ライカM EV1の魅力

part1 - 光を操り、空間を指揮する写真機 -

ライカM EV1と、ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH.で試写する機会をいただきました。EVF搭載の新時代のM型と、35mmという焦点距離で実に65年ぶりに明るさを更新した至上の大口径レンズ。今回はこの贅沢な組み合わせで撮影した所感を記してみます。
他、ライカM EV1の真価を探るべく複数のレンズで撮影を試みました。その結果は次回以降で紹介させていただきます。


ライカM EV1の魅力



開放の淵に立つ

ライカ ノクティルックスM f1.2/35 ASPH.は、そのスペックから察する通り被写界深度はかなり薄く、特に近接域では絞りたくなるほどのシビアさですが、ライカM EV1の高精細なファインダーのおかげでピントを追い込むことができました。なお、近接域ではピントリングを回すよりも、体を前後させたほうが素直に合焦させられそうです。

Leica Noctilux-M f1.2/35 ISO80, 0EV, f1.2, 1/160/ライカM EV1
Leica Noctilux-M f1.2/35 ISO80, 0EV, f1.2, 1/160


柔らかさの中に感じる芯

掲載する作例はすべてf1.2の開放で撮影していますが、薄い被写界深度がもたらす柔らかな写りとは裏腹に、ピント面は驚くほどシャープで、色にじみも少なく、いちごの茎にみえる産毛の一本一本までも観察できるほどの解像度の高さを持ち合わせています。
レンジファインダーでは捉えきれない被写体のディテールを、しっかりと見つめる事ができます。画面中央以外に被写体を置きながらピント合わせができる点も、今までのMにはなかった使用感です。

EVFは単なるライブビューではなく、大口径レンズの“開放”を実用へ引き上げる装置なのです。

Leica Noctilux-M f1.2/35 ISO80, 0EV, f1.2, 1/160/ライカM EV1
Leica Noctilux-M f1.2/35 ISO80, 0EV, f1.2, 1/160


飽和寸前の発色、その素晴らしさ

今回、ライカM EV1のカラープロファイル設定は“Standard”で撮影していますが、この色乗りの良さにはハッとさせられました。歴代Mデジタルの中でも、最もニュートラルでありながら色濃度の高い画作りになっていると思います。
大口径レンズ特有のビネッティングに由来する、写真中央あたりにスポットライトがあたったような写りは、シンプルな構図にも見応えを与えてくれます。この一枚は多少露出を切り詰め撮影しました。露出補正の度合いを思い通りに確認できるのも、EVFの大きな利点だと思います。
熟したいちごの艶やかな質感と彩り、空気感までもが閉じ込められた一枚になったというと手前味噌でしょうか。

Leica Noctilux-M f1.2/35 ISO64, -1.3EV, f1.2, 1/500/ライカM EV1
Leica Noctilux-M f1.2/35 ISO64, -1.3EV, f1.2, 1/500


鈍色の空と金属の質感

ドライブする道すがら、漁港でのスナップ。夏の盛りを忘れひっそりと静まり返っている中、寒々しく小雨がちらついていました。無造作に置かれている籠、年季の入ったロープ、錆びた鉄など、重々しく、実に格好よく見えました。
曇天の拡散光ゆえにノクティルックスの開放描写を存分に味わえました。ピント面の鋭利な描写には撮影のたびに驚かされます。また、f1.2と聞くとライカ ノクティルックスM f1.2/50 ASPH.の大きく崩れるような豪快な背景ボケを連想しますが、本レンズはおおよその輪郭を残したまま、融け過ぎず、まるで油彩のように美しく滑らかにボケていきます。現代的で端正な写りだと感じました。

Leica Noctilux-M f1.2/35 ISO64, -1EV, f1.2, 1/400/ライカM EV1
Leica Noctilux-M f1.2/35 ISO64, -1EV, f1.2, 1/400


定まらないものと向き合う楽しさ

動く被写体は、常にこちらの意図を待ってはくれません。レンジファインダーカメラでは、光学ガラスによる二重像を信じてシャッターを切る潔さが求められますが、EVFによる撮影ではピントの山を観察し、動く被写体の“揺れの頂点”を待つ時間が生まれます。
速写とは異なる難しさですが、動体の揺らぎを読み切った一枚には、偶然とは異なる確信が宿ります。そこには「自分が納得してシャッターを切った」という充足感が残るでしょう。
その確信を積み重ねてゆくことが、このカメラによる撮影体験の醍醐味なのかもしれません。


Leica Noctilux-M f1.2/35 ISO125, 0EV, f1.2, 1/160/400/ライカM EV1
Leica Noctilux-M f1.2/35 ISO125, 0EV, f1.2, 1/160


Leica Noctilux-M f1.2/35 ISO64, +1.7EV, f1.2, 1/160/ライカM EV1
Leica Noctilux-M f1.2/35 ISO64, +1.7EV, f1.2, 1/160

写真における“描写の豊かさ”は、レンズだけの功績ではありません。
それを成立させうる精度があってこそ、レンズの個性的な写りの違いを味わうことが出来ます。その精度を支えるのが、EVFという選択です。

見るだけではなく、結果を見定めるための機構。撮影者が光と空間を指揮し定めるという行為こそが、このカメラの核心ではないでしょうか。
その話を、次章で更に掘りさげてみます。






写真家の夢が現実に!唯一無二の組み合わせ