存分に堪能
フォトグラファー 河田一規
ズミクロン50mmといえば1953年に登場以降、ドキュメントからポートレートまであらゆる分野で数々の名作を撮影してきた銘レンズとして知られているが、今回試用したのはそのズミクロン50mmの進化型であるアポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.である。
このレンズはいろいろな意味でスペシャルな存在だ。f2.0という開放値でありながら、より大口径なズミルックスM f1.4/50mm ASPH.より高価であることからも分かるとおり、光学設計は凝りに凝った超贅沢なもので、アポクロマートレンズや非球面レンズ、そしてフローティング機構が盛り込まれている。
同様の設計手法はアポ・ズミクロンM f2.0/75mm ASPH.などにも採用されているが、そういった本来は中望遠レンズや大口径広角レンズなどに使われる設計手法を「50mmF2」という中庸なスペックのレンズに投入してしまうところが普通ではない。同じ50mmなのにf1.4より高いf2.0レンズなんて、ライカ以外では商品化されるのはひどく難しいはずである。
しかし、妥協のない光学系を採用した効果はてきめんで、その描写は超シャープでどこまでも際限なく解像していくような写り方をする。しかも絞り値に関係なく開放から極上のシャープさが堪能できるのだから堪らない。
このレンズが秀逸なところは、これだけシャープネスが高いにもかかわらずアウトフォーカス描写、いわゆるボケ味もいいことだ。一般的に設計を解像方向へ振ったレンズはボケ味が硬くなってしまいがちなのだけれど、このレンズは合焦した部分はあくまでもシャープでありながら、アウトフォーカス描写はきわめて自然という、相反する要素を両立させてしまったところが素晴らしい。
ライカM(Typ 240)・f2.0・1/2000秒・ISO 200・WB晴天・RAW
もうひとつ個人的に最高に素晴らしいと思っているのは、これだけの光学性能を実現していながら、レンズそのものは極めて小型であること(フィルターサイズはE39だ!)。ライカ以外のカメラメーカーでも、最近では高画素化に対応するためレンズの高性能化が進んでいるが、そうしたレンズは確かに高解像ではあるものの、サイズも驚くほど大きく重くなっており、35mm判用なのに中判カメラ用かと思うほど巨大なレンズも多い。
そんな中にあって、最高の光学性能を実現していながらも「いつものズミクロン」サイズに収まっているのはある意味奇跡的でもある。今さら言うまでもなく、カメラにとって機動性はとても重要な性能であり、ライカはそのあたりのことを本当によく分かっているなぁと思う。
新基準を打ち立てる卓越した描写力
5群8枚というシンプルなレンズ構成ながら、アポクロマートレンズや非球面レンズを投入。構成枚数を抑えつつも諸収差をほぼ完璧に補正している。ライカ社では「新しい基準レンズ」と呼んでおり、そのことからもこのレンズの立ち位置が理解できるだろう。
絞り開放からグラフ曲線は上限に張り付いており、これを見ただけでも性能の高さは明らか。絞り値による曲線変化の少なさも特筆ものである。
ライカ アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.
ブラック
ライカ アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.
シルバー
TECHNICAL DATA ライカ アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.
画角
画角(対角線、水平、垂直) | 35mm判(24×36mm) 47°、40°、27° |
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光学系
レンズ構成 | 5群8枚 |
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非球面レンズ | 1枚 |
入射瞳位置(第1面からの距離) | 24.4mm |
撮影設定
撮影距離 | 0.7 〜 ∞ |
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目盛り | メートル及びフィート表示 |
最短撮影範囲/最大撮影倍率 | 約271mm×407mm / 1:11.3 |
絞り
設定方式 | クリックストップにより設定 (1/2 ステップ) |
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最小絞り | F16 |
絞り枚数 | 11枚 |
その他
レンズマウント | すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、 デジタルMカメラ識別6ビット・コード付き |
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フィルターマウント | レンズフード内に取付け |
レンズフード | ねじ込み式のレンズフードを付属 |
本体仕上げ | ブラック |
寸法・質量
先端からバヨネットフランジまでの長さ | 約 47mm |
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最大径 | 約 53mm |
重量 | 約 300g |
フォトグラファー 河田 一規 (かわだ かずのり)
1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。