My Leica Story
ー 放送作家 小山薫堂 ー 
Part 1


小山薫堂さんは、日本のテレビ界を代表する放送作家であり、脚本家、ラジオパーソナリティー、会社経営者、大学の副学長としても活躍中。写真家としての顔も持ち、ライカギャラリー東京で写真展『restaurant』を2020年11月3日まで開催している。
そんな小山さんに、ライカプロフェッショナルストア東京にてインタビューさせていただいた。

text:ガンダーラ井上

My Leica Story ー放送作家 小山薫堂 ー Part 2  はこちら 



くまモンのライカC-LUXと初対面


――写真展の開催おめでとうございます。この展覧会に合わせたタイミングで、また、”くまモン”が2020年にデビュー10周年を迎えたことを記念して、限定モデルの可愛らしいライカが登場するそうです。 “くまモン”をプロデュースした、いわば生みの親の小山さんの目から見て、この“くまモンのライカC-LUX”はどんな印象ですか?


   

「いろんな表情のくまモンがモノグラムになっていて、今までにないパターンだなと思いました。くまモンのファンにはたまらないんじゃないかと思います」


――くまモンのライカといえば、2015年に発売された“くまモンのライカC”では顔が一つでしたものね。思い返せば2014年に、くまモンが竣工したばかりのライカの新社屋が建っているドイツ・ウェッツラーのライツパークを訪れ、当時のライカカメラ社のCEOにくまモンをあしらった特別モデルの制作を依頼したのがキッカケしたよね。くまモンの愛くるしさに魅力を感じたCEOが快諾し、製品化が実現したということでした。



  

その際に発表された「くまモンのライカM」は、小山薫堂氏の元で愛用されている


「あの時、くまモンがライツパークに行かせてもらったこと自体が悔しかったです。僕の方が行きたい気持ちは強かったのに、何でお前が先に行くんだよって(笑)。くまモンが訪問して数年後に、念願かなってライツパークに行けた時は本当に嬉しかったですね」

 

2014年に訪れたドイツにあるライカカメラの本社・ライツパークでポーズをとるくまモン

 

――小山さんは生みの親ですけど保護者として同行されず、くまモンの単独行動だったのですね! くまモンがライカカメラ社の本社を訪れたとき、ドイツ人は基本的に熊が大好きなので抵抗感なくすんなり受け入れられたと聞きました。くまモンはドイツに限らず中国やタイでブームになるなど、世界的に人気がありますね。


くまモンのデビュー10周年を記念して登場した「くまモンのライカC-LUX]


「そうですね。今すごく中国で人気なので、この限定モデルのライカC-LUXは中国で売っていたらプレミアがつきそうですね。くまモンも誕生してから10年。順調に成長してきまして、これからの10年、ますますビッグになって確実に“世界のくまモン”になっていくと思います」


写真展『restaurant』に込めた思い


――さて、今回、ライカギャラリー東京で開催中の写真展のタイトルは『restaurant』です。コロナ禍による飲食業の方々の受けたダメージには相当なものがあると思いますが、応援の意味も込めてでしょうか?


「この秋、J-waveで『9 Chefs (ナイン シェフズ)』というラジオの9時間の特番をやりました。生放送で1時間ずつ入れ代わりで9人のシェフがパーソナリティーを務める番組で、シェフへの応援という意味を込めています。今回の写真展も何か料理界にエールを贈りたい思いがあって『restaurant』としましたし、レストランはそもそも「回復する」というのが語源の一つになっているので、コロナ禍が早くおさまる様にという願いも込めてこのタイトルにしました。ここ1、2年くらいに撮った写真で、撮り溜めたというより常にカメラを持ち歩いているので、気づけばレストランの写真が多くなるんです」


――展示された作品を見て、それぞれの写真に小山さんと被写体の人物との“関係性の証し”のようなものが強く浮き出してくる印象があり、とても素敵だと思いました。展示で最初に目に飛び込んでくるアントワープのレストランで撮られた窓越しの写真。これはどんなシチュエーションだったのですか?


Bij Lam & Yin (アントワープ)© Kundo Koyama 


「この写真は、僕の隣のテーブルで食べていたカップルなんです。カップルなのか夫婦なのかわからないですけど。それで、食事中におじさんと目がチラチラあっていて、僕が先に食事を終えて帰るときに表に出て歩いていたら、また目があったんです。食事中も何となく口説いてる感じがあったんですよね。それで『俺、うまくやったぜ』と言う感じの顔をしたんですね。で、ドヤ顔なんです。そこで窓越しに撮りました」


――なるほど! いきなり通りすがりで窓越しに食事している人を撮っても、あんなにいい表情を相手がしてくることはありえないですよね。やはり同じ時間に同じシェフが作った料理を食べたという縁があってこそ撮れたんですね。いい顔といえば、ヴェネチアのレストランの格好いいメガネの人。この表情は、初対面で撮れないと直感しました。


  Ristorante Da Ivo (ヴェネツィア)© Kundo Koyama


撮影者と被写体との“関係性の証し”を写す


「あそこはリストランテIVOという店で、IVOさんというオーナーがいたんですよ。写真の彼はジョバンニって言うんですけど、ずーっと下っ端だったんです。彼のことはその頃から知っていて、今はIVOさんが亡くなってジョバンニが店主になったんです。それでヴェネチアに行くたび、『どうだ、きょうはこんな感じだぜ』って」


――やっぱり長年の付き合いなんですね! この写真は『歴史のあるレストランの貴重な記録である』とか、『フルサイズの優秀なレンズで背景が綺麗にボケてモチーフの人物が浮き立つ表現だ』と評することも可能ですが、そんな言葉では説明できない“素敵な関係”が写しとられていてシビれますね。祇園の大渡でのショットも秀逸だと思います。一見で訪れた関係ではない感じで、お店の人と昵懇(じっこん)の仲なのかなと。


「ここ何年か、毎年その1年の最後の料理は大渡って決まっているんですよ。12月31日の夜は大渡を貸し切って、仲の良い数名でカウンターで食べるんです。そのときに撮った写真ですね」



祇園 大渡 (京都)© Kundo Koyama 


――スナップショットの名作ってシリアスな雰囲気のものが多い気がしますが、この写真はその対極ですよね。大晦日に気心の知れた料理人のいる店で親しい人たちと1年を締めくくる食事をする。暖かくて、いい匂いもしてくる気がする写真です。今回の作品はM型ライカで撮られたそうですが、こういう場でゴツゴツした一眼レフを構えたら、その場の雰囲気が変わってしまう気もします。


「そうですよね。見た目の威圧感はライカM型のほうが少ないです。かといって後ろに液晶モニターがついているだけのカメラを取り出したら、何か記録性が強くなるのかなと思いますし、スマホであればまた意味が変わってきますよね」


――確かに同じモチーフに向かっていたとしても、どのようなスタイルのカメラを使うかで写真の持つ意味合いが変わってきますよね。だからこそ、カメラ選びが重要になってくると今回の写真展を拝見して強く感じました。小山さんとカメラの関係や、ライカで撮る理由をもう少し詳しくお聞きしたいのですが、まだ大丈夫でしょうか?


「このあと事務所に戻ってZOOM会議があるのですけど、まだ話せます。続けましょう」


My Leica Story 小山薫堂さん (その2)に続く

Photo By Y, Leica Online Store


小山薫堂写真展 「restaurant」

期間:2020年7月23日(木) - 11月3日(火)

会場:ライカギャラリー東京 (ライカ銀座店2F)

東京都中央区銀座6-4-1 Tel. 03-6215-7070


小山薫堂 プロフィール 

放送作家。脚本家。京都芸術大学副学長。1964 年熊本県天草市生まれ。テレビ番組「料理の鉄人」の構成を手掛け、食の雑誌「dancyu」で連載を始めたことがきっかけで、食関連のプロジェクトに関わるようになる。次世代の若手料理人を発掘するコンペティション「RED-U35」の総合プロデューサーを務め、2025 年の日本国際博覧会では食のフォーカスエリアプロデューサーに就任。京都の老舗料亭「下鴨茶寮」の主人でもある。 これまでの主な作品は、「おくりびと」(脚本)、「Stand Alone」(作詞)、「くまモン」(プロデュース)など。




くまモンのデビュー10周年を記念した国内限定コンパクトデジタルカメラ

くまモンのデビューから10周年を記念して制作された特別限定モデルの「くまモンのライカC-LUX」は、スタイリッシュなデザインと優れた機能性で人気のコンパクトデジタルカメラ「ライカC-LUX」のライトゴールドボディに、くまモンの表情があしらわれた黒いレザーが映える、シックで愛らしさのあるモデルです。

様々な表情のくまモンの顔がちりばめられており、くまモンの可愛さと相まって品のあるデザインに仕上がっています。また、本限定モデルには、くまモンが以前、ライツパークを訪問した際の写真に、くまモンの直筆を入れたカードも同梱されています。

「くまモンのライカC-LUX」は、10月3日(土)より、ライカストア、ライカオンラインストアおよび熊本・鶴屋百貨店カメラコーナーにて、日本国内限定40台を発売いたします。

 

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