ライカSL2/SL2-Sの魅力

ー 写真家 ケイ・オガタ ー


広告写真を数多く手がけるフォトグラファーのケイ・オガタさん。ニューヨーク時代のライカM型フィルムカメラから始まり、現在はライカM型デジタルカメラをはじめ、ミドルフォーマットのライカS(Typ007)、フルサイズセンサー搭載ミラーレスカメラのライカSL(Typ601)とその最新型であるライカSL2-S、コンパクトカメラのライカQ2ライカV-LUXまで幅広くライカを愛用し、また仕事から日常までほとんどの写真をライカで撮影している。

生粋のライカユーザーであるオガタさんに、ライカとの出会いから、仕事での使い分けまで、なぜライカに惹かれるのかを訊いた。

Interview:坂田大作(SHOOTING編集長)


—— はじめにライカとの出会いを教えてください。


1970年代後半〜80年代のニューヨーク在住当時に、ライカM3あたりから使っていました。ただ仕事ではレンジファインダーをなかなか使いこなせなくて、苦労していました。

でもライカM6あたりから、徐々にしっくりくるようになりましたね。ライカM6を仕事で使っていた頃にデジタル化の波がきて「ライカは今後どうしていくんだろう?」と思っていたんです。

そしたらデジタルになっても色合いや雰囲気はフィルムライクなままだったので、安心したというか、さすがだなあと思いました。


 

ケイ・オガタさん。


—— ライカがデジタル化した後も、違和感なく使われていたのですね。


そうですね。フィルムでもデジタルでもピント合わせはどちらも同じレンジファインダー式ですし、違和感は全くなかったですね。ピント合わせの難しさも変わらないけれど(笑)。


革新的な驚きがあった「ライカS2」


僕にとっては2010年「ライカS2」の登場が画期的でした。当時、白戸家(ソフトバンク)の撮影で、ホワイト家族全員をローマで撮る仕事があったんです。その時に「手持ちで撮れて」「速写ができて」「中判で」という条件で機材を考えていました。

デジタルバックタイプという選択肢もありましたが、接点のトラブルも怖いしどうしようかなと考えていた時に「ライカでミドルフォーマットカメラがある」という話を聞いて、すぐに借りて試してみたんです。それでライカS2で撮ってみたら「これはすごい!」と。即座に気に入りました。ミドルフォーマットながらコンパクトなサイズなので35mmm判のカメラ感覚で撮れますしね。

 

ミドルフォーマットのライカSシステム


撮影まで時間もないのに、そのローマでの撮影はライカS2を使うことにして、アシスタントには「ライカS2の使い方を一週間で全部マスターしてくれ」って頼みました(笑)。それでライカS2のボディ2台とレンズを3本持って、ローマで撮影しましたね。それ以来十数年間、基本的には撮影機材はライカしか使っていません。ライカ以外は、二眼のローライフレックスくらいかな。

ライカはフィルム時代からトーンが好きなんです。ライカで撮った画は、色で言えば、僕の中で少しだけブルーシアンなイメージかな。そして、コントラストもしっかりしているのに、トーンが柔らかく黒から白までのディテールはしっかり出ますね。


—— 一般的な一眼レフは、デフォルトではカリッとシャープな写真に仕上がる印象ですね。


僕は人物とか肌の撮影が多いのでやわらかく撮りたいんです。一度、コスメの撮影で、ライカS2と他社製のカメラで撮り比べたことがあります。その時の担当アートディレクターにどちらが好みか聞いたら、すぐに「こっち」とライカで撮った方を指差していました。やっぱりな、と(笑)。


― 機種名を伏せても、ライカS2を選ばれたのですね。


肌のぬめり感が全然違ったんです。それ以来、ライカ製品が常に気になって、このライカプロフェッショナルストア東京には、アシスタントともよく伺っています。サポート体制も整っているので、仕事でも安心して使うことができますね。

そして現在、ライカSシステムはCMOSセンサー搭載のライカS(Typ007)に機材を入れ替えて愛用しています。 

アルファロメオ


—— その後に、ライカSLを導入されたのですね。


そうです。基本は手持ちの35mm判の感覚が好きなので、よりコンパクトなボディのライカSLも使い始めました。ただ最初はテザー撮影が中々うまくいかなかったんです。仕事では難しいのかなあと思っていたらライカSL2が登場して、でも買うのを迷っていたらライカSL2-Sが発売されたんですよね(笑)。

ライカSL2-Sは画素数を抑えたことで他の性能が上がっていること、今は僕の仕事の半分が動画なので、ムービーキャメラを使うこともありますが、仕事の内容によって動画撮影もライカで対応することができる時代になったと思います。ライカSL2-Sは“4K 60コマ”で撮れるようになったことも大きかった。フルフレームでハイスピードが出来るのはありがたいですね。それでライカSL2-Sを買いました。


― ライカSL2に比べて、ライカSL2-Sは価格も手ごろになりました。


価格も60万円前後とライカSL2に比べて手にしやすくなりました。画素数が4,700万画素から2,400万画素になりましたが、A3ノビで使えれば画素数はこれくらいで全く問題ありません。大きく伸ばすこともできますし、ビルボードでもある程度の距離から見ますから。

4,000万や5,000万画素くらいあると1枚のデータが重たくなってしまいますが、ライカSL2-Sはテザー撮影もサクサクできるし、人物を連写する僕にはよい選択だったと思います。こうなってくると「画素数って何なんだろう?」っていうことを考えますね。そこまで大伸ばしする機会も多くはないし、多少ノイズっぽくてもそれも味かなあと思ったりもします。

 

ライカSL2-S


以前は「画素数が多いほどいい」と思っていたこともありましたが、それって「いい写真」に繋がる必要要素なのかな、と思います。僕は「いい写真」が撮りたいだけなんです。そう考えると、画素数よりも速写性や使いやすさ、トラブルの少なさ、レンズを含めた空気感などの方が大事なことだと思っています。

例えばISO 10000で撮った時に、画像が荒れても「いい荒れ方」と言うのかな、雰囲気が出る方が嬉しい。フィルム時代にはトライXを1600に増感していましたからね。昔は8x10(エイトバイテン)のポラロイドを使っていた時代がありましたが、他には真似のできないトーンがありました。

2010年に発売されて手にしたライカS2が出る前は、いわゆるデジタルバックも使っていました。2000年位からデジタル一眼レフを使い始め、コダックのDCSデジタルカメラバックとかも使っていました。色々変遷はあったものの、最終的にはライカSシステムに辿り着いたんです。

ライカSシステムやSLシステムは一眼タイプだから、トラブルは全然ありません。もちろんセンサーのゴミは定期的にクリーニングしていますが、ハード的な問題がないので安心して仕事で使っています。とても愛用しているので僕はみんなにライカを勧めるんですけど、「オガタさん、高いんです!」って言われちゃう(笑)。


― 中判のデジタルバックシステムと比較すれば、安いとも言えますね。


プロはレンズのラインアップ含めてシステムで導入するから、少しずつ買い揃えていくことになるかもしれませんね。

プロが使用する撮影機材は、予備のカメラやレンズも含めるとケース一つで1,000万円くらいにもなるのだけれど、でも町工場で工作機械を導入すれば、2,000万円や3,000万円くらいもするわけじゃないですか。私もプロフェッショナルとして広告を撮らせていただいているので、ある程度投資をするのが当然だと考えています。金額云々は別として、ライカSシステムはオススメですね。そして雑誌の撮影ではライカSLシステムで撮っています。コンパクトな分、自由に動けますから。

 

アサヒビール「ザ レモン クレフト」


― オガタさんはテザー撮影が多いのですか。


広告写真の撮影では、仕上がりのイメージを示すカンプが必ずあります。撮影においては、その方向性に合わせながら、想定以上のものを撮れるように努力するのだけど、もちろん基本はおさえないといけない。そのため、テザー撮影でモニターを2、3台繋いで、関係者でビジュアルを確認しながら進めています。

雑誌撮影の場合はある程度任せていただくことが多いので、最初はテザーで繋いで「こんな感じ」というイメージを編集者に共有したら、あとはカメラのみでフィルム時代のように手持ちで撮っていきます。1つのシーンが撮り終わったら、PCに繋いで画を見てもらいながら次のシーンに移る、という感じですね。

僕にとっては、ライカSシステムとライカSLシステム、そしてライカQ2があればもう完璧です。あと個人的に欲しいのはモノクローム専用機のライカM10モノクローム。モノクローム撮影だけに特化した別格のカメラですから。


― ライカSシステムとライカSLシステムはどのように使い分けていますか。


撮影の目的によって使い分けています。広告撮影でも速写性を求められるものはライカSLシステムで撮っています。僕は、キリンビールの「本麒麟」の広告を撮っているのですが、ナチュラルな美味しさを表現する場面でライカSLシステムを使い、俳優の方が友人に話しかけるようなシーンを速写しています。こういう時にライカSLシステムの機動性がいいんです。

自由にアングルを探るにはライカSLシステムが圧倒的に楽だし早いですね。一つのシリーズの撮影が長くなってくると、いろんな機種のカメラが混在することも出てきます。それがライカと別のカメラの組み合わせだったら、トーンや質感を合わせても違いがわかってしまうかもしれない。でもライカファミリーの中での使い分けなら問題ないと思います。

 

ライカSL2-Sを使って撮影するオガタ氏


― 広告では俳優やタレントさんの撮影が多いと思いますが、ライカで撮影していて何か反応はありますか。


俳優さんやタレントさんの中にもライカに興味のある方や、実際に使っている人も多いですね。その方々とはもちろんライカの話で盛り上がります。スタイリストの祐真さんはノクティルックス派で、ライカ談義で盛り上がったりします。カメラ好きな人とはライカで盛り上がれますね。


― オガタさんのお気に入りレンズを教えてください。


僕は人物の撮影、特に寄りでの撮影が多いので、ライカSシステムだとズミクロンS f2.0/100mm ASPH.をよく使います。本当は、70mmを使ってより被写体に近い方が撮りやすいのだけど、昨今のコロナ禍事情もあり、ひとつ長めにした方が良いかなと思っています。100mmはソーシャルディスタンスもとれて、なおかつかなり寄れるのでよく使っています。

ライカSLシステムでは、バリオ・エルマリートSL f2.8–4/24-90mm ASPH.をよく使うかな。ポートレート撮影の時は、アポ・ズミクロンSL f2/75mm ASPH.もよく使います。

昔は「ズームレンズは単焦点に比べてクオリティが良くない」というイメージがありましたが、それももう30年くらい前の話。今のズームレンズは、昔「単焦点レンズ最高!」って言っていた時のものよりもとても優秀です。ライカSLシステムを使う場合は、機動性を活かしながらその瞬間瞬間に自分の思う画角で切り撮れる方が私にとって大事なことなので、その点ズームレンズを愛用しています。

 

月刊「EXILE」

―  ライカSLが発売された当初は、ズームレンズ3本が同時発表されて驚きました。


「単焦点と変わらないぞ」という、クオリティに自信があったからでしょうね。そのトレードオフで、少し重量感があったり、F値が変動するというデメリットもあったりしたけれど、私の場合にはそれで困ったことはないです。それで困る状況なら、ライカSLシステムにMレンズのノクティルックスを組み合わせてF1.0で撮るなど、状況に応じて対応すると思います。

昔はライカM6にノクティルックスを付けて撮っていましたが、4×5みたいだなと思いました。逆あおりで周辺をぼかすみたいにほんとにピンが浅い。川田(有二)くんもノクティルックスにはまって、ライカプロフェッショナルストア東京での写真展はライカSL2とライカSL2-Sにノクティルックスを組み合わせて夜景を撮っていましたよね。


― 川田さんもそうですが、オガタさんに師事した方がたくさん卒業されています。アシスタントへはどのようなことを指導しているのでしょうか。


一時期、僕は「写真塾」を月に1度開いていました。自分でテーマを決めて、そのテーマに沿ったものを撮影して、プリントしたものをみんなで持ちよって話をする、ということをしていました。

その写真からテーマ性を感じるかとか、過去の著名な写真家の作品を真似たのならなぜそうしたのか、その結果どうだったのかなど、写真について色々なことを話し合っていました。これは、広告のコンセプト作りに近い部分もあるんです。

僕は、助手によく「決まりはないんだよ」と言う言葉をかけます。助手たちは写真学校で学んできている人も多いのですが、学校では、例えば短焦点レンズや標準レンズしか使ってはいけないというような色々なセオリーを教わったりするんです。

もちろんそういう教え方もあるのかもしれないけれど、僕はNYに長く住んでいたこともあってか、より自由な感覚が身についていると思います。例えば、現像液にオレンジジュースを混ぜてみたり、フィルムを装填する前に電子レンジに入れて色温度のバランスを崩してみたりなんてことも試したことがあるんですよ。 



日本人は几帳面だから、薬液も正確に測ります。でもアメリカでは「え〜」っていうことをやるんです。安いレンズに細いドリルで穴を開けたりもしていましたね(笑)。そうすると、変なところだけボケるんです。ニューヨークでは、そんなふうにデジタル化の前から「オリジナルを追求しよう」という意識が強くて、自分にしかできないものを追求する仕方が半端なかった。

その点、日本には80点の写真を撮れる人が多いけれど、突き抜ける人は少ないように思います。それは、力やスキルを持っていないのではなくて、引出し方やきっかけをつかめていないだけのような気がします。変わったことをしていたら叩かれる、また「そんなことをしていても食べていけないぞ」とか、可能性を否定されてしまうことも良くありますよね。なので「あまり決まりに捉われずに、自分で好きなようにやれば」とはよく話しています。

アルファロメオ

― 日本人はある意味「型」が好きな人種かもしれませんね。そこにはめ込んでしまいがちなのかもしれません。


ニューヨーク時代にレンジファインダーのライカM型カメラを使っていた話をしましたが、それまではニコンFを使っていたんです。

写真で自分の好きな世界を切り撮る作業というのは、周りと断絶させて1枚の絵を作っていくことでもあります。ところが、ライカM型カメラって切り撮れないんですよ。それは、切り撮る部分以外の周りもファインダーの中に見えているから。ということは、世界を感じながら撮っているということなんですよね。切り撮ることが大事ではなくて、切り撮った所が世界とどう繋がっているかが大事なんだと気づいたんです。

例えば、撮影した人物の先にホームレスの人がいるかもしれない。そうすると撮影したその人の顔は、ホームレスに対しての表情かもしれない。だけど切り撮ってしまうと、そこは見なくなってしまう。だから報道写真家はライカを使う人が多かったんじゃないかなと思います。 



撮影するその瞬間も「常に世界と繋がっている」というのがM型ライカの良さ。それはとても凄いことだなと感じています。日本人のライカユーザーでは、木村伊兵衛先生の写真ってオシャレですよね。構図がどうというよりも「何を見せたいか」が伝わってくるんです。そう思って、僕もライカM3を買ったけどダメでしたね。なかなか使いこなせなくて。

青木冨貴子さんという知人が「ライカでグッドバイ: カメラマン沢田教一が撃たれた日」(2013年刊)を出版しています。その本を読んで、「ライカは簡単に手放してはいけないカメラ」という印象もあったのだけど、いまではライカばかりで、あの時、手放さなくてよかったなと思います(笑)。


― 日本のカメラ雑誌や写真学校は「上手に切り撮る方法」を教えている気がしますね。


本当は逆なのかもしれませんよね。特にレンジファインダーは、切り撮る部分以外の周囲まで全体が見えている。しかもフレームから多少ずれるから、僕の場合はそれが逆にいい空気感に繋がると感じています。

アメリカの雑誌「GQ」で、ブルース・ウェーバーが出てきた頃、僕の先生だったアルバート・ワトソンの関係で「GQ」から仕事をもらえた事がありました。

「靴を撮ってくれ」というその依頼を受けて、今はない世界貿易センタービルの近くの素敵な場所に、靴をポンと置いて撮ったんです。撮った写真は、グラフィカルでかっこいい仕上がりでした。でも、何かしっくりこなかったのです。 



そんな時に、「SHOE SHINE(靴磨き)」という言葉がどこからか聞こえてきたような気がしました。知人に話したら、「14丁目の角にめちゃくちゃ優秀な靴磨きのおじさんがいるよ」と教えてもらったんです。そこでライカM3を持っていってファインダーを覗いたら、そこにいる靴磨きのおじさんと、その周囲にあるおじさんの持ち物や汚れたお金が散らばっている様子の、その両方が見えたんです。

そこで、目にしているこの「全体」を切り撮るのではなくて、おじさんが僕の助手の靴をシュシュっと靴を磨いているときの、その手がブレている足元だけの写真を撮りました。

その後、最初に撮ったグラフィカルな「かっこいい靴の写真」と、「靴磨きのおじさんの手元だけを切り撮った写真」の2つをGQのアートディレクターに見せました。そうしたら、かっこいい靴の写真には見向きもせずに、もう一方の靴磨きの写真を見て、「HEY! 今日は最高の日にしてくれたな。この写真はすごい!」と喜んでくれたんです。この写真には「街角の靴磨きのおじさんの人生が写っている!」と言うんです。写っているのは靴と手だけなのに(笑)。

でも、「そういうことだったのか!」と僕がそこで気づかされました。これから僕が行きたい方向っていうのはこういうことなんだと思い至ることができたんです。そこからニューヨークでのキャリアが深まっていきました。「切り撮らないでむしろ繋げる」。ライカM3で撮った時の気づきは、いまの僕の人生に大きく影響しています。

 

Them magazine #035 ©️Righters 2021


― 最近は動画の仕事も増えているようですね。


先ほどの話が一番活きるのが動画です。動画は動いているから色々なものが映るわけじゃないですか。それは、レンジファインダーで撮るのとよく似ています。

絵のような1枚を撮ることも好きですが、世界と繋がっているという周辺を常に感じていたい。そうすることで謙虚になれるし、よい動画が撮れると思います。

ライカを使っての仕事は、僕はライカSシステムから始まりましたが、ライカSLシステムもよく使っていますし、レンジファインダーと一眼タイプは、感覚は違うけれど、ライカの哲学というか筋は一本通っている気がします。カメラも機材であり、モノであるのですが、そこに想いを感じるというのは凄いことだと思います。仕事に必要なモノとして信じさせてくれる機材というのはそう多くはないと思うんです。

フィルムカメラからデジタルに変わって、多くの方がカメラに愛着が沸きにくくなったと感じているのではないでしょうか。新製品が出るサイクルも早いし、パソコンと同じで新しい方が性能もいいと一般的に考えますからね。ニコンFのボディを磨いてずっと大事にするとか、そういう感覚がしばらくなかったのだけど、唯一ライカだけは機械として丁寧に扱いたくなる。それは価格が高いからという理由だけではなくて、“ライカが連綿と大切にしてきた思想”に共感できるからだと思います。

抽象的な話だけど、僕らの世代はライカって特別なカメラという認識できているので、簡単に手に入らないし、使いこなせない。だけど「いつかは使いこなしてみたいカメラ」だったんです。今はまだ手に入れていないライカM10モノクロームを導入するとしたら、どのレンズを付けるか、悩むのも楽しいですね(笑)。 


サントリー「THE STRONG SPARKLING」


― 俳優やモデルの方を撮影する場合、被写体の肌のコンディションやレタッチ前提の時に、ライカのRAWデータはどのような印象をもたれていらっしゃいますか。


以前に使っていたデジタルバックよりもライカの方が肌のトーンはマイルドですね。僕にとってはライカの方がしっくりきます。女性を撮る場合はライティングや絞り方などを総合的に判断しています。男性の場合は逆に絞りこんでカリっとさせます。

RAWからの現像設定では黒レベルを上げ、白レベルは落として、なるべくラチチュードの広いデータから調整していきます。ただ、テザー撮影で絵がやわらかく見えすぎる場合はコントラストを上げた設定で見てもらうようにしています。その辺の柔軟性、コントロールのしやすいデータを作ってくれるのはありがたいですね。


― ライカSシステムやライカSLシステムは仕事、ライカMシステムは作品というイメージはあります。


一般的にそういうイメージですよね。でも、僕の中のイメージとしてライカSだから仕事、ライカMだから作品と分けるのも違う気がしていて…。その辺りは自分の中でも柔軟に考えていくべきものだと思います。「作品はM型ライカで撮らないといけない」って思い込みなんじゃないかなと思うんです。機械ではなくて使う人間の思い込みじゃないかと考えています。

広告でも作品撮りでも、機能や画素数ではなく「何をメッセージとして伝えたいのか」が大事なので、それを元にライカファミリーから選べば、素敵な写真人生が送れると思います。

写真家
ケイ・オガタ Kei Ogata
1977 年に渡米。写真家アルバート・ワトソンのアシスタントを経て独立。国内外の『VOGUE』『GQ』誌などのほか、大手企業の広告写真や映像を手掛け、第一線で活躍。APAアワードの金賞等、受賞歴も多数。
https://no-2.co.jp/

https://www.instagram.com/kei.ogata.photo