【ライカギャラリー東京・京都】 大石芳野 写真展「さとうきび畑からの風」「それでも笑みを」開催

ライカギャラリー東京およびライカギャラリー京都では、戦禍や内乱など困難な状況下にありながらも逞しく誇りを持って生きる人びとの姿を撮り続けるドキュメンタリーフォトグラファー、大石芳野の写真展を同時開催いたします。

ライカギャラリー東京では、戦争で大きな被害を受けた沖縄の地で逞しく生きる人びとに焦点を当てた作品14点を、ライカギャラリー京都では、戦争や内乱など厳しい環境下で心に痛みを抱えながらも、強く生き抜く人びとの「笑み」を40年間にわたり撮り続けた作品の中から厳選した15点を展示いたします。

 

写真展 概要

■    ライカギャラリー東京 (ライカ銀座店2F) 
タイトル     さとうきび畑からの風
住所          東京都中央区銀座6-4-1  Tel. 03-6215-7070
期間          2021年2月10日(水) -  5月30日(日)


緩やかな尾根に沿った大地にさとうきび畑が広がる。キビの葉を揺らしながら吹く風と一緒に飛んできたトンボが2匹、3匹…舞う。木立を思わせるほど背の高いキビ畑の真ん中を細い農道が続く。キビの長い葉と葉を擦り合わせる音はまるで合奏しているようだ。 

青空からの太陽光が額にたっぷりと汗を滲ませて、ライカを覗く目に染みてくる。瞬きをしてふと気が付くと、向こうに白髪の女性が佇んでいた。近づいて声をかける。話が弾んでキビ畑の想い出になり、やがて、白髪を手でかきあげながら硬い表情で「戦時中は木々に身を伏せたり…、キビ畑にはよく潜り込んで身を隠しました」と語った。 

戦時中の苦難話に女性の吐く息は荒くなった。キビ畑からの風が芭蕉布の着物の裾を揺らした。「今から祭りのリハーサル」と、沖縄ならではの涼し気な芭蕉布に草履の姿で彼女は公民館へとゆっくりと歩いた。祭りにサンシン(三味線)も欠かせない。路地を歩くと爪弾く音色があちらこちらから響く。子どもも親しむ日常的な楽器のひとつだ。ある日、すれ違った少女たちが「今からサンシン教室へ行くのよ」と笑顔と明るい声を残して路地の角を曲がった。 

大石芳野





■    ライカギャラリー京都 (ライカ京都店2F)
タイトル     それでも笑みを
住所          京都市東山区祇園町南側570-120  Tel. 075-532-0320   
期間          2021年2月13日(土) -  5月30日(日) 


心からの笑顔というのは本当に魅力的で、吸い込まれそうにさえなる。いつもそのような笑みが湛えられたらどんなにか幸せだろう。けれど現実は厳しい。戦争、災害、事故などが後を絶たないから何処かに笑いを忘れてきてしまったような日々になりかねない。沈んだ瞳や涙ばかりが溢れ出てしまう子どもたちの心の奥に分け入ることもできずに、ただ肩を抱きながらこちらも涙ぐんでしまう。それでも、かれらの気持ちにほのかな灯りが差したような笑みが唇に浮かぶ瞬間がある。実際のところ、笑みにはまだ遠いかもしれないけれどお互いが願いと祈りを込めながら目と目を合わせる。

やがて穏やかな笑みが返ってくると、逆にこちらが慰められる。どんな苦境に遭っても、今、いのちはここにあるという確信を一人ひとりが身体の奥深くに感じている。それが伝わってくると同時にシャッターを押していることが多い。

人びとは喜怒哀楽を抱えながらも、それぞれの地で逞しく暮らす。そうした姿に私は励まされ、多くを教えられてきた。だからこそライカを手にして、さまざまな国々や地域へと赴く。人びとに逢えるのは私の大きな喜びでもあるし、同時に生き甲斐にもなっている。

大石芳野



大石芳野 プロフィール

写真家。日本大学芸術学部写真学科卒業後、戦禍など困難な状況にあっても逞しく生きる人々、土着の文化や風土を大切に生きる人々が主なテーマ。
著作:「沖縄に活きる」「沖縄 若夏の記憶」「それでも笑みを」「HIROSHIMA半世紀の肖像」「カンボジア苦界転生」「ベトナム凜と」「夜と霧は今」「子ども戦世のなかで」「隠岐の国」「福島FUKUSHIMA 土と生きる」「戦争は終わっても終わらない」「戦禍の記憶」「長崎の痕」他
受賞:土門拳賞、紫綬褒章、JCJ 賞、他