Everyday Carry
日々のルーティーンにライカを
ー サトウヒトミ ー
サトウヒトミ氏の “Everyday Carry”
私が最初にライカを手にしたのは7年前にふと立ち寄った GINZASIX のライカストアでした。そこで「ライカ M10」を持たせて頂き、一枚シャッターを切ったのが運のつき(笑)これがライカか!という驚きが、モニター画像を見た時の衝撃でした。その時の感情のようなものが写っていたのと、長年持っていたかのように手に馴染む感覚が忘れられず、翌月にはもう「ライカ M10」を購入していました。
そんな出会いがあってから、すっかりライカの虜になった私が次に手にしたのは「ライカQ-P」でした。その頃「ライカM10」でじっくり撮るのと同時に、もう少し軽やかに、街歩きしながら素早くスナップを撮りたいという思いがあり、日々持ち歩くために「ライカQシリーズ」を購入。その最新機種として更にバージョンアップした「ライカQ3」に導かれながら、この夏は軽快に外に繰り出しました。
猛烈な暑さと日差しの強い夏の日でしたが、シャッターチャンスは常に突然やってくるため、日傘はバッグにしまい、カメラをすぐ起動出来るように肩掛けして歩きます。目の前で起こる一瞬の出来事を捉えるのに、ノーファインダーになることもしばしばですが、「ライカQ3」は大口径レンズ「ライカ ズミルックスf1.7/28mm ASPH.」を採用しているので、撮りたいものをしっかりと画面に入れることが出来て、近くに寄って入ってきた被写体も、遠くの思いがけない背景の動きも、予想外の面白い一枚となることがあります。狙わない、立ち止まらない、待たない、というのが、ストリートスナップでの私のスタイルです。
そんな私でも、「ライカQ3」の特徴である、チルト機能を使う時には、さすがに立ち止まって、狙う、という作業になり、これがまた私にとってはとても新鮮でした。この機能と動作に慣れるため、何度も上から下からと撮影したので、写真を撮る新たな楽しみを見つけたように思いました。
バッテリーの持続時間はたっぷりありますが、万が一のためにいつも電源はOFF にして歩いています。起動がとても速いので、撮りたい時に電源をONにしても撮り逃すことはありませんし、ピントもすっと素早く合うので、ファインダーを覗く余裕がない時でも被写体をしっかり捉えてくれます。
安心感は格別です。エレベーターの中にあった鏡らしきもの?に向かって自撮りにもトライしてみました。面白い!と思った時にさっと撮れる速さが、ライカQ3 の強みだと思います。
更に、忘れてはいけないのが、マクロモード。街歩きで疲れてちょっとひと息、という時のカフェの店内には、寄りで撮りたくなるものが溢れています。ここでは携帯のカメラではなく、しっかりとカメラで撮りたくなります。「ライカQ3」のチルト機構を使うと角度も自由自在なので、いつもはつい立ち上がって撮ったりしてしまうところでも、落ち着いてマクロモードでぐっと近くに寄って撮れるので、ここでも「ライカQ3 は大活躍です。ライカのレンズ「ズミルックス f1.7/28mm ASPH.」の絞り開放の美しさも存分に味わえる瞬間です。
なかなかトライする機会のない花火撮影に挑戦してみようと、「ライカQ3 と三脚を手にして『長岡まつり大花火大会』へ行ってみました。覚悟はしていたものの、驚くほどのたくさんの人と、猛烈な暑さの中、席取りをして待つこと2時間。夕方には優しい風と美しい夕日も見られ、花火にはもってこいの日となりました。
「ライカQ3 には花火モードがあるため、まずはここからスタート。だんだん慣れてきたところで感度を変えたり、シャッタースピードを変えたりと、色々試してみました。
かなり感度を上げても、画像が荒れることはなく、ここでも「ズミルックス f1.7/28mm ASPH.」の広角レンズは、夜空に大きく広がる花火を捉えるには十分な画角でした。クライマックスの連発花火は一番花開いたところを撮ろうと構えましたが、流れていく軌跡が美しいので、動きの出るシャッタースピードに設定しなおして、花火の余韻を写すことを楽しみました。
最後まで残りたい気持ちでうしろ髪ひかれながら帰りの電車に向かう途中、爆音がするたびに振り返り、振り返りして撮った夜道の人々と、家の間から見える大きな花火が夏の日の花火の記憶としては印象深いものになりました。
明るさの差が大きいのにもかかわらずしっかりと、明暗共に捉えられていたことで、ノスタルジックな夜道の花火写真を撮ることが出来ました。
次に、競走馬の産地として名高い、北海道の日高の牧場で撮影させて頂く機会に恵まれました。 血統あるがゆえの、厳しい宿命を背負った彼らの姿は、時に心が痛くなるような気持ちにもなりましたが、牧草を喰み、母子で共に居る姿は、穏やかで静かな時間を過ごす、競走馬でない馬たちと、なんら変わらぬ情景でもありました。
牧場の広大な土地には、整備されたスタイリッシュなトレーニング場や、厩舎、建物があり、これまでの牧場に対する私のイメージを遥かに超えた美しさがありました。ここはやはり名馬がたくさん生み出された場所なのだと改めて感じるとともに、素人ながらも、小馬の凛々しさを見て、近い未来に皆を驚かせる走りを見せてくれるのだろうなと、確信めいたものを感じました。
この旅での名馬の写真は、モノクロームで表現することで、馬や建物の美しさを際立たせたいと思いました。馬の毛並みや艶の黒の締まり、そしてハイライトも飛ぶことなく、しっとりとした曇り空も捉えることが出来ました。遠くにいる馬たちを90mm でデジタルクロップしても十分な解像度で撮れたことも驚きでしたが、クロップした後で、もう少し広がりが欲しいという時には、RAW モードから、28mm の広さに戻すことも出来たので、自由自在に編集することができました。
まだまだ使いきれていない機能はたくさんあると思いますが、この夏、色々な場面で思い通りの描写が出来たこと、そしてますます撮ることが面白く感じられたことで、これからもいつも手にして歩きたい「ライカQ3 との旅でした。
使用機材:ライカQ3
サトウヒトミ 写真展示 概要
タイトル:「bloodline」
◆期間:2023年11月10日(金) - 2024年3月7日(木)
ライカ阪急うめだ店
大阪府大阪市北区角田町8-7 阪急うめだ本店10階 『うめだスーク』 Tel.06-6313-9655
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◆期間:2023年11月13日(月) - 2024年3月7日(木)
ライカ大丸東京店
東京都千代田区丸の内1-9-1大丸東京店10階 Tel. 03-5220-3322
>>写真展詳細はこちら
写真家 サトウヒトミ Hitomi Sato
横浜生まれ、東京都在住。
お茶の水女子大学 舞踊教育学科卒業後、日本航空国際線客室乗務員として勤務。東京ビジュアルアーツで写真を学ぶ。
主な写真集に『イグアナと家族とひだまりと』(N Books・2016年)、『Layered NY』(Every Photo Books・2017年)、『crossing Prague』 (Every Photo Books・2018年)など。受賞歴に、2006年キヤノン写真新世紀佳作、2019年ZOOMS JAPANパブリック賞など。