LEICA M11 MONOCHROM
Impression Report by Leica Store Staff
イメージセンサーからカラーフィルターを排することで解像度の高さだけでなく、高感度特性も兼ね備えているのが歴代のライカMモノクロームシリーズの特長の1つだと思うのですが、最新のM11モノクロームは私が所有しているM10モノクロームと比較しても飛躍的に高感度特性が上がったと、カメラを使用するたびに感じていました。
そこで、今回は「ライカM11モノクローム」の特長のひとつである高感度特性についてご紹介したいと思います。
写真は前回「ライカ ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.」の記事を書いた時と同じ旅行中に撮影しました。
ライカM11モノクローム+ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.
F16・1/500秒・ISO50000・-1.3EV
夜間に高感度特性を活かした写真を撮ろうと思い宿泊していたホテルの近くを撮り歩いていたところ、トラムが交差する道路の側にある店に目が留まりました。
店の照明で照らされている線路を入れつつ絞り込んで光芒が出るようにして、さらに人物がピタッと止まっている写真が撮れたら面白いのでは?と思い、f16、シャッタースピード1/500秒、ISOオートに設定しカメラを構え通行人が来るのを待ち、左からやってきた人物が白い壁の前に来たところでシャッターを切りました。
撮影したデータを確認するとオートで設定したISOは50000でしたが、思惑通り軒先の照明から綺麗な光芒が出て、歩いている人物の足もブレることなくぴたりと止まっている写真が撮れました。
ISO50000ですからノイズなしとはいきませんが、線路の光が当たっている部分や、照明の光芒もきれいに描写されており、4Kのモニターで見ても拡大しなければ分からない程です。
ライカM11モノクローム+ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.
F11・1/90秒・ISO125000・-1.0EV
プラハ城に続く階段を登りきった場所から階段を見下ろすと、階段の途中で夜の街を撮影している人物がいたので、敢えて感度をISO125000に設定して撮影してみました。
こちらも当然それなりにノイズが出るのですが、以前ライカM6にISO400のモノクロフィルムを持って訪問した際に撮影した夜の写真と比べてみると、M11モノクロームで撮影したこちらの写真のほうがノイズも少なく、細部のディテールもしっかりと描写されていました。
また、マニアックではありますが、写真中央に写っている人物の左側にある壁のノイズの感じが、普段使っているISO400のモノクロフィルムで撮影した写真のノイズに近く感じられました。
そういったこともあり、個人的にフィルムで夜のスナップ撮影も楽しまれていた方であればISO125000までは許容範囲にできるのではと思っています。また、後述しますがJPGで撮影した画像であればRAWデータよりノイズも少なくて済みます。
ライカM11モノクローム+ノクティルックスM f0.95/50mm ASPH.
F2.8・1/4000秒・ISO5000・-1.0EV
地下鉄に乗って目的地に向かっている途中、トンネル内ですれ違う反対側の電車を撮影してみようと思い、シャッタースピードを1/4000秒に設定し、電車とすれ違うたびにシャッターを切りました。駅の構内と違い周りは真っ暗なので、その分写っている人物がよりクローズアップされる写真が撮れたと思います。
今回はf2.8で撮影したのでISOは5000までしか上がりませんでしたが、ライカ M11モノクロームの高感度の強さを考えれば、1/4000秒のままf8まで絞って撮影しても面白い写真が撮れたかもしれません。
また、地下鉄の車内や駅構内を撮る分には照明もあるのでISO感度をあまり気にする必要はないかもしれませんが、照度が低い場所でも手ブレを気にすることなく撮影ができる安心感は心強いものがあると感じました。
ライカM11モノクローム+ズミルックスM f1.4/24mm ASPH.
F5.6・1/160秒・ISO1250・-1.0EV
ライカM11モノクローム+アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.
F2.8・1/160秒・ISO1250・-0.7EV
ライカM11モノクローム+ズミルックスM f1.4/24mm ASPH.
F11・1/160秒・ISO64000・-2.0EV
最近はAIによるノイズ除去機能を使える編集アプリも増えてきました。被写体によっては非常に効果があるようで、活用されている方も増えてきているように感じます。
私は今までAIによるノイズ除去機能を使用したことがなかったのですが、「ただでさえ高感度でのノイズが少ないライカ M11モノクロームで撮影した画像からAIでノイズ除去をしたら、ISO200000で撮影した画像もより実用的になるのでは?」と考え、実験のつもりで今回撮影した高感度の写真数枚で試してみました。
結論から言うと、残念ながら普段私が撮る街中スナップの写真にAIを利用したノイズ除去を行うのは向いていないと感じました。
こちらのISO64000で撮影した写真にAIによるノイズ除去を行ってみたところ、中央左にある構造物に書かれた落書きの形が変わってしまった他、中央奥右手のバス停にある広告の文字が極端に不鮮明になってしまいました。
また、別の写真でも看板のMの文字がNになってしまったり、小さく写っている人物の表情自体が変わってしまったり等、本来写っていたものとは別のものになることに個人的に抵抗を感じました。
アップで人物を撮った写真や、風景を撮影した写真であれば有効なのかもしれませんが(それでも髪の毛や木、岩が本来のディテールでは無くなってしまうのではないかと思います)、もしノイズの少ない高感度で撮影した画像を現像したいのであれば、調整できる幅は狭くなりますが、露出や絞りをしっかりと決めてJPGで撮影した写真を編集するのが良いと思います。
ライカ M11モノクロームのJPGデータはノイズ除去が非常に優秀なようで、同じ場所をRAWとJPGで撮影した際、JPGの方がノイズの少ないきれいな画像が撮れます。
JPGは書き出しの際に画質が少し劣化してしまうのですが、6000万画素のモノクローム撮影専用センサーで撮影されたデータであれば1度書き出したくらいでは画像もへこたれません。
ライカM11モノクローム+アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.
F16・1/125秒・ISO80000・-2.0EV
ISO80000で撮影した写真を編集アプリで露出、コントラスト、ハイライト、白レベル、黒レベルを調整して仕上げました。ISO80000で撮影した写真も暗部を締めるように編集すればノイズ除去をする必要もないと思います。
ライカM11モノクローム+ズミルックスM f1.4/24mm ASPH.
F8・1/125秒・ISO12500・+1.3EV
ISO12500で撮影した写真はもはや感度について語る意味を感じないレベルです。
ライカM11モノクローム+ズミルックスM f1.4/24mm ASPH.
F8・1/160秒・ISO20000・-1.0EV
ヴルタヴァ川沿いには特徴的な円形の大きなガラスドアがあるバーやアートギャラリーがいくつかあるのですが、とても雰囲気が良く写真映えするスポットなので、店がオープンする夜間に訪れ、ISOオートでf8まで絞り込んで撮影しました。
RAW形式の画像だとISO20000辺りから拡大した際にノイズを感じますが、A4サイズでプリントする分には全く問題ありませんし、A3ノビで出力しても「フィルムで撮った写真かな?」というレベルです。
高感度でもノイズが少ないメリットは、主に暗所でも手振れを気にすることなく撮影できることや、三脚が不要になること等だと思いますが、個人的には、夜に被写界深度が深く、かつ人物等の動体が止まっている写真を撮れることこそが大きなメリットなのではないかと思います。
35mmフィルムのカメラが誕生する以前の、写真を撮ろうと思うと脚の着いた大きな木箱を持って撮影しなければならなかった頃を考えると、ライカ Ⅰはそれまで撮れなかった写真が撮れるようになるカメラだったのだと思いますが、優れた高感度特性を持ち、夜間に手持ちで絞り込んで高速シャッターを切ることができるライカM11モノクロームも、やや大げさではありますが今まで撮れなかった写真を撮ることができるカメラなのではないでしょうか。
「被写界深度が深く車や人物等の動体がピタリと止まっていて、照明からは光芒が出ている夜の写真」というのは記憶の限り過去に見ていない為、そういった写真にどのような魅力を感じることができるのかまだ理解できていないのですが、既にこのカメラをお持ちの方や、手に入れたいと考えている方にはぜひそう言ったシチュエーションの撮影も楽しんでいただきたいと思います。