Mレンズの実力

LEICA SUMMARON-M f5.6/28mm

From Leica Style Magazine Vol. 27

ライカM(Typ240)・f5.6・1/750秒・ISO320・WBオート・RAW

LEICA SUMMARON-M f5.6/28mm
1本で3種類の焦点距離を楽しむ

フォトグラファー 河田一規

100年を数えるライカの歴史の中では数多くの銘レンズがその時々で登場してユーザーを夢中にさせてきたわけだが、ズマロン28mmも間違いなくそうした銘レンズのひとつであり、それを復刻したのが今回ご紹介するライカ ズマロンM f5.6/28mmだ。オリジナルのズマロン28mmは1955年に登場したスクリューマウントレンズで、被写界深度を示す数字が赤色表記だったことから通称「赤ズマロン」と呼ばれていた。F5.6という小口径ゆえの小型軽量さと堅実な写りから、現在でもかなり人気の高いオールドレンズとして知られている。

今回復刻されたライカ ズマロンM f5.6/28mmはオリジナルと同じ4群6枚による光学系をそのまま採用し、f5.6という1955年の時点でも暗めだった開放値もあえてそのまま。ただし、コーティングなどは最新の技術を用いており、その点はオールドレンズと大きく異なるところ。外観デザインは基本的にはオリジナルをかなり忠実に再現したもので、赤ズマロンという呼び名の由来となった被写界深度表示ももちろん赤色を踏襲している。ただし、無限遠ロックの形状やローレット形状などは現代的に若干アレンジされたものとなっており、オリジナルの雰囲気を残しつつも現代的に巧妙にアップデートされている。


ライカM10・f11・1/125秒・ISO200・WBオート・RAW

そしてオリジナルと決定的に異なるのがスクリューマウントではなく、Mマウントになっていることだろう。マウント面にはもちろん6ビットコードが刻まれており、デジタルのM型ライカに装着した際にはExif情報にレンズ名が自動的に記される。

最新のコーティングを施したことや、Mマウントを採用したことからは、このレンズが単なる懐古趣味的な復刻プロジェクトなどではなく、現役バリバリな実用レンズであるとライカカメラ社が考えていることが分かる。現行のライカレンズは性能が非常に高くなっている反面、それと引き替えにどうしても個性は薄まらざるを得ないわけで、そのカウンターとして世の中ではオールドレンズへの礼賛があるわけだが、今回のズマロンはこうした現状に対するまったく新しい選択肢を示すものとして非常に興味深い。

レンズ設計的には今となっては決して解像優先ではないはずだが、意外にも細部まで破綻なく描写されており、オリジナルズマロンの設計の確かさを再認識することとなった。それに加えて最新コーティングの効果は絶大で、写りは非常にドラマチック。特に逆光時の劇的な表現は、小さくて可愛らしい外観からは想像できないほど素晴らしい。

目測撮影の容易さを活かしてストリートスナップに使うのも良いし、小型軽量レンズならではの常時携帯用途にも向く。フィルム時代には難しかったF5.6という開放値だが、感度の自由度が高いデジタルではそれほど弱点にはならないことも付け加えておきたい。


個性的な描写を受け継ぐコンパクトな広角レンズ

1955年に登場したオリジナルの光学系をそのまま継承しつつも最新コーティングやMマウント化など随所をアップデート。「復刻」という枠に収まらない実用レンズとして仕上げられている。付属フードは真鍮からの削り出し製。

 

ライカ ズマロンM f5.6/28mm




TECHNICAL DATA  ライカ ズマロンM f5.6/28mm

画角

画角(対角線、水平、垂直) 35mm 判(75°、65°、46°)

光学系

レンズ構成 4群6枚

撮影設定

撮影距離 1m〜∞
目盛り メートル及びフィート表示
最大撮影倍率 35mm判 約801 × 1201mm/1:33.4

絞り

設定方式 クリックストップ (1/2 ステップ)
最小絞り F22
絞り枚数 8枚

その他

レンズマウント すばやい着脱が可能なライカMバヨネット、
デジタルMカメラ識別6ビット・コード付
フィルターサイズ E34
レンズフード ねじ込み式の金属製レンズフードを付属
本体仕上げ ブラック

寸法・質量

先端からバヨネットフランジ
までの長さ
約 18mm
最大径 約 約51mm
重量 約 165g

フォトグラファー

河田 一規 (かわだ かずのり)

1961年横浜市生まれ。
小学3年生の頃、父親の二眼レフを持ち出し写真に目覚める。
10年間の会社勤めの後、写真家、齋藤康一氏に師事し、4年間の助手生活を経てフリーに。
雑誌等の人物撮影、カメラ雑誌での新機種インプレッション記事やハウツー記事の執筆、カメラ教室の講師等を担当している。